【完結】悪役令嬢と呼ばれた私は関わりたくない

白キツネ

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第四十三話

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 昔、アリーシャ様のお使いで市街地に行くことがありました。そこで見かけたのは、甘味を欲しがり、母親に泣きつく少女の姿でした。
 周りの迷惑を考えず、自分の要求を対価もなしにただひたすらに求める。その『泣く』という行動が、私にとってはとても無駄なものだと思っていました。
 だって、その行動によって得られるものなんてなにもないからです。今の状況が好転するわけでも、自分の要求が必ず叶うわけでもありません。そんな事をしているより、自分の能力を引き上げる方が大切だと、そう思っていたのに……

 どうして私は今、泣いているのでしょうか? どうすればこの涙を止める事ができるのでしょうか?
 涙が止まらない。止め方なんてわからない。

「リオン……様」

 口に出てくるのは何故かリオン様の名前ばかり。

 ――そういえば、あの子も「ママ」と、泣きながら母親の名前を呼んでいた。それは願いを求める相手? それとも……

「信頼……してる、人?」

 どんな姿を見せても自分からは離れないと、信頼信頼している相手……なんて、そんな事を小さい子が考えているはずがありませんよね。私は一体どうしてしまったのでしょうか?

「リーア!」

「リオン様……!」

 どうしましょう!? 見つかってしまいました。涙も止まらず、体に力も入らないため、この場から逃げ出すこともできない。

「あっ……あっ……」

 思うように声も出せない。怖い。リオン様に拒絶されるのが怖い。
 体が震えて、ギュッと自分を抱きしめるように、縮こまる。

「はぁ……はぁ……、よかった」

 リオン様はそのまま私を抱きしめる。

「リーア……よかった……」

 その言葉に顔を上げると、金色の瞳と目が合う。不安げな顔。息もまだ整っておらず、肩で息をしている。
 そんなに必死に私を探してくれていたのですね。私はリオン様に頼られているリリア様に嫉妬し、嫌われたと思ってたのに……

「よかった。今はあの女もいる。君が狙われているんだ。だから、もっと――」

 そうでした。リオン様は優しいのです。こんな私にも……それなのに、私はこの優しさに甘えてしまっていました。

「申し訳ありませんでした。リオン様の優しさに甘えすぎていました。これからはできるだけ邪魔をしないようにしたいと思います。それではっ」

 まだ、リオン様を前にすると胸が痛くなる。以前のように感情を隠す事も、今は難しい。
 一度距離をとって、落ち着けば、きっとまた以前のように……

 リオン様を軽く突き放し、逃げようとするけれど、リオン様の腕が解けない。

 もう一度、今度は強く押すが全然解ける気がしません。むしろ、さっきよりも強くなっているような……って痛い、痛いです!

「すまない。逃げようとするからつい」

 そう言って、リオン様は抱き締めている力を弱める。しかし、離してくれる気配はありません。

「あ、あの……リオン様?」

「どうやら、涙も止まったようだね」

「えっ? あっ、そうですね。そんなことよりもリオン様……」

「んっ? なにかな?」

「腕を……」

「んっ?」

「いえ、なんでもないです」

 どうしよう……いつにもなく、リオン様が怖い。今のリオン様からは怒っているお姉様と同じ雰囲気を感じます。

「それで……なんだって? 甘え? 君が? 邪魔をしないって何?」

「それは……今回の手紙の事がわかったからです。あれは私ではなく、リオン様宛ですよね? 下級貴族では、リオン様との婚約話を進める事は難しいので、直接リオン様の元へ届けたかったのでしょう。甘えは……私自身、何もないのにリオン様の近くに居過ぎたこと。邪魔は……リオン様とこれから婚約される方に誤解されないようにです」

「はぁ……何から言っていいのか。どうすればこんな誤解が生まれるのか。とりあえず、手紙の件に関してだが、あれは間違いなくリーア宛だよ」

「どうして私に……」

「リーアが何処かに嫁ぐのが確定しているからだ。そして、支えるのであれば、自分と同じぐらいの年齢であったり、メイドを優遇してくれそうな人物がいいに決まっている。そして君は入学初日、男爵令嬢であるリリア嬢とのやりとりを知っている者がほとんどだ。それに、ひょっとすればシェリア嬢にも自分の名前が伝わるかも知れないだろう? だから君に手紙が渡された」

「ですが、それなら名前だけでは不十分ではないでしょうか? 私は今回一斉に渡されたので、名前とかを顔が一致している方はほとんどいません」

 お姉様に紹介というのであれば、名前や特技以外にも書くべきではないのでしょうか?

「貴族は、例え自分より格上の者からの推薦であったとしても、対象の人物は調べるものだ。だから、手紙に書くのは最小限でいい。相手に媚びていると思われる方こそ、見向きされなくなる。君に、「この人はこんな事が得意で、こんな話をしました。」と、例え結果に繋がらなくても、名前が出るだけで十分なのさ。後はその名前の人物を勝手に調べるからね」

 王族だけでなく、貴族も雇う人物は選ばないといけません。その者が問題を起こした時に、責任を取らなければいけないのは、雇った側ですから。だからこそ、雇う側も相手の事を調べないといけない。だから、調べる対象として、名前だけは私に覚えて欲しかったという事でしょうか。

 それはわかりました。ですがもう一つ、気になる事があります。

「リリア様も狙っているというのはどういう意味でしょうか? リオン様の婚約者の座……ではないのですか?」

 だからこそ、手紙の件もリオン様の婚約者になりたい方たちだと思っていたのですが……
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