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シシリー視点 お姉様
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卒業式の当日、パーティーに向かう馬車を待っている間にお兄様に話しかけられます。
「シシリー、話があるんだが」
「?お兄様、どうしたのですか?」
「今日、パーティーが終わったら、アリシアを連れて帰ってきてほしい」
「?シアお姉様を?わかりましたわ」
お兄様が私に話しかけてくる8割?9割くらいは全部シアお姉様関係のお話です。ですが、連れて帰ってきて欲しいと頼まれたのは初めてですね。今日、何かあるのでしょうか。
私は問題がないので、返事をしておきます。ですが、お兄様の顔をみていると、思い悩んでいるようでした。本来、お兄様は無表情で、普段は何を考えているのか私には一切わかりません。お母様はわかりやすいとおっしゃるのですがそんなことはないと思います。けれども、私でもお兄様が何を考えているのかがわかる時があります。それが、シアお姉様のことを考えている時です。
お兄様が今考えていることは、シアお姉様がお兄様に不満を持っていないか心配になったとというようなところでしょうか?
「ふふっ、お兄様は本当にシアお姉様がお好きなのですね」
「…」
「どうしてわかったのか?という顔をしていますよ。お兄様はシアお姉様のことになると、本当に顔に出やすいのですね」
「…だめか?」
「いいえ、そんなことありませんわ。ですが一つだけ」
「?」
「シアお姉様