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第五十四話

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「リオン様、あの白髪の女性は?」

 学園近くに住み着いていた盗賊を騙すためになりきっていた騎士様たちと合流し、私たちを助けに来てくれた。という体でリオン様たちと合流して落ち着いたので、状況を絞り……コホン。教えてもらっています。

「ああ、彼女はシュリ・ペーロ。ペーロ伯爵の一人娘だよ。私の協力者だ。他にも二人、赤髪の方がサルディナ・モーノ。緑髪がキャティヤ・ファイサン。二人も伯爵令嬢であり、協力者でもある」

「いつから……?」

「王家が学園に入学する際、まぁ、婚約者とかの関係でね。タチの悪い令嬢が必ず一人はやってくる。その時に、言い方は悪いが取り巻きとして相手を煽て、情報を引っ張りだし、危険を回避できるように一部の貴族に話しているんだ。もちろん、本人の同意の上でね」

 つまり、ピンク髪の方は三人も着かなければならないほどタチが悪いと。

「……そうですか」

 本当に、感心やら納得して、言葉が漏れただけなのですが、リオン様はそうはとってくれなかったみたいで……
 突然顔を青ざめて、私の両肩を掴む。離れないようにするためでしょうか。掴む力はいつもより強く、少し痛い。

「隠していたわけではないんだ! ただ、これは王家の問題でもあって、リーアに迷惑をかけると思って」

「リオン様、分かっています。だから手を、少し痛いです」

「あっ……、すまない。だが」

「言っているじゃないですか。リオン様もお姉様も過保護過ぎるのです。王族だからこそ言えない事があるなんてわかっているつもりです。全部話して欲しいとも思っていません。リオン様が辛そうにしているのであれば話は別ですが、話してもらえていないことを気にしていません。それに――」

「それに?」

「この件について、お姉様も関わっているのですよね?」

 リリの肩がビクッとしたのが見えた。

 ――間違えじゃないみたい。たぶん、お姉様も隠すつもりはなかったのでしょうけど。でもどうしてリリが?

「やはり、君には話していなかったのか」

「何も聞いていません。ですが、隠す気も無いみたいですが、お姉様が話してくれるまでこのままでいようと思います」

「どうしてですか!?」

「リリ……?」

「どうしてアリシア様は、おく……シェリア様をそのままにしておくのですか!? もしかしたら、そのせいで貴方が危険な目にあったかもしれないんですよ! それなのに! それなのに、どうして……」

 今すぐにでも泣きそうなリリに何を言ったらいいのか困ってしまう。お姉様とリリの間に何があったかはわからない。
 少しづつ二人の関係が変わっていったのは分かっていました。ですが、そのせいで仲が悪くなるということもなかったので、二人の問題だと、そう割り切っていたのですが、それがいけなかったようです。どうしてこんなに拗れてしまったのでしょう。

「リリはお姉様の事が嫌い?」

 そう尋ねると、リリは勢いよく首を横に振る。

「そう。なら、お姉様が怖い?」

 今度は別の質問をする。すると、リリはビクッとした後、ためらいながら、それでもゆっくりと首を縦に振った。

「どうしてか聞いていい?」

「……シェリア様には感謝しています。ですが、最近のシェリア様は何を考えているのかわからなくて怖いです。守ろうとしているのか、傷つけようとしているのか、どうしても私にはわからないのです」

 リリはお姉様の行動の意図が理解できていない。だから怖い。そういう事でしょう。
 私もお姉様が関わっていると今日気づいたのです。だから全てが推測になってしまいますが、一つだけ言える事があります。

「リリ」

「……はい」

「お姉様の考えは私にもわかりません。ですが、目的はわかります」

「……目的?」

「リリと一緒ですよ。リリは今、私の為にお姉様の事を話してくれたでしょう? それと同じ。お姉様も私を守ろうとしてくれているの」

「ですが……わかりました」

 納得して無さそうですね。ですが、これは二人に解決してもらうしかありません。

「だから、お姉様にリリの思いを伝えてください」

「それは……!」

「大丈夫です。それとも私が信じられませんか?」

 ずるい事をしているのは分かっています。こう言えば、リリが頷くということがわかっている上でこのような言い方をしているのですから。
 けれど、そうしてでもリリにはお姉様を怖がったままでいて欲しく無いのです。

「……わかりました。今日、話してみることにします。失礼します」

 思い詰めたように私から離れていく彼女。その足取りはふらふらとしていて危なっかしい。

「リ「私が側にいます!」……シャロ、お願いね」

「はい!」

 シャロがリリに追いついたのを見て安心する。私が仲介に入るとどうしてもお姉様寄りになってしまう。そうなれば、リリとお姉様の溝はもう埋まらない。そう思ったからこそ、こうして突き放すように言ってしまった。

 その事を後悔する事がないよう、祈ることしかできない無力な私が恨めしい。
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