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第二十七話
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「ふふっ、駄目だ、我慢できない。ふふっ……」
先生方と話があるから……そう言って離れていたお姉様が帰ってくると、笑いを堪えようとしているけど、堪えきれない。ずっとこの調子で話しすらできない。
「お、お姉様……?」
「ご、ごめんなさい。ちょっと未知との遭遇……エンカウントしちゃって……ふふっ」
『えんかうんと』というものはわからないが、遭遇というのはわかる。つまり、お姉様は彼女に出会ったのでしょう。今日一日、全部無視していたし、リオン様のお陰で食堂でも出会わなかったのに……今度はお姉様ですか。
「それで……彼女と出会って何か言われたのですか?」
私は当然の事を訪ねただけだと思うのですが、何か気に障ったのか、お姉様の顔はスンと無表情に変わる。
「あ、あの私……何か……」
「あっ、ううん、違うの!あの子が訳のわからない事をいっぱい言ってて、つい……」
「何を言われたのですか?」
「アリシアが私を騙しているって。それに、彼女は私を助けてくれる? みたい」
「私が騙しているのですか?」
「そうみたい。それに、継母に頼んであげるって言ってた。アリシアは何か知ってる?」
私が何を騙しているのでしょうか? それに彼女が母に? 母と彼女にどんな関係があるのでしょうか? 何も思いつきません。
「ごめんなさい。わからないです」
「そうだよね。いつ関わったのか、どんな恩を売ったのか。わからない事が多すぎる」
「恩……ですか…………まさか……」
私が思いついたのと同時にお姉様も思い当たる事があったのか、ポツリと話始める。
「……そう言えば、この世界ではシチューはないんだっけ……どうしてあの時気がつかなかったんだろう」
「シチューというのはあの……」
「そう、山羊の乳を使ったスープ。前世では私の好物だったから、この世界でも食べれると思って喜んじゃった。けど、それなら彼女は……」
毒草を用意した犯人? そんな考えが頭をよぎる。しかし、証拠は何もない。
「 憶測だけじゃダメね。少なくとも、彼女が関わっているかもしれない事がわかっただけよしとしましょう。考えさせてって言っておいたしね」
お姉様は彼女と連絡を保つために、返事を保留したのでしょうか? 流石です。私なら絶対に無理そうですから。
「それに……、彼女、変なのよね」
「人の名前を叫びながら追いかけてきたり、人の変な噂を作って流すくらいですから……」
「そうじゃなくて、なんていうか……、この世界を知っているのは本当。だけど、現実に私たちがいる世界とは少し違っているんじゃないかな。そして、それに気づいていないふりをしているか、もしくは本当に気づいていないのかのどっちかだと思う。私と話しているようで、私と話していないように感じるの」
そういえば、店の貸切について、何故か彼女はお菓子店だと思っていたみたいですね。それも関係しているのでしょうか。
「まぁ、そんなことよりも大切な事があるの」
「大切な事ですか?」
「そう! アリシアが私を騙しているってことよ!」
「えっ……ですが、それは彼女の「妄想?」……はい」
「そうかもしれない。けれど、実際にアリシアは私に隠し事が多いと思うのよ! だから、これを機に話し合いましょう?」
突然のお姉様の提案に困惑してしまう。実際に、隠し事なんて昨日、全て言わされてしまいましたし、もう何も……
「もしかしてお姉様、私に気を遣ってくれていますか?」
私はアリーシャ様のことになると視野が狭くなるのは自覚している。だから、お姉様は話を逸らすことで、私が自分から彼女に近づこうとするのをやめさせようとしているのではないでしょうか。
実際に、私のこの予測は当たっていたみたいです。
「……気づくのはいいけど、それを言わないで欲しかったなー」
「ご、ごめんなさい?」
「まぁ、いいけどね。お母様が関わっているけど、大丈夫なの?」
「はい。ですが、一度リオン様に相談して母と会ってみたいと思います。もしかしたら、何か証拠を持っているかもしれませんし……」
「その時は私も行くからね」
「わかっています」
もちろん、お姉様もアリーシャ様のことをもっと知りたいでしょうし、私に断る権利はありません。
「……わかってないんだろうな~」
「? 何か言いましたか?」
「ううん、なんでもないよ」
「そう……ですか?」
