【短編完結】間違え続けた選択肢

白キツネ

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守りたかったもの…それは…

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優馬とは幼馴染であり、ずっとお隣さんだった。彼の両親も私の両親も仲が良く、まるで一つの大家族のようだと……そう思っていた。ある事を除いて。
 私は優馬を兄弟だと思えなかった。優馬のお姉ちゃんはすぐに思えたのに、優馬だけは違った。好きだけど、それだけじゃなかった。
 それは小さい頃からずっと続いて……、中3になってようやく優馬に対する気持ちの名前がわかった。
 
 私は優馬に恋していた。

 その気持ちは伝えなかった。伝えたらこの関係が終わってしまう。家族ですら無くなってしまうのではないかと思ったから。だから私は自分の気持ちに蓋をした。溢れ出てこないように何重にも。

 運命が変わったのは高校の1年の時だった。あの時の私は天狗になっていたのだと思う。頭脳明晰、成績優秀、文武両道。周りの人はそう私を褒めてくれた。慕ってくれた。そんな私の周りには多くの人がいた。けれど、そこに優馬はいなかった。教室の端で静かに本を読んでいる。私のことは見ていなかった。
 それでも私は優馬との時間を作りたかった。優馬に対する恋心はずっと続いていたから。朝早起きして、頼まれてもいないのに優馬を起こしに行ったり、朝一緒に登校したり、帰りを待って下校したりした。

 そんな事をしていると当然誰かに聞かれる。

「明美さんは彼と付き合っているの?」

「付き合っていない」そう言えばいいだけだった。もしくは片思いだと告げる……いや、これも悪手か。幼馴染、家が近所。そう言えばいいだけだったのに……私は優馬に自分の気持ちを知られるのを怖がった。

「違うよ。昔からずっとついて来るの。今はストーカーみたいなものよ」 

 その瞬間、運命は定められた。

 私は弱かった。どうして自分を上げようと思ったのか、優馬を悪者に仕立てようと思ったのかわからない。
 ただわかったのは、このクラスで優馬が虐めの対象になったことだけだった。

 私はそれを止めるべきだった。止めさせられるのは私だけだったのに……怖かった。
 今の教室の惨劇を引き起こしたのが自分の言葉だという事を自覚して、あれが嘘だとバレたら? 今度ああなるのは私だと思うと、止めることができなかった。見ないふりをした。
 優馬を見ると心がズキズキした。それは罪悪感かもしれない。だから私は優馬を見ないふりをした。

 優馬は何も言わなかった。家族の行事で顔を合わせても、何も言わない。親の前では昔のような関係が続いていた。優馬は学校では見せない笑顔だった。だから、私は許されていると、そう思っていた。いや、信じたかったのだと思う。優馬は私を許してくれると。

 あの日までは本当にそう信じていた。
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