32 / 33
遊び
しおりを挟む
「俺は、今日婚約破棄をする!」
「嫌です♪」
「破棄をする!」
「嫌です♪」
薔薇が咲き誇る庭で紅茶を楽しんでいると、突然物騒なやり取りが聞こえてくる。その声をたどっていくと、その先に居たのは同じ顔をした2人だった。
同じ青のドレスを見に纏い、初めての者が見ればどちらか判別できないほどに2人はそっくりだった。
それもそのはずである。なにせ、2人は双子なのだから。
「アルマ、アレン。それはもうやめないか?」
「「嫌です♪」」
「はぁ……。どうせアイリスかマリーの……マリーの仕業だろう。アイツも悪影響しか与えないな」
そろそろ本気でクビにしてやろうか? そう思っていると、不意に背後から抱きつかれる。
「何をしているんですか、アイン?」
「ああ、アイリスか。いや、2人に演劇をやめさせようと……」
「演劇?」
「「嫌です♪」」
「……なるほど。いつもの婚約破棄ごっこですね」
「いつも?」
「ええ、ここ最近はずっとこのやり取りをしているみたいです。なにか気にいるところがあったのでしょう」
アイリスはなんでもないように言うが、王族が婚約破棄と言うのは問題があるだろう。……俺が言えた義理ではないが、だからこそ余計に心配になる。
それに、もう一つ大きな問題がある。
「……なぜアレンまでアルマと同じドレスを着ている」
「えっ? 可愛いじゃないですか。アインはそう思わないのですか?」
「いや、そう言う話しじゃ……」
「お父様、私は可愛くないの?」
俺とアイリスの話しが聞こえてしまったのか、アインが涙を潤ませながら見上げてくる。
「くっ…………可愛いぞ」
「アレンばかりずるい! アルマは、アルマは!」
「ああ、もちろんアルマも可愛いぞ」
「わーい」
「少しお母様と話しがあるから2人は向こうで遊んでおいで」
「「はーい」」
大人しく言う事を聞いてくれた事にホッとしつつも、直面している問題にどう対応するかで頭を悩まされる。
「アイリス、ずるくないか?」
「ふふっ、ずるいとは酷いです。私は見たままのことを言っただけですよ」
「はぁ。今更アイリスに口で勝てるとは思っていないよ。ただ、なぜアレンまでドレスを着ているんだ。アレンは男だぞ」
「アルマばかり可愛い服を着てずるいと泣き付かれたんですもの。仕方ないじゃないですか。それとも、アインはそんなアレンを放っておけと?」
「うぐっ……はぁ。わかった。ドレスの件はもういい。だが、あの婚約破棄ごっこ……だったか? あれをやめさせるのを手伝ってくれ」
服装なら後でどうにでもなる……はずだ。少なくとも社交界に出るようになればわかってくれるだろう。それよりも、今はあの遊びの方が問題だ。
「もう手遅れだと思いますが……それに大丈夫だと思いますよ?」
「何を根拠に……」
アイリスが見ている方向を見ると、子供達の目線に合わせるためにしゃがんでいるメイド姿のマリーが居た。
「アインを揶揄おうとしたが、子供達が思ったより影響を受けてしまい、慌てて軌道修正をしようとしているみたいですね」
アイリスが子供達の元へと歩いていくので、それを追いかけるように前に進む。だんだん声が聞きとれる距離になり、アイリスが言うように、マリーから焦りが感じ取れた。
「あ、アレン様、アルマ様。そう易々と婚約破棄と口になさるのは……」
「でもマリーが教えてくれた事だよ?」
「うぐっ、それはそうなのですが……(まさか、殿下に一言、「こんやくはきー」と言って困らせてもらうだけのつもりだったのですが、こうなるのは予想外です。なにか解決方法を考えなければ……)」
いつもなら自業自得だと、それで終わらせられるのだが、子供達が関わっている以上そうは言っていられない。
少し離れた場所で、俺もマリーと同じく頭を抱えるのだった。
「嫌です♪」
「破棄をする!」
「嫌です♪」
