浅い法華経 改

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タバコと密会している身体の状態②

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送り主は生命保険会社だった。
「入院費の補助金はもうもらったけどな」
なんだろうと思って封を切ったら、それは脳梗塞の無料カウンセリングサービスの案内だった。
支払った保険内容別にこんなサービスをしてるんだ、今の保険会社は。

「不安なことがあればお電話ください。いつでも無料で保健師・看護師・栄養管理士がご相談に乗ります」

なんて優しいことを言ってくれている。
「へー、こんなことまでやってんだ」
封を切るとまず目に付いたのが下記の文句だった。

・スポーツドリンク類を積極的に飲んでいる

・そうめんやうどんをよく食べる

・紙巻タバコは良くないから電子タバコにした

・なるべく0キロカロリー食を食べるようにした

・運動は朝食前にする

「お!電子タバコならいいのか?」
と一瞬喜んだが、あれ?これってもしかしちゃ、してはいけないこと?と思い直した。
なぜかというとそのタイトルが

「こんなことに心当たりありません?」

だったからだ。
そして

「何気ない生活習慣の中に潜む再発リスク」

なんて物騒な文字が続いている。

やっぱりこれって、いけないことなんだな。そりゃそうだ、この中で自分にも分ることといえば、うどんやそうめん書いてて蕎麦を書いてないのはきっと炭水化物や糖類の弊害だろうし、電子タバコだってニコチンはあるってことくらいだけど、あともみんなどこかに落とし穴があるはずだ。

さらに下の方に

「実は、脳卒中(脳出血・脳梗塞をこう言います)の10年以内の再発リスクは26パーセントです」

「実は」なんて怖い書き出しで脅しやがって。

しかし言われなくてもなんとかしたいよ。特にこの自分は。
まずは話聞きたい。禁煙カウンセリングみんな断られたからこれはありがたい。それに情報を共有してくれる人が欲しい。いけないことを叱ってくれる人が欲しい。そうでもなきゃホント再発してしまう。

とにかく電話しよう。
と、さっそく電話してみた。

「もしもし…」
ここから延々1時間以上話したか。

相手は看護師さんだった。治療のプロがこんなに親身になってくれるサービスってすごいなと思った。しかもいつでも、何回でも無料であれこれ聞いてくれるしアドバイスしてくれる。生活相談からグチ聞き、栄養相談までしてくれる。ついつい甘えて、なかなか禁煙出来ない悩みや、この先どうなるんでしょうという弱音まで吐いてしまった。カウンセリングだから、こちらの言い分を十分聞いてくれた上で「なかなか難しいですけど喫煙のリスクはこうこうでこうなので、早く断てるように頑張りましょうね」ってえらく励まされた。
今日の相談のポイントは、この痺れとフラフラ感の原因を特定してみましょうということだった。このふたつはもう後遺症だって諦めていたけど、実際はそうは限らないようだった。原因特定のためにはどんな時フラつくかの記録取りと血圧の計測を毎日することが必要だということだった。これは定期的に看護師さんに報告することになった。
それと脳梗塞は発症から3ヶ月が急激な回復期らしく、以降は緩やかに回復するが、喫煙はその回復を妨げるということだった。下手すると回復が止まって後遺症になってしまうということだった。これ聞いた時はなんだかもったいないなって気持ちになった。せっかく治りつつあるのに尻からぶっ壊しているようで。
あとは失った細胞や、硬くなった動脈はもう元には戻らないという事実の説明だった。これはこたえた。これからはこれ以上失ったり悪くしたりしないよう努力する日々になるということだった。

しかしこうして聞いてくれる人がいたら、それこそ吸ってもいいシケモク効果と同じで、ホント気が楽になる。ここへ相談する日課も出来る。
改めて思い起こすと、病気になっていろんな世界を見たよなぁ。
やっぱりこれって功徳なのかなぁ。身体いくつか壊れたけど。
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