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リオン視点8
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「これはどういう事だ?」
「申し訳ありません!」
ここは生徒会室……ではなく、校長室。生徒会の仕事はレオスに押し付けて来ている。といっても生徒会長はレオスなので、なにも間違ったことではない。
そんなことよりも、私に丁寧に謝罪をしている彼の様子を見る限り、私を甘く見ているという訳でもなさそうだ。
「謝罪はいい。説明をしろ」
「昨日までは確実に別のクラスでした。ですが、今朝になって変えられていたのでございます。大変申し訳ありません!」
「もう良い」
私が校長に頼んでいた事は、ミラという少女を別のクラスにすること。本来、クラスは成績の優劣などによって決めている訳ではない。だからこそ、王族に近づけるべきでないと判断された生徒は王族と別クラスにされる……はずなのだが……
「あれは有害であると私は判断した。それに、お前も同意していただろう?」
「はい。授業態度もよくなく、とても理解しているとは思えない。それなのにテストの点だけは良い。そんなおかしな生徒を殿下と同じクラスにする訳にはいきません」
「なっているがな」
「申し訳ありません。おそらく……」
内部に……か。今までも高位貴族の命令に逆らえずに実行してしまったという話は聞いたことがある。だが、彼女に従う理由はなんだ?
「目星はついているのか?」
「はい。ですが、合わない方がいいかと……」
「どういう意味だ?」
「話が通じないのです。まるで、自分がしていることが正しいと。そうでないことがおかしいんだと言って、こちらの話を聞かないのです」
聞き覚えのある話だな。確かに関わらないに越した事はないが、そういうわけにもいくまい。
そうして連れて来られた者は優しげな雰囲気を醸し出した若い男だった。ローアと同様に、彼女が好みそうだとは思うが、彼が彼女に肩入れするとは思えない。
そう思っていた。
部屋に入って来て早々、コレはダメだと感じた。話が通じる、通じないではない。一方的に話してくるのだ。それも、自分が正しいと思い込んでいるため、話の所々がおかしい部分があっても気づいていない。いや、あえて気づかないようにしているのか。とりあえず、話し合えない事だけはわかった。
「――殿下はミラ様の事で勘違いされているのです。ミラ様のようなとても素晴らしい方をもっと知って上げてください」
「……そうか。それなら君が彼女に寄り添って上げればいいのではないか?」
「そうしたいところですが、私はミラ様には相応しくありません。ミラ様には殿下のような方こそふさわしいのです!」
押し付けられているように感じるのは私の考え過ぎか? 例え彼の本心であったとしても願い下げだが……
彼の彼女に対する想いはなんだ? アレに対して、どうすればこんな崇拝のような感情を持った者が出て来る。それも、この学園の教師が……だ。
「お前、婚約者は?」
「いますが……それが何か? ああ、ミラ様の事ですか。心配する必要はありません。ミラ様が別れろとおっしゃるのであれば、別れる程度の関係でしかありませんから」
「…………」
さも、当然のように別れると口にする男に対して、狂気じみたものを感じる。彼の口ぶりはそれをおかしいと微塵も思っていなかった。
「……そうしないと、――様に―― ――から」
授業の終わりを告げる鐘が鳴り、彼の言葉を遮る。
「今、なんて言ったんだ?」
「いいえ、何も……。それでは、私は授業があるので失礼します」
彼は何かを誤魔化すように、校長室から出て行く。
「追いかけますか?」
「……いや、いい。それよりも、これ以上あの様な者を出さないようにしないとな」
「極力、あの生徒とは関わらないように……ですか?」
「ああ、全て……は無理だろうから、出来るだけでいい。後は暴走しない様に見張っておくしかないか」
彼女の見張りからはあの男に関する情報は来ていない。彼と同様に、彼女に心酔したか……?
問題が山の様にあるのに、さらに増えるのか……。まったく、厄介ごとを増やしてくれる。
「はぁ、私もそろそろ行く。すまなかったな」
「いいえ、私の方こそお役に立てず……教師陣は私に任せてください」
校長室を後にし、ふと、リーアの授業が終わっている事を思い出す。もう教室には居ないだろうと思いつつも、足を運ぶ。
教室が近づいて来るとリーアとリリア嬢の声が聞こえて来る。
「この手紙、どうするんですか?」
手紙……恋文か!? まずい、最近のリーアは表情が豊かになり、今まで以上に男子生徒の視線を集めている。貴族として、家を通すのが習わしだが、直接実行してくるのは考えていなかった。
リーアはどう思っているのだろうか……。好かれているとは思う。だが、急にメイドの講義を受けるなど、最近の行動はよくわからない。メイド業をして何かしたいことでもあるのか?
