浅い法華経 改

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浅い法華経①

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さて「自分の中の力を信じてこの世に極楽を作ろう」とは言ったものの、具体的にどうすればいいのか日蓮は分らなかった。
どうしようか考えるうちに、ドーパミンで天界に行った日蓮のファンは髭曼陀羅を日蓮のサインの如く先を争って買う。売上金はどんどん貯まって行く。その大金を前に日蓮はまだ考えている。偉そうに言った手前、自分が買いたいものは買えないなと思う。やっぱり売上金は民衆に還元しなきゃみんな納得しないだろうなと思う。しかしどう還元するんだ?引きこもって考えていても仕方ない、外へ出てみよう。日蓮は気晴らしがてら街を歩く。街の風景を見る。粗末な造りの民衆の家に混ざって、やけに派手で目立つ建物がある。それは極楽ニュータウンの代理店だった。そうかあいつらも結構儲けてこんなの作ったんだな、俺もお金貯まったから代理店建てよう。そうだよな、あんな粗末な家に住んでる民衆がない袖振って髭曼陀羅買ってくれたんだもんな。それにその中で演説したら雨にも濡れなくて済むし。
日蓮は「この世ニュータウン事務所」という代理店第1号を建て、髭曼陀羅を中央に飾って、その前で演説を始めることにした。なんか教祖様らしい風景になった。
「この世ニュータウン事務所はこの世を照らすこの建物です」
そんな看板を代理店の入り口に掲げた。
後日ここからテラスという言葉が生まれ、それがなまって「テラ」になり「寺」になった。極楽ニュータウンの代理店もいつしか寺と呼ばれるようになった。鎌倉時代はニュータウンと寺の建設ラッシュになった。
みんな気軽に「テラ行こうぜ」なんて言うものだからここから先の時代しばらく「寺」はトレンドになった、鎌倉時代の先の室町時代には様々な寺院文化が生まれた。

しかし日蓮はたちまち壁にぶつかる。寺で何演説したらいいんだ?
あー失敗したと思う。極楽ニュータウンはあの世にあるから話だけすりゃいいけど、こっちはこの世にあるなんて言ったもんだから証拠見せなきゃならない。極楽見せなきゃならないんだ。でもそんなの作れないよ。作っても安物のテーマパークみたいになるだけだ。
日蓮は寺の中で頭を抱え込んでしまった。
そんな中、寺での演説の初日を迎えてしまった。

寺の中で日蓮が悩んでいると、表で喧嘩する声が聞こえ始めた。
「なんだ?」
表を見ると何人かずつの民衆が睨み合っている。
「何騒いでるんだ?」
日蓮が聞くと民衆のひとりが言った。彼は髭曼陀羅を買った客だった。
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