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ノート
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両親が心配していたけど、私は自室に戻ってノートを読む事にした。優馬とは自分一人で向き合いたかったから。
ゆっくりとノートを開ける。
『明美のせいで』
そう大きく、何度も、何度も殴り書きしたように書かれている。
一度見たはずなのに、覚悟はできていたはずなのにまだ嗚咽は出る。けど大丈夫。まだ耐えられる。
そして次のページにめくる。さっきまでの殴り書きのようなものではなく、優馬らしい少し丸まった字で書かれている。
『僕は明美の事が好きだった。』
ノートの出だしにはそう書かれていた。優馬が私のことを……その事実に胸が苦しくなる。
『明美はいつも僕を引っ張ってくれた。家族であり、柚葉姉さんとはまた違った姉であり、好きな人だった』
『告白すればこの関係が壊れるかもしれない。最初はそう思った。けれど、この気持ちはだんだん大きくなるばかり。だから、僕は文化祭の時に告白する。そう決心した。今のままの関係よりももっと深めたかったから。けど――』
次のページをめくる。
『明美にとって、僕は心底邪魔だったみたいだ。僕は明美に甘えすぎていたのだろう。引っ張ってくれている。そう思っていたのは僕だけで、明美は僕のことをついてくるストーカーだと思ってたみたい。ハハハ、おかしいよね。滑稽だよね。明美は家族だから僕と接していただけだった。』
「違う! 違うの優馬! 私は……私はただ……」
ノートに向かって叫ぶ。が!誰に届くわけでもなく、ただポタポタと涙が落ちるだけだった。
二人の気持ちは同じだった。しかし、二人の考え方は明確に違った。明美は保守的に対して、優馬は革新的だった。そのズレがここまで大きくなってしまった。
涙で濡れないように、目元を拭いながら続きに目を通す。
『明美にストーカーだと言われてから僕の生活は一変した。仲良くしていた友達も、クラスメイトもみんないなくなった。明美も学校では僕を無視する様になった。それでいい。僕が嫌いなんだろ。ストーカーなんだろ? 気持ち悪かったんだろ? ならどうして、どうして、どうして――』
手が止まる。ページを捲らないと、次を、優馬の全てを受け入れると決めたのに……手が震える。怖い。
「あなたは自分のことだけ」
ゆずねぇの言った通りだ。私は自分のことだけ考えている。だからここで、自分が決めたことでも躊躇してしまっている。
大きく息を吸って吐く。それを数回繰り返す。もう大丈夫。
そう思っていても手はまだ震えている。それでもページをめくる。
『頼んでなんかいないのにどうして毎日毎日! どうして近づいてくる! 学校では無視をする癖に! 嫌いなら嫌いでどうして僕に関わるんだ! 関わってくるな!』
書かれていたのは優馬の悲痛な叫びだった。私の軽はずみの行動が…許されていると、本気でそう思っていた行動が優馬をここまで追い詰めていた。
『どうして僕がこんなに苦しまないといけないのか? 僕が甘えていたから?』
違う……違うの優馬。優馬が苦しんだのは全部私が逃げたから。優馬に気持ちを伝えることを怖がったから。優馬は何も悪くない。
もう涙を堪えることはできない。それでも読み続けるためにページをめくる。
「……ッ」
思わず息を呑む。そこには大きく太く、こう書かれていた。
「『全部明美のせいだ』」
思わず口に出して読んでしまった。私もそう思っていたから。
『明美さえ居なければ、父さんと母さんがおじさんとおばさんと仲が良くなければ、おじさんとおばさんが出会わなければ……』
ノートはほとんどボールペンかマジックで書かれていたのに、この部分だけは何度も消したり書いたりした跡がある。
誰に当たればいいのか分からず、ノートにもぶつけれなかったのは優馬の優しさが表れている。そんな様子が目に浮かび少しホッとする。
それでもこんな事を書かせるまで追い詰めたのは私なんだ。
『もう疲れた』
ページをめくると書かれているのはその一行だけだった。それ以降は何も書かれていない。
めくってもめくってもノートには何も書かれていない。そしてとうとう最後のページをめくる。
『もう限界だ。明美を家族と思うのも、彼女に笑顔を向けるのも、両親にあいつとの中を聞かれるのも、もううんざりだ』
私の呼び方が段々変わる。きっとこの時に優馬の中で私は家族から他人、他人から価値のない人になったんだろう。
『死のう。でもあいつには一矢報いたい。楽しみだ。どんな顔をするのかな? 僕がいなくなって喜ぶ? 精々するかな? それとも後悔? けれど記憶に焼き付けばいい。そして苦しめばいい。僕の苦しみの一部でも味わえ』
ノートを閉じて目を瞑る。
