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さようなら
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いつもと同じ朝。だけど、今日はいつもと違うことがある。
「アリシア…」
「お姉様、今までありがとうございました」
いつもは食事を食べる時間、急遽、来客があった。王都の騎士たちです。
思っていた以上に早い。それほど、王様はこのことを重く見ていたのでしょう。最後にジャンの食事を取りたかったけれど、それはできないらしい。
「朝早くに失礼します。エヴァンス公爵により、元アースベルト侯爵暗殺の容疑者として、オスカー・アースベルト並びにシシリー・アースベルトが挙げられております。ですので、引き渡してもらえますでしょうか?」
「父と母は押し入れに捕らえられています。ジャン、アルフレッドと一緒に連れて来てもらえる?」
「わかりました」
ジャンとアルフレッドが両親を連れてくる。騒がないために縄で口を防がれているが、目だけは今までとは違う。私を相当憎んでいるみたい。二人とも私を睨みつけていた。
「……私は悪役、みんなに憎まれ嫌われるのが私の役目」
誰にも聞こえないよう、小言で自分に言い聞かせる。大丈夫。私にはアーシャ先生がついている。
二人が罪人用の馬車に乗っけられるのを見送り、少しほっとする。これで、私の役目はもう終わり。
みんなが喜びを噛み締め、少し涙目になっているのを横目に私は一歩前に進む。騎士の方も私の意図に気づき、肩に手を回して誘導してくれる。
「アリ…シア?」
「では、みなさん、ご迷惑をおかけしました」
振り返り、みんなに礼をする。今思うと本当に迷惑をかけたなと、少し笑ってしまう。
「アリシア!どうして…どうしてアリシアも連れて行かれるの!?」
「どうしてと言われましても、お姉様は正式なアースベルト家の当主なのです。それを私如きが手を上げたりしたのですよ?犯罪になるに決まっているじゃないですか?それに、父の乗っ取りにも賛同していたわけですし…」
「違う!アリシアは私を助けるために…」
「そんなことは関係ありませんよ。目的がなんであれ、したことは事実です。私は罰を受けたいと思います」
ああ、泣かないでくださいお姉様。私はお姉様が笑っている姿が見たいのです。私はお姉様に抱きつく。
「お姉様、昨日は言えませんでしたが、一つ、お姉様の前世のことについて、思っていたことがあるのです…」
「今はそんな時じゃ「聞いてもらえませんか?」…なに…?」
「ふふっ、ごめんなさい。お姉様は自分が悪役令嬢だと、悪だと言っていましたが、そんなことはありません。アリシアこそが悪役なのです。嘘つきなヒロイン…主人公なんてありえないですよね。物語として、嘘で他人を突き落とし、幸せになりましたなんて物語、誰も読もうとしませんもの。だから、お姉様が主人公…ヒロイン。そして、私が悪役なのです」
「違う!アリシアは…」
涙ながらにお姉様が首を横にふる。
「だから、笑っていてください。お姉様。これからお姉様の物語はハッピーエンドに向かうのです。だって、もう…私という悪役はいなくなるのですから」
「違う。アリシアは私を助けてくれたのだから。小説はそうだったかもしれない。けれど、私は!私のヒロインはアリシアなの!誰がなんと言おうと!だからどこにも行かないで!ずっと…一緒にいてよ…」
そう言って、泣き崩れるお姉様を見て、嬉しいとも思ってしまう。こんなにもお姉様は私のことを思ってくれていたんだって…
だけど、この時間も終わってしまう。
「申し訳ありませんが、お時間です」
「はい。申し訳ありませんでした。では、最後に…」
私は騎士様の声に返事をし、お姉様から離れようとするが、お姉様がぎゅっと服をつかんでいて離れられない。私がその手を軽く掴むと、お姉様は躊躇いながら手を離す。
私はその手を前に持って、お姉様の手を合わせると、お姉様と目が合う。
「お姉様、ううん。お姉ちゃん。私は本当に姉が欲しかったから、恥ずかしかったけど、本当はお姉ちゃんと一緒に寝るのとか楽しかったよ。いろんなことを話せるのも楽しかった。だからありがとう、今まで迷惑をかけてごめんね」
「あっ」
「お姉ちゃん。今まで、本当にありがとう!私はお姉ちゃんのことも、アーシャ先生のことも絶対に忘れないから!」
もう振り返らない。振り返ると未練が残ってしまうから。
「本当によろしかったのですか?」
ドーラが訪ねてくるが、お姉様と別れるなんて本当は嫌だ。だけど、仕方ないじゃない。私は悪役で、犯罪者の娘なのだもの。
「…いいの。それよりも、どうしてドーラさんが?」
「私のことはドーラと。それに、お忘れですか?私の命はあなた様の護衛ですよ。あなた様がいないならば、アースベルト家にいる意味はありません」
「正直、お姉様がいるのだから、あなたがいてくれた方が…、そういえば、あなたはリオン様の命令だったっけ。なら申し訳ないけど、リオン様に約束を守れなくれごめんなさいと言っておいてもらえる?」
「…わかりました」
これで、アリシア・アースベルトはお終い。私は貴族でも平民でもなく、犯罪者として、人生を閉じる。お姉様を守るためだもの。自分の命も惜しくない。
アーシャ先生もこんな気持ちだったのかな?
