刺朗

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対決14

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平井は朗読を切った。
「そしてあのノートの通り、川原は無罪放免になったんですね」
「運のいい奴だ」
投げ捨てるように後藤が呟いた。
「少年はなぜ黙ったままなのでしょう?」
平井が聞いた。
「よほど川原の印象が恐ろしかったんだろうな。目の前で殺人を行なったんだから。それとこの犯罪には、自分も関わったと思ったのかも知れないな。なにせ赤ん坊の頭を鷲掴みにしたんだからな。もしかしたら、半分は自分が殺したと思ったかも知れない。多分、捜査で刑事が少年の近くをウロウロしたろう。それも怖かったかも知れない」
「少年はもう、大人になっていますよね…」
「どこにいるのやら…だな」
「しかし川原は、この時は結構投げやりになっていますね?」
「川原は保身のために罪を逃れたんじゃないだろう。すべては幸恵との約束を果たすこと、そのための工作だろう。だから疲れたら、捕まった方が楽なのかも知れない」
しばらくふたりは沈黙した。
「まだ、文章はあります」
平井は未読のプリントの束を持った。
「この先が正念場なんだろうな。まだ私らの身に災いは起こっていないからな」
束を睨んで後藤が言った。
「しかし【四次元殺害】ってなんでしょうか?」
平井が聞く。
後藤にはなんとなく分かる。
その対象は刺朗だけではないような気もする。
「そのとばっちりがこっちに来そうだな」
後藤は例の不可思議な現象をまた思い浮かべていた。そうだ、あの現象だ。それが身に降りかかる災いを予感させるのだ。
「あの…」
平井は何か言いたそうだ。
「なんだ?」
「ちょっと整理していいですか?深呼吸代わりに」
「じゃ、またコーヒーを淹れてくれ。飲みながら聞くよ」
「分かりました」

コーヒーが来た。
一口ずつ飲んだ。
平井が話す。
「この事件は
①川原ろくろという人間が殺されていた
②自宅からノートが出て来た
③ノートは川原の霊体絡みの自殺を断定 させた
④USBも出て来た
⑤USBは開かなかった
⑥しかし後藤と平井は開けられた
⑦USBは川原の霊体殺害を匂わせていた
こんな感じで推移していますね」
「そして【四次元殺害】だ」
「私たちふたりは、それにどう関わるんでしょう?」
「立会者か、被害者かのどちらかだろうな」
やり取りの後、ふたりはコーヒーを飲み干した。
「さ、先へ行こう。それが何か分かるさ」
後藤の呼びかけに平井が応じた。
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