とりあえず、明日はリオン様にこの事を相談して、駄目だと言われたらまた違う事を考えましょう。
先生方と話があるから……そう言って離れていたお姉様が帰ってくると、笑いを堪えようとしているけど、堪えきれない。ずっとこの調子で話しすらできない。
「お、お姉様……?」
「ご、ごめんなさい。ちょっと未知との遭遇……エンカウントしちゃって……ふふっ」
『えんかうんと』というものはわからないが、遭遇というのはわかる。つまり、お姉様は彼女に出会ったのでしょう。今日一日、全部無視していたし、リオン様のお陰で食堂でも出会わなかったのに……今度はお姉様ですか。
「それで……彼女と出会って何か言われたのですか?」
私は当然の事を訪ねただけだと思うのですが、何か気に障ったのか、お姉様の顔はスンと無表情に変わる。
「あ、あの私……何か……」
「あっ、ううん、違うの!あの子が訳のわからない事をいっぱい言ってて、つい……」
「何を言われたのですか?」
「アリシアが私を騙しているって。それに、彼女は私を助けてくれる? みたい」
「私が騙しているのですか?」
「そうみたい。それに、継母に頼んであげるって言ってた。アリシアは何か知ってる?」
私が何を騙しているのでしょうか? それに彼女が母に? 母と彼女にどんな関係があるのでしょうか? 何も思いつきません。
「ごめんなさい。わからないです」
「そうだよね。いつ関わったのか、どんな恩を売ったのか。わからない事が多すぎる」
「恩……ですか…………まさか……」
私が思いついたのと同時にお姉様も思い当たる事があったのか、ポツリと話始める。
「……そう言えば、この世界ではシチューはないんだっけ……どうしてあの時気がつかなかったんだろう」
「シチューというのはあの……」
「そう、山羊の乳を使ったスープ。前世では私の好物だったから、この世界でも食べれると思って喜んじゃった。けど、それなら彼女は……」
毒草を用意した犯人? そんな考えが頭をよぎる。しかし、証拠は何もない。
「 憶測だけじゃダメね。少なくとも、彼女が関わっているかもしれない事がわかっただけよしとしましょう。考えさせてって言っておいたしね」
お姉様は彼女と連絡を保つために、返事を保留したのでしょうか? 流石です。私なら絶対に無理そうですから。
「それに……、彼女、変なのよね」
「人の名前を叫びながら追いかけてきたり、人の変な噂を作って流すくらいですから……」
「そうじゃなくて、なんていうか……、この世界を知っているのは本当。だけど、現実に私たちがいる世界とは少し違っているんじゃないかな。そして、それに気づいていないふりをしているか、もしくは本当に気づいていないのかのどっちかだと思う。私と話しているようで、私と話していないように感じるの」
そういえば、店の貸切について、何故か彼女はお菓子店だと思っていたみたいですね。それも関係しているのでしょうか。
「まぁ、そんなことよりも大切な事があるの」
「大切な事ですか?」
「そう! アリシアが私を騙しているってことよ!」
「えっ……ですが、それは彼女の「妄想?」……はい」
「そうかもしれない。けれど、実際にアリシアは私に隠し事が多いと思うのよ! だから、これを機に話し合いましょう?」
突然のお姉様の提案に困惑してしまう。実際に、隠し事なんて昨日、全て言わされてしまいましたし、もう何も……
「もしかしてお姉様、私に気を遣ってくれていますか?」
私はアリーシャ様のことになると視野が狭くなるのは自覚している。だから、お姉様は話を逸らすことで、私が自分から彼女に近づこうとするのをやめさせようとしているのではないでしょうか。
実際に、私のこの予測は当たっていたみたいです。
「……気づくのはいいけど、それを言わないで欲しかったなー」
「ご、ごめんなさい?」
「まぁ、いいけどね。お母様が関わっているけど、大丈夫なの?」
「はい。ですが、一度リオン様に相談して母と会ってみたいと思います。もしかしたら、何か証拠を持っているかもしれませんし……」
「その時は私も行くからね」
「わかっています」
もちろん、お姉様もアリーシャ様のことをもっと知りたいでしょうし、私に断る権利はありません。
「……わかってないんだろうな~」
「? 何か言いましたか?」
「ううん、なんでもないよ」
「そう……ですか?」
とりあえず、明日はリオン様にこの事を相談して、駄目だと言われたらまた違う事を考えましょう。
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