短い話たち

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私はとても臆病で
とにかく外の世界が怖いのです
いつもおどおどしている私は
まわりのみんなから
よくいじめられました
それでも私は生きなきゃならない
どうしたら穏やかに生きられるだろう?
私は考えました
そして
私はある日から
私と「私」を分けることにしました

その日から私は
「私」の身体の中の
左側の目玉だけになりました
あとはみんな「私」です
嫌なことはみんな「私」が受けて
私はもう左目だけですから
見たくない外界は
瞼を下ろしてシャットアウトして
闇の毛布にくるまって眠ります

そんな私がいる「私」は
左目を失った人間だと
思われているようで
みんなはそんな「私」に
そんな「私」なりの言葉をかけ
そんな「私」なりの視線を向けます
たいていは「私」を蔑むものでした
でもそれは私にとって他人事です
「私」の右の目が見る好奇の視線も
「私」の耳が聞く嘲りの言葉も
私は余裕を持って受け流せました

初めはそれがおかしくて
実は「私」は両目が見えるのよと
いつか瞼を上げてやろうと
ウズウズしていたのですか
最近だんだん
いたわりの言葉が多くなって
みんな
この「私」に優しくなって
私は瞼を上げられなくなってきたのです
それは私に余裕が出来た分
「私」も余裕を持ってみんなに
接するようになったからです
「私」は片目が不自由なのに
どんなに蔑まれようとも
どんなに笑われようとも
自信を持って右の目で前を向いて
逆にみんなには優しく接する
そんな「私」を
みんなは認め始めたのです

「私」はみんなに優しくし
またみんなの声に励まされて
幸せに過ごしていますが
「私」を切り離した私は
たぶん永久に闇の中で
おいてけぼりの
寂しさを味わうんでしょう

でも
それでいいんです
私の価値は
「私」のために闇にいることなんだと
最近思えるようになったから

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