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対決⑩
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「どこから運んで来たのだろう?都会の川には似合わない岩だ。
岩の近くで、凛と川を眺めていた。
凛の髪をなでる僕の手に【あいつ】の手が添えられて、そのまま凛の頭を鷲掴みにしそうになった時、後ろから誰かが走って来る足音がした。
少年がいたのは本当だ。
僕と【あいつ】が凛を巡ってせめぎ合いをしている時に、その子は来たんだ。
リュックを背負って水筒を下げて、いつも堤防をふらふら歩いているのを何回も見かけた子だ。
精神に障がいがあるようで、どこかの施設にいる子かも知れない。というのも、堤防で何回か、この子が教師か介護士らしき女性に、どこかへ連れ戻されるような場面を見たことがあるからだ。
その時、少年は奇声を上げて抵抗していた。
その少年が堤防を走って下りて、僕と凛の所へやって来た。
【カバいいね?ー、へへへへー】
すぐそばに来た少年は、見開いた目で凛のあちこちを見回している。舐め回すという感じだ。
【可愛いか?】
問いかけると少年は途端に、まるで塩をかけられたナメクジみたいに縮み上がり、黙り込んでしまった。
ウジウジと後ずさりし、頭をうなだれて突っ立っている。どうも対人恐怖症のようだ。
(放っておこう)
そう思ってまた川面を見ていたら、再び少年はすぐそばに来ていた。
少年を見るとまた離れそうになったので、今度はしゃがんでみた。
すると少年も隣でしゃがんだ。
何やら少年の両手が小刻みに震えている。
少年は顔を上げてじっとこちらを見ている。その目は怯えた子犬のようだった。
(何がしたいんだ?)
怯えた目は、ある幅を上下している。
(あ…)
それは凛の身長の幅だった。
この子は凛に興味があるのだ。
少しくらいなら抱かせてやろうか。
そんな気持ちになって来た。
僕は凛を抱いた形のまま、少年の方へ腕をずらしてみた。
一瞬少年は体を引いたが、すぐにゆっくりと両腕を出しながら身を寄せて来た。
その腕の中に、そっと凛を移した。
一瞬、凛の体がウッと下がったが、またふわっと上がった。
少年は凛を抱いていた。
【かばいいな…】
少年は凛を見て白い葉を見せて微笑んでいる。
そのうち脚が疲れたのか、凛を抱いたまま腰を左右に振り、脚を伸ばして体育座りのような形になった。
腹の上にりんを乗せ左手を抜き、その手で髪をなで始めた。
(よほど小さい子が好きなんだ)
この子がいつ、凛に凶暴なことをしないかと警戒していながら見ていた僕だったが、安心した次の瞬間、とんでもないことになった。
髪をなでる少年の左手がいきなりパッと開いて、凛の頭を掴んだのだ。
岩の近くで、凛と川を眺めていた。
凛の髪をなでる僕の手に【あいつ】の手が添えられて、そのまま凛の頭を鷲掴みにしそうになった時、後ろから誰かが走って来る足音がした。
少年がいたのは本当だ。
僕と【あいつ】が凛を巡ってせめぎ合いをしている時に、その子は来たんだ。
リュックを背負って水筒を下げて、いつも堤防をふらふら歩いているのを何回も見かけた子だ。
精神に障がいがあるようで、どこかの施設にいる子かも知れない。というのも、堤防で何回か、この子が教師か介護士らしき女性に、どこかへ連れ戻されるような場面を見たことがあるからだ。
その時、少年は奇声を上げて抵抗していた。
その少年が堤防を走って下りて、僕と凛の所へやって来た。
【カバいいね?ー、へへへへー】
すぐそばに来た少年は、見開いた目で凛のあちこちを見回している。舐め回すという感じだ。
【可愛いか?】
問いかけると少年は途端に、まるで塩をかけられたナメクジみたいに縮み上がり、黙り込んでしまった。
ウジウジと後ずさりし、頭をうなだれて突っ立っている。どうも対人恐怖症のようだ。
(放っておこう)
そう思ってまた川面を見ていたら、再び少年はすぐそばに来ていた。
少年を見るとまた離れそうになったので、今度はしゃがんでみた。
すると少年も隣でしゃがんだ。
何やら少年の両手が小刻みに震えている。
少年は顔を上げてじっとこちらを見ている。その目は怯えた子犬のようだった。
(何がしたいんだ?)
怯えた目は、ある幅を上下している。
(あ…)
それは凛の身長の幅だった。
この子は凛に興味があるのだ。
少しくらいなら抱かせてやろうか。
そんな気持ちになって来た。
僕は凛を抱いた形のまま、少年の方へ腕をずらしてみた。
一瞬少年は体を引いたが、すぐにゆっくりと両腕を出しながら身を寄せて来た。
その腕の中に、そっと凛を移した。
一瞬、凛の体がウッと下がったが、またふわっと上がった。
少年は凛を抱いていた。
【かばいいな…】
少年は凛を見て白い葉を見せて微笑んでいる。
そのうち脚が疲れたのか、凛を抱いたまま腰を左右に振り、脚を伸ばして体育座りのような形になった。
腹の上にりんを乗せ左手を抜き、その手で髪をなで始めた。
(よほど小さい子が好きなんだ)
この子がいつ、凛に凶暴なことをしないかと警戒していながら見ていた僕だったが、安心した次の瞬間、とんでもないことになった。
髪をなでる少年の左手がいきなりパッと開いて、凛の頭を掴んだのだ。
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