上 下
21 / 55

慰め

しおりを挟む
Side:クリスティーナ
 お姉様からシスコン発言をいただいた次の日。お姉様は学園に向かったので、ロイの屋敷に向かう。ちなみに、私とロイ、アインの関係はお父様公認である。
 今日の予定も、実はお父様がロイのお父様、ドイル侯爵と相談して決めてきたらしい。

「さてと、ではアイン様、良い知らせと悪い知らせのどちらから聞きたいですか?」
「……ティアが私を『様』付けするのは怪しすぎるだろう……」

 失礼ですね。私だって呼ぶ時は呼びますよ。今日は揶揄うつもりで呼んだので否定は出来ませんけど……

「はぁ。とりあえず悪い方からで頼む」
「わかりました。悪い方ですね。悪い方の話は2つあります。1つ目はお姉様がシスコンであると公言したことです!」
「「……」」
「お姉様から言ってくれたんですよ! どうですか?」
「……それは良かった、な?」
「ロイ、ありがとう!」

 1番の情報を出してあげたというのに、反応してくれたのはロイだけだなんて……

「はぁ。勘弁してくれ。さすがに今は冗談に付き合っていられるほど心に余裕がないんだ」
「別に冗談じゃなくて本当の事なのですが……まぁ、そんなことを言うならもう1つの話をさっさと話しましょうか。帰ってきたお姉様、今まで見た中で1番怒っていましたよ」

 ゴンッ。

 その音にやっぱりかと思う。こうなる前に空気を和ませようとしたのに……

「……ティア、こうなるのがわかってて……」
「当たり前じゃない。そもそも、お姉様がシスコンと公言したことを意味もなく悪い知らせという訳ないでしょう?」

 こっそりと耳打ちしてくるロイに、さも当然のように答えるクリスティーナ。その答えを聞いてロイは妙に納得する。

「今日、ティアは本当に慰めに来てたんだな」
「……私はお姉様が幸せになれるなら誰でも応援します。できそうにないなら邪魔をしますが……アインは少し可能性がありそうなので、フォローするだけです」
「素直じゃないな」

 うるさいな~。仕方ないじゃない。お姉様がアインに興味ありそうでしたし、私もアインならお姉様を預けてもいいかなって少しは思っているんだから。

「うっ……嫌われた……これからどうすれば……」

 机に叩きつけた頭を上げずにボソボソと嘆くアイン。
 もうっ! 仕方ないな~。

「アインの事は気に入っているようでしたよ。その「それは本当か!」……はい」
「そうか、気に入ってくれているのか……!」

 さっきまでの絶望から一転。今まで見たことかないぐらいテンションが高い。さっきまでの暗い雰囲気は何処へ行ったのやら。まったく……

「それで? 一体お姉様に何をしたんですか?」
「? いや、何もしていないが?」

 おかしい。お姉様のことだから、何かイベントがない限り最初の印象が変わることは無いはず……
 何も無ければ? いや、居る。問題しか起こさないような馬鹿が王城には居る。

「……もしかして、第1王子が乱入した?」
「あ、ああ。怒らせる前に少しな……」
「そのどさくさに紛れて、お姉様に何をしたんですか?」
「決して! 何も! していない!」

 おかしいな~、絶対そのタイミングだったと思ったのに……

「アレからお姉様を庇う事もしなかったんですか?」
「……庇いはした。愚兄に見られたくなかったし、アレを見て欲しいとも思わなかったから。だがそれだけだぞ! 本当に手は出していない!」

 お姉様は今までアレの婚約者として、他の男性との関わりは断ってきた。つまり、男の評価基準はアレと陛下、そしてお姉様の理想であるお父様の3人……
 アインの行動はお父様に似ていたのだと思う。お父様なら必ずお母様の前に立つと思うし、お母様には何もさせないようにすると思う。確かに似ている。似ているけど……
 ちょっとちょろ過ぎるような気がする。

 でもそんなちょろ過ぎなお姉様、可愛い……

 さてと、お姉様が昨日アインと何があったのかも聞けたし、アインも立ち直ったみたいだし、今日の目的は達成!

 さーて、帰ってきたお姉様と何を話そうかな?

 まだ昼にもなっていないのに、クリスティーナは帰ってきたリリアの事を考え、ずっとにこやかにしていた。
しおりを挟む

処理中です...