刺朗

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不本意な結論

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川原の通夜と葬儀が済み、3日が経った。
花田刑事部長から、今日の午後に捜査会議を行なうとの通達があった。
今日の会議は、本件の取り扱いについての上の判断を知らせることが主な内容だということだった。
「主な」というところに、後藤は引っ掛かりを覚えた。

引っ掛かりは花田刑事部長の冒頭の宣言で当たっていることが分かった。
「上ともいろいろ検討したが、本件は川原ろくろの自殺ということになった。詳細は今から話す」
やはり会議は、これが最終ということだ。
そして詳細が述べられた。

【本件は、川原ろくろの単独自殺と断定する。よって事件性は無しとなり、当本部は解散する】

【自殺の手段については、川原自身の手による大腿部動脈の切断と断定する。なお、刺朗と名付けられた霊体を装う非現実的な存在表現をはじめ、精神世界、宗教、宇宙など、本件中の抽象的な記述部分は、自殺の装飾と、それによる警察の出動を期待した愉快犯的目的がその使用理由と断定する。なお、本人死亡のため、抽象記述の真意は不明とする】

【但し、抽象的な記述部分のうち、気功術については、自殺内容に於いて現実性が認められると判断する】

先日の会議でも、自殺論を唱える刑事のほとんどは、あくまでこれは現実範囲内で解決されることで、川原の自殺は、刺朗という絵空事に惑わされない方法が存在した結果であるという意見であった。
後藤は、早急な判断だと反論したが、図らずもそれは、かつて平井が後藤に対して反論した姿そのものだった。

「またか…」
会議から部屋に戻る途中、後藤は平井の顔を見て苦笑いした。
「やはり…でしょう?」
平井が笑い返した。
「そうだな、やはりだな」
「落胆することじゃありませんよ。刺朗は選んだんですよ、私らを」
「そう考えるか。な、ラーメンでも食うか?」
後藤は気持ちを切り替えることにした。


数日後、結局開かなかったUSBメモリを含め、後藤と平井が拝借したノートや本は、事件性無しということで川原幸恵に返却されることとなった。
返却もまた、ふたりの仕事となった。
署の車で川原宅に向かう途中、後藤は先日平井が言った
「川原はどこかで生きているかも知れない」
という言葉の根拠を尋ねた。
ハンドルを握りながら平井は
「後藤さんが川原の死体の変化のことを言った時に、ふっと浮かんだんです」
と言った。
「実はな…」
後藤は言うべきかどうか迷っていた、あの現象のことを平井に話した。
「え?私が目を剝いたんですか?そんな馬鹿な表情をしたんですか?」
平井はまったく記憶にないという表情をした。
「それに刺朗が関わっているような気がするんだが、その答がなぁ…」
赤信号で止まった。平井は「あ」と言い
「それこそUSBにヒントがあるんじゃ?」
と続けた。

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