【完結】転生者のお姉様は自分を悪役令嬢と言い張るのですが…どう考えても悪役は私です

居場所

私の勘違いは終わったけれど、お姉様はまだ部屋の中が見えないようにしている。何かあるのかな？

「それで、お姉様はこの物置で何をしようとしていたのですか？」

「えーとね、この部屋の整理をしないといけないなーって」

　嘘だ。驚くくらいお姉様の目が泳いでいる。まさか…

「まさか、父がこの部屋をお姉様の部屋にすると言っていたとか…言いませんよ…ね」

「どうしてわかったの！？」

「やっぱり…」

　あの父はどこまでお姉様を…

「違うのよ、アリシア。私は元々アンの部屋にいるつもりだったの。だけど、この部屋を少しでも整理しておかないと、私がいないってバレるでしょう？だから、整理しようとしていただけで…」

「それなら、私の部屋を…」

　使っていただけたらよかったに。

　そう言おうとして、止まる。私の部屋？違う、この家に私の物なんて何一つない。あの部屋にあった物に、私の物なんて一つもなかった。
　ベッドも急に私の分を用意したなんてありえない。それなら、考えられることは一つだけ…

「あの部屋は、私が今日寝ていた部屋はお姉様の部屋だったのでは…ないですか？」

「えーと…」

　お姉様はまたはぐらかそうとする。その態度でバレバレなのだけれど、確信がほしい。だから、後ろにいるアンに聞くことにする。

「アン！答えて！」

「…はい、あの部屋は一昨日まではお嬢様のお部屋でした」

「やっぱり…」

「アリシア！」

　体の力が抜ける。

　アハハ、私もやっぱりあの人たちの子供なんだ。私の部屋だって。考えればわかりそうなことなのに、どうして気づかなかったんだろう。あの父に言われたことをそのまま受け入れるなんて…

「お姉様…やっぱり…私もあの人たちの子供でした。私は…お姉様の…邪魔しかできないみたいです…」

「そんなこと「そんなことあるんです！」…アリシア…」

「そんなことあるんです…怪しいところはいっぱいありました。それでも、私はなんの疑問も持たなかったんです！何も思わず、私の部屋って…この家に私の、私たちの居場所なんてないはずなのに！私もあの人たちと同じで、お姉様の物を奪い取っていたんです…」

　涙が溢れる。泣きたいのは私よりもお姉様のはずなのに…それでも、止めることはできない。

「アリシア！」

「お姉様！？いやっ、ダメです！」

　お姉様が抱きついてくるが、私にそんなことをされる資格はない。だから、抜け出そうともがくけれど、思っていた以上に力が強く、抜け出すことができない。

「アリシアにダメなことなんてないよ。あなたが私を守ろうと頑張ってくれようとしてくれたのは、アンや料理長のことでわかっているわ」

「それでも、お姉様はそのことも考えて、マリアさんたちをお父様に雇われるようにしていたんですよね。私が何もしなくても…」

「そんなの関係ないわ。あなたがしてくれたことには変わりないもの。それに、私はご飯のことを考えていなかったから、正直危なかったの。だからね、あなたが料理長を残してくれたおかげで、料理人たちにも話がしやすかったとマリアとアンから報告を受けているわ」

　私がしたことが、お姉様の役にたった…？

「だからね、ありがとう、アリシア。これからも私と一緒にいてちょうだい。居場所がないなんて言わないで」

　これからも一緒にいていいのかな？

「お姉様…」

「ここで何をしている！」

　元凶がやって来てしまった。