少しモヤモヤしつつも、リーアの気持ちを盗み聞くために、もう少しだけ廊下から様子を見ておくことにしよう。
「申し訳ありません!」
ここは生徒会室……ではなく、校長室。生徒会の仕事はレオスに押し付けて来ている。といっても生徒会長はレオスなので、なにも間違ったことではない。
そんなことよりも、私に丁寧に謝罪をしている彼の様子を見る限り、私を甘く見ているという訳でもなさそうだ。
「謝罪はいい。説明をしろ」
「昨日までは確実に別のクラスでした。ですが、今朝になって変えられていたのでございます。大変申し訳ありません!」
「もう良い」
私が校長に頼んでいた事は、ミラという少女を別のクラスにすること。本来、クラスは成績の優劣などによって決めている訳ではない。だからこそ、王族に近づけるべきでないと判断された生徒は王族と別クラスにされる……はずなのだが……
「あれは有害であると私は判断した。それに、お前も同意していただろう?」
「はい。授業態度もよくなく、とても理解しているとは思えない。それなのにテストの点だけは良い。そんなおかしな生徒を殿下と同じクラスにする訳にはいきません」
「なっているがな」
「申し訳ありません。おそらく……」
内部に……か。今までも高位貴族の命令に逆らえずに実行してしまったという話は聞いたことがある。だが、彼女に従う理由はなんだ?
「目星はついているのか?」
「はい。ですが、合わない方がいいかと……」
「どういう意味だ?」
「話が通じないのです。まるで、自分がしていることが正しいと。そうでないことがおかしいんだと言って、こちらの話を聞かないのです」
聞き覚えのある話だな。確かに関わらないに越した事はないが、そういうわけにもいくまい。
そうして連れて来られた者は優しげな雰囲気を醸し出した若い男だった。ローアと同様に、彼女が好みそうだとは思うが、彼が彼女に肩入れするとは思えない。
そう思っていた。
部屋に入って来て早々、コレはダメだと感じた。話が通じる、通じないではない。一方的に話してくるのだ。それも、自分が正しいと思い込んでいるため、話の所々がおかしい部分があっても気づいていない。いや、あえて気づかないようにしているのか。とりあえず、話し合えない事だけはわかった。
「――殿下はミラ様の事で勘違いされているのです。ミラ様のようなとても素晴らしい方をもっと知って上げてください」
「……そうか。それなら君が彼女に寄り添って上げればいいのではないか?」
「そうしたいところですが、私はミラ様には相応しくありません。ミラ様には殿下のような方こそふさわしいのです!」
押し付けられているように感じるのは私の考え過ぎか? 例え彼の本心であったとしても願い下げだが……
彼の彼女に対する想いはなんだ? アレに対して、どうすればこんな崇拝のような感情を持った者が出て来る。それも、この学園の教師が……だ。
「お前、婚約者は?」
「いますが……それが何か? ああ、ミラ様の事ですか。心配する必要はありません。ミラ様が別れろとおっしゃるのであれば、別れる程度の関係でしかありませんから」
「…………」
さも、当然のように別れると口にする男に対して、狂気じみたものを感じる。彼の口ぶりはそれをおかしいと微塵も思っていなかった。
「……そうしないと、――様に―― ――から」
授業の終わりを告げる鐘が鳴り、彼の言葉を遮る。
「今、なんて言ったんだ?」
「いいえ、何も……。それでは、私は授業があるので失礼します」
彼は何かを誤魔化すように、校長室から出て行く。
「追いかけますか?」
「……いや、いい。それよりも、これ以上あの様な者を出さないようにしないとな」
「極力、あの生徒とは関わらないように……ですか?」
「ああ、全て……は無理だろうから、出来るだけでいい。後は暴走しない様に見張っておくしかないか」
彼女の見張りからはあの男に関する情報は来ていない。彼と同様に、彼女に心酔したか……?
問題が山の様にあるのに、さらに増えるのか……。まったく、厄介ごとを増やしてくれる。
「はぁ、私もそろそろ行く。すまなかったな」
「いいえ、私の方こそお役に立てず……教師陣は私に任せてください」
校長室を後にし、ふと、リーアの授業が終わっている事を思い出す。もう教室には居ないだろうと思いつつも、足を運ぶ。
教室が近づいて来るとリーアとリリア嬢の声が聞こえて来る。
「この手紙、どうするんですか?」
手紙……恋文か!? まずい、最近のリーアは表情が豊かになり、今まで以上に男子生徒の視線を集めている。貴族として、家を通すのが習わしだが、直接実行してくるのは考えていなかった。
リーアはどう思っているのだろうか……。好かれているとは思う。だが、急にメイドの講義を受けるなど、最近の行動はよくわからない。メイド業をして何かしたいことでもあるのか?
少しモヤモヤしつつも、リーアの気持ちを盗み聞くために、もう少しだけ廊下から様子を見ておくことにしよう。
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