「優馬、喜んだりしないよ。私もずっと優馬が好きだった。だからすごく後悔してる」
明美は押し込めていた自分の気持ちをノートに語った。
ゆっくりとノートを開ける。
『明美のせいで』
そう大きく、何度も、何度も殴り書きしたように書かれている。
一度見たはずなのに、覚悟はできていたはずなのにまだ嗚咽は出る。けど大丈夫。まだ耐えられる。
そして次のページにめくる。さっきまでの殴り書きのようなものではなく、優馬らしい少し丸まった字で書かれている。
『僕は明美の事が好きだった。』
ノートの出だしにはそう書かれていた。優馬が私のことを……その事実に胸が苦しくなる。
『明美はいつも僕を引っ張ってくれた。家族であり、柚葉姉さんとはまた違った姉であり、好きな人だった』
『告白すればこの関係が壊れるかもしれない。最初はそう思った。けれど、この気持ちはだんだん大きくなるばかり。だから、僕は文化祭の時に告白する。そう決心した。今のままの関係よりももっと深めたかったから。けど――』
次のページをめくる。
『明美にとって、僕は心底邪魔だったみたいだ。僕は明美に甘えすぎていたのだろう。引っ張ってくれている。そう思っていたのは僕だけで、明美は僕のことをついてくるストーカーだと思ってたみたい。ハハハ、おかしいよね。滑稽だよね。明美は家族だから僕と接していただけだった。』
「違う! 違うの優馬! 私は……私はただ……」
ノートに向かって叫ぶ。が!誰に届くわけでもなく、ただポタポタと涙が落ちるだけだった。
二人の気持ちは同じだった。しかし、二人の考え方は明確に違った。明美は保守的に対して、優馬は革新的だった。そのズレがここまで大きくなってしまった。
涙で濡れないように、目元を拭いながら続きに目を通す。
『明美にストーカーだと言われてから僕の生活は一変した。仲良くしていた友達も、クラスメイトもみんないなくなった。明美も学校では僕を無視する様になった。それでいい。僕が嫌いなんだろ。ストーカーなんだろ? 気持ち悪かったんだろ? ならどうして、どうして、どうして――』
手が止まる。ページを捲らないと、次を、優馬の全てを受け入れると決めたのに……手が震える。怖い。
「あなたは自分のことだけ」
ゆずねぇの言った通りだ。私は自分のことだけ考えている。だからここで、自分が決めたことでも躊躇してしまっている。
大きく息を吸って吐く。それを数回繰り返す。もう大丈夫。
そう思っていても手はまだ震えている。それでもページをめくる。
『頼んでなんかいないのにどうして毎日毎日! どうして近づいてくる! 学校では無視をする癖に! 嫌いなら嫌いでどうして僕に関わるんだ! 関わってくるな!』
書かれていたのは優馬の悲痛な叫びだった。私の軽はずみの行動が…許されていると、本気でそう思っていた行動が優馬をここまで追い詰めていた。
『どうして僕がこんなに苦しまないといけないのか? 僕が甘えていたから?』
違う……違うの優馬。優馬が苦しんだのは全部私が逃げたから。優馬に気持ちを伝えることを怖がったから。優馬は何も悪くない。
もう涙を堪えることはできない。それでも読み続けるためにページをめくる。
「……ッ」
思わず息を呑む。そこには大きく太く、こう書かれていた。
「『全部明美のせいだ』」
思わず口に出して読んでしまった。私もそう思っていたから。
『明美さえ居なければ、父さんと母さんがおじさんとおばさんと仲が良くなければ、おじさんとおばさんが出会わなければ……』
ノートはほとんどボールペンかマジックで書かれていたのに、この部分だけは何度も消したり書いたりした跡がある。
誰に当たればいいのか分からず、ノートにもぶつけれなかったのは優馬の優しさが表れている。そんな様子が目に浮かび少しホッとする。
それでもこんな事を書かせるまで追い詰めたのは私なんだ。
『もう疲れた』
ページをめくると書かれているのはその一行だけだった。それ以降は何も書かれていない。
めくってもめくってもノートには何も書かれていない。そしてとうとう最後のページをめくる。
『もう限界だ。明美を家族と思うのも、彼女に笑顔を向けるのも、両親にあいつとの中を聞かれるのも、もううんざりだ』
私の呼び方が段々変わる。きっとこの時に優馬の中で私は家族から他人、他人から価値のない人になったんだろう。
『死のう。でもあいつには一矢報いたい。楽しみだ。どんな顔をするのかな? 僕がいなくなって喜ぶ? 精々するかな? それとも後悔? けれど記憶に焼き付けばいい。そして苦しめばいい。僕の苦しみの一部でも味わえ』
ノートを閉じて目を瞑る。
「優馬、喜んだりしないよ。私もずっと優馬が好きだった。だからすごく後悔してる」
明美は押し込めていた自分の気持ちをノートに語った。
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