【完結】悪役令嬢とは何をすればいいのでしょうか？

第一王子視点

　城にはいくつも部屋があり、その部屋の一つに、俺と父上、母上の三人だけがいる。夕食のあと、俺だけこの部屋に呼ばれたのだが、なんの要件なんだろうか。

「お前とソフィア・ローズ嬢との婚約は白紙にすることにした」
「本当ですか父上！」
「ああ、そして本日より第二王子であるクリスを王太子とする」
　
　喜んでいる間に父上が何を言っているのかが理解できない。王太子をクリスにする。長男の俺ではなく？そんなのはおかしい。何かの間違えだ！

「どういうことですか父上！どうして俺ではなく、クリスなのですか！？」
「それが婚約を白紙にする条件だったからな」
「なっ？父上はそれを認めたというのですか！？」
「お前に王は務まらないと、今回のことで判断した」

　ソフィアの奴、メアリーをいじめるだけではなく、この俺にも嫌がらせをしようというのか。つくづく嫌な女だな。

「父上はソフィアがどんなやつかを知らないから、そんなことが言えるのです。あいつは、メアリーに嫌がらせをしてきたんです。俺はそれを止めるように注意しただけです！」
「メアリーとは、ブルーム男爵の隠し子であったか」
「隠し子というのは…、はい」

　言い返そうとしたけれども、父上の目を見て言葉が出ずに肯定してしまう。けど、問題はない。マリアがどんな立場であろうが、嫌がらせをしたのは事実だ。それさえ伝われば…

「それで、ローズ嬢がそのものに対し、なぜ嫌がらせをするのだ？」
「それは、彼女が俺を愛しており、俺がメアリーと一緒にいるのを心良く思わなかったためでしょう」
「ならば、なぜ、ローズ嬢の方から婚約を白紙にするように頼んできているのだ？ローズ嬢がお前に対し、心がない証拠ではないか」
「それは…そっ、そうです！今回、俺が注意したことで、やっとあいつにも俺が愛している人がわかったのでしょう」
「はあ、仮にそうであったとして、本当にローズ嬢が嫌がらせをしたのか」
「ええ、メアリーが言っているので、間違いありません！」
「…それだけか？」
「それだけとは、メアリーが傷つきながらも、俺に話してくれたのです。それだけで十分な証拠ではありませんか！」

　あの可愛らしいメアリーが泣きながら嫌がらせを受けていると俺に言って来たのだ。相手が公爵家だということもあり、俺に言うにも怖かっただろうに…
　だから、俺がメアリーを守り、ソフィアに何もさせないようにしなければならないのに…、どうしても父上にはそのことが認めていただけないらしい。

「証言だけでは当てにならん。証拠を持ってこい。もちろん、壊された後のものを持ってくるなどという愚かなことはするなよ。そうすれば、今回の件を考え直すと約束しよう」
「メアリーの証言だけじゃ足りないと…、メアリーは泣いていたんですよ！」
「……」
「…わかりました。ですが、証拠が見つかった際には約束は守っていただきますから。失礼します」

　チッ、あいつに話しかけるのは癪だが、メアリーのためだ。俺が話しかけたら今までの悪行に耐えられなくなり、証拠を差し出すだろう。

　待ってろよ、メアリー。俺はお前を王族として迎え入れるからな。