短い話たち

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大事な体

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私は自分の体を大事にしなければならないのです。
私は車椅子の人の脚となり、盲目の人の目にならなければならないのです。

私は毎日外に出ます。
あてもなく歩きながら車椅子の人や盲目の人と出会う時が来るのを待ちます。
そしてその時が来たら、私は車椅子を押し、白い杖に肘を貸します。
だからといってお金をもらったりお褒めの言葉を期待しているわけではありません。
私のしていることは決して慈善行為や自己満足ではないのです。

なぜならばそれをしないと私は近いうちに自分を殺しかねないからです。

もしも外に出ずにずっと家にいたら、私は間断なく煙草を吸い、酒をあおり、暴食に溺れる性分だからです。
事実私はこれまでに何度も入退院し、そのたびに危篤になりました。

今のところの最後の入院の時、私はコレステロールとアルコールとニコチンに脳機能をやられて歩けなくなっていました。
しばらくは車椅子の生活でした。
そんなある日、私は夢の中で車椅子を押してもらっていました。
ありがとうと言って振り向くと私がいました。
つまり私は私に車椅子を押してもらっていたのです。

その夢の一件は、私に自分を生かす目的を与えました。
勘違いしないで下さい、自分を生かすとは私の使命感や生きがいのことではなく、純粋に肉体を生かすことです。
私の体は、自分自身…勘違いしないで下さい、自分自身とは私自身ではなく、私の体自身のこと、つまりそこに私はいない、私の肉だけしかいないという場所です…を生かす指示を私に出したのです。

だから私は柔らかく赤い肉のロボットです。
私はただ煙草が吸いたい、酒を浴びたい、甘いものや脂っこいものを仰向けに寝て口に放り込みたいだけなのですが、体はそれをさせてくれない。その分私を外に出して車椅子を押させ肘貸しをすることで、自分自身のこれ以上のダメージを防いでいるのです。
外から帰ったら私は疲れ果てて眠るだけです。起きたらすぐに外を歩きます。
だから至って健康です。
勘違いしないで下さい、その私とは体のことです。

「ありがとうございます」

さっき押した車椅子の方に感謝されました。

「いいえ」

私は答えました。
それはこんなの私じゃないという意味で。
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