「アリシア…」
「お姉様、今までありがとうございました」
いつもは食事を食べる時間、急遽、来客があった。王都の騎士たちです。
思っていた以上に早い。それほど、王様はこのことを重く見ていたのでしょう。最後にジャンの食事を取りたかったけれど、それはできないらしい。
「朝早くに失礼します。エヴァンス公爵により、元アースベルト侯爵暗殺の容疑者として、オスカー・アースベルト並びにシシリー・アースベルトが挙げられております。ですので、引き渡してもらえますでしょうか?」
「父と母は押し入れに捕らえられています。ジャン、アルフレッドと一緒に連れて来てもらえる?」
「わかりました」
ジャンとアルフレッドが両親を連れてくる。騒がないために縄で口を防がれているが、目だけは今までとは違う。私を相当憎んでいるみたい。二人とも私を睨みつけていた。
「……私は悪役、みんなに憎まれ嫌われるのが私の役目」
誰にも聞こえないよう、小言で自分に言い聞かせる。大丈夫。私にはアーシャ先生がついている。
二人が罪人用の馬車に乗っけられるのを見送り、少しほっとする。これで、私の役目はもう終わり。
みんなが喜びを噛み締め、少し涙目になっているのを横目に私は一歩前に進む。騎士の方も私の意図に気づき、肩に手を回して誘導してくれる。
「アリ…シア?」
「では、みなさん、ご迷惑をおかけしました」
振り返り、みんなに礼をする。今思うと本当に迷惑をかけたなと、少し笑ってしまう。
「アリシア!どうして…どうしてアリシアも連れて行かれるの!?」
「どうしてと言われましても、お姉様は正式なアースベルト家の当主なのです。それを私如きが手を上げたりしたのですよ?犯罪になるに決まっているじゃないですか?それに、父の乗っ取りにも賛同していたわけですし…」
「違う!アリシアは私を助けるために…」
「そんなことは関係ありませんよ。目的がなんであれ、したことは事実です。私は罰を受けたいと思います」
ああ、泣かないでくださいお姉様。私はお姉様が笑っている姿が見たいのです。私はお姉様に抱きつく。
「お姉様、昨日は言えませんでしたが、一つ、お姉様の前世のことについて、思っていたことがあるのです…」
「今はそんな時じゃ「聞いてもらえませんか?」…なに…?」
「ふふっ、ごめんなさい。お姉様は自分が悪役令嬢だと、悪だと言っていましたが、そんなことはありません。アリシアこそが悪役なのです。嘘つきなヒロイン…主人公なんてありえないですよね。物語として、嘘で他人を突き落とし、幸せになりましたなんて物語、誰も読もうとしませんもの。だから、お姉様が主人公…ヒロイン。そして、私が悪役なのです」
「違う!アリシアは…」
涙ながらにお姉様が首を横にふる。
「だから、笑っていてください。お姉様。これからお姉様の物語はハッピーエンドに向かうのです。だって、もう…私という悪役はいなくなるのですから」
「違う。アリシアは私を助けてくれたのだから。小説はそうだったかもしれない。けれど、私は!私のヒロインはアリシアなの!誰がなんと言おうと!だからどこにも行かないで!ずっと…一緒にいてよ…」
そう言って、泣き崩れるお姉様を見て、嬉しいとも思ってしまう。こんなにもお姉様は私のことを思ってくれていたんだって…
だけど、この時間も終わってしまう。
「申し訳ありませんが、お時間です」
「はい。申し訳ありませんでした。では、最後に…」
私は騎士様の声に返事をし、お姉様から離れようとするが、お姉様がぎゅっと服をつかんでいて離れられない。私がその手を軽く掴むと、お姉様は躊躇いながら手を離す。
私はその手を前に持って、お姉様の手を合わせると、お姉様と目が合う。
「お姉様、ううん。お姉ちゃん。私は本当に姉が欲しかったから、恥ずかしかったけど、本当はお姉ちゃんと一緒に寝るのとか楽しかったよ。いろんなことを話せるのも楽しかった。だからありがとう、今まで迷惑をかけてごめんね」
「あっ」
「お姉ちゃん。今まで、本当にありがとう!私はお姉ちゃんのことも、アーシャ先生のことも絶対に忘れないから!」
もう振り返らない。振り返ると未練が残ってしまうから。
「本当によろしかったのですか?」
ドーラが訪ねてくるが、お姉様と別れるなんて本当は嫌だ。だけど、仕方ないじゃない。私は悪役で、犯罪者の娘なのだもの。
「…いいの。それよりも、どうしてドーラさんが?」
「私のことはドーラと。それに、お忘れですか?私の命はあなた様の護衛ですよ。あなた様がいないならば、アースベルト家にいる意味はありません」
「正直、お姉様がいるのだから、あなたがいてくれた方が…、そういえば、あなたはリオン様の命令だったっけ。なら申し訳ないけど、リオン様に約束を守れなくれごめんなさいと言っておいてもらえる?」
「…わかりました」
これで、アリシア・アースベルトはお終い。私は貴族でも平民でもなく、犯罪者として、人生を閉じる。お姉様を守るためだもの。自分の命も惜しくない。
アーシャ先生もこんな気持ちだったのかな?
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