浅い法華経 改

weo

文字の大きさ
上 下
16 / 95

鎌倉時代のドーパミン④

しおりを挟む
日蓮が描いたもうひとつの絵とは「髭曼陀羅(ひげまんだら)」といわれるもので、日蓮宗の檀家に本尊として祀られているものだ。もちろん私も持っている。
これは一幅の巻物になっていて、広げると中央に「南無妙法蓮華経」の文字があり、周りを様々な神仏の名が囲っているというものだ。
なぜ髭曼陀羅と言うかといえば、南無妙法蓮華経の文字のあちこちが髭のように跳ねているからだ。これを見た人もいるだろう。この「髭」は、本尊から放たれる光を表しているという。

ここでひとつ断っておかなきゃならない。
ここで展開する日蓮の話はあくまで私の勝手な空想だ。実際の日蓮は、延暦寺でほとんどすべての経典を読み、そこから法華経を選び、それをもとに日蓮宗を開いた。こんないい加減な日蓮がいたわけではない。しかし敢えていい加減な日蓮をここに書くのは、むしろ私のようないい加減な信仰者や、まったく信仰していない人たちの視線で、宗教といわれる本当か嘘か本当によく分からないものを探るには、専門書の難しい文字をここに羅列するより端的で分かりやすいと思ったからだ。ここの話は外に向かうこのサイトに書きながらも実際は、信仰者でありながら信仰するものが何者なのかよく分からない自分のために書いているようなところがある。だからまぁこんな考えする人がいるんですねくらいでここを除いてくれたらいいと思う。

さて髭曼陀羅だが、日蓮的に言えばこれこそが法華経のすべてなのだ。実際の日蓮は、法華経が法華経自身を書いていないことに着目したのではないかと思う。書いていないということは「書いていない意味を知れ」ということなのではないか?こう考えたんじゃないだろうか?
書いていないことの意味?
ここで方便品の「止舎利弗」という釈迦のセリフが出て来る。
「もうやめよう、な、舎利弗よ。言っても仕方ないんだ。仏のことは仏にしか分からないんだ」
そういえば法華経は、この先自分の偉大な力とか功徳とか、自分を保てとか守れとか広めろしか言っていない。それは「とにかく偉大なんだから黙って守って広めたらいいの!悪いようにはしないから}と言っているように思える。
だから日蓮は「こりゃ黙って信じて褒めればいいんだ」と考え、その思いをこの髭曼陀羅に込めたのだと思う。

と、ここでいい加減な日蓮の話に戻ると、彼は「この前、表通りでなんとなく自と身の絵を描いて解説したら、みんなになるほどと感心されたけど、もうひとつ核になるというかインパクトになるものが欲しいんだよな」と思い、延暦寺であと何聞いたかな?と思い出し始めた。
まるで1曲ヒットを出した歌手が次のヒットを狙うようなものだ。
日蓮が思い出した話といえば…

「法華経は褒めればいい」
「仏は意外な所にいる」
「法華経はいろんな神仏が守っている」
「法華経を信じる者も神仏に守られる」
「法華経は男女限らず仏にする」
「釈迦は姿を隠すがその後継者が出て来て法華経を広める」
「法華経の正式名は妙法蓮華経だ」
「蓮華はハスの花のこと」

ここまで思い出して日蓮は思った。
「そうかこれ、絵にしてみようか」
そして日蓮は絵を描き始めた。
真ん中に「法華経は素晴らしい」と書いて、その周りに思いつく限りの神仏の名前を書いた。
髭曼陀羅にはなんと「天照大神」まで書いてある。とにかく神様仏様ならば何でもいいのだ。
日蓮はこの絵を持って表通りに行き、この世で最高のお経を見つけたといって人を集めて演説した。
「そのお経はこの絵にすべてが描かれています」とか。
「南無妙法蓮華経(なむみょうほうれんげきょう)この言葉の南無はインドの言葉であなたにすべてを捧げますって言っているらしいが簡単に言えば素晴らしいとかステキとか偉大だって誉め言葉だ。その下の妙法ってのは不思議なことって意味で、その下の蓮華は蓮(ハス)の花だ。レンコン知ってるだろう?あれ、泥の中にあるだろう?ハスの花って知ってる?知らなかったら教えてもらったらいい。とてもきれいな花だ。ハスの名所もあるくらいだからな。そして最後の経はお経のことだ。つまり泥の中にあるレンコンから伸びて来て地上でとてもきれいな花を咲かせるハスみたいな不思議なお経はステキって意味だ」
とは言ったものの、それが何を意味しているのか一瞬日蓮には分からなかった。そこで苦し紛れにこう言った。
「泥とは泥のように汚いこの世の中だ。ほら今、極楽ニュータウンがブームだろう?あんなの嘘だ。極楽は死ななきゃ行けないんだろう?死んだらどうなるかみんな知ってる?見たことある?あの世。ないだろう?そりゃ死んでないもんな。こんな汚い世の中にはもう何も期待出来ません。だから今のうちに仏様にお願いして極楽の土地を買いましょうってセールス来てないか?あれ詐欺だぞ。お金払っちゃいけないぞ。それより泥の中からハスの花咲かすんだよ、この世で。ハスの花って極楽に咲いてる花なんだ知ってるか?ってことはこの世で極楽が出来るんだぜ?そんな不思議な力があるって言ってんだよこのお経は」
ここまで言った日蓮の頭の中にはドーパミンが溢れ出ていた。
だからまた「自と身」の絵の話をして
「その力は人の中にあるんだよ。その力を出すにはこの絵を飾って拝んだらいいんだよ。そしたら目の前に極楽が現れるぜ」
なんてことまで言ってしまった。民衆の中には感激して、つまりここにもドーパミン現象が現れて
「その絵、売ってくれ」
とまで言い出す者が現れた。
たちまち日蓮はスターになり、日蓮宗が生まれた。
まぁそんなとこでしょう。
しおりを挟む

処理中です...