薔薇が咲き誇る庭で紅茶を楽しんでいると、突然物騒なやり取りが聞こえてくる。その声をたどっていくと、その先に居たのは同じ顔をした2人だった。
同じ青のドレスを見に纏い、初めての者が見ればどちらか判別できないほどに2人はそっくりだった。
それもそのはずである。なにせ、2人は双子なのだから。
「アルマ、アレン。それはもうやめないか?」
「「嫌です♪」」
「はぁ……。どうせアイリスかマリーの……マリーの仕業だろう。アイツも悪影響しか与えないな」
そろそろ本気でクビにしてやろうか? そう思っていると、不意に背後から抱きつかれる。
「何をしているんですか、アイン?」
「ああ、アイリスか。いや、2人に演劇をやめさせようと……」
「演劇?」
「「嫌です♪」」
「……なるほど。いつもの婚約破棄ごっこですね」
「いつも?」
「ええ、ここ最近はずっとこのやり取りをしているみたいです。なにか気にいるところがあったのでしょう」
アイリスはなんでもないように言うが、王族が婚約破棄と言うのは問題があるだろう。……俺が言えた義理ではないが、だからこそ余計に心配になる。
それに、もう一つ大きな問題がある。
「……なぜアレンまでアルマと同じドレスを着ている」
「えっ? 可愛いじゃないですか。アインはそう思わないのですか?」
「いや、そう言う話しじゃ……」
「お父様、私は可愛くないの?」
俺とアイリスの話しが聞こえてしまったのか、アインが涙を潤ませながら見上げてくる。
「くっ…………可愛いぞ」
「アレンばかりずるい! アルマは、アルマは!」
「ああ、もちろんアルマも可愛いぞ」
「わーい」
「少しお母様と話しがあるから2人は向こうで遊んでおいで」
「「はーい」」
大人しく言う事を聞いてくれた事にホッとしつつも、直面している問題にどう対応するかで頭を悩まされる。
「アイリス、ずるくないか?」
「ふふっ、ずるいとは酷いです。私は見たままのことを言っただけですよ」
「はぁ。今更アイリスに口で勝てるとは思っていないよ。ただ、なぜアレンまでドレスを着ているんだ。アレンは男だぞ」
「アルマばかり可愛い服を着てずるいと泣き付かれたんですもの。仕方ないじゃないですか。それとも、アインはそんなアレンを放っておけと?」
「うぐっ……はぁ。わかった。ドレスの件はもういい。だが、あの婚約破棄ごっこ……だったか? あれをやめさせるのを手伝ってくれ」
服装なら後でどうにでもなる……はずだ。少なくとも社交界に出るようになればわかってくれるだろう。それよりも、今はあの遊びの方が問題だ。
「もう手遅れだと思いますが……それに大丈夫だと思いますよ?」
「何を根拠に……」
アイリスが見ている方向を見ると、子供達の目線に合わせるためにしゃがんでいるメイド姿のマリーが居た。
「アインを揶揄おうとしたが、子供達が思ったより影響を受けてしまい、慌てて軌道修正をしようとしているみたいですね」
アイリスが子供達の元へと歩いていくので、それを追いかけるように前に進む。だんだん声が聞きとれる距離になり、アイリスが言うように、マリーから焦りが感じ取れた。
「あ、アレン様、アルマ様。そう易々と婚約破棄と口になさるのは……」
「でもマリーが教えてくれた事だよ?」
「うぐっ、それはそうなのですが……(まさか、殿下に一言、「こんやくはきー」と言って困らせてもらうだけのつもりだったのですが、こうなるのは予想外です。なにか解決方法を考えなければ……)」
いつもなら自業自得だと、それで終わらせられるのだが、子供達が関わっている以上そうは言っていられない。
少し離れた場所で、俺もマリーと同じく頭を抱えるのだった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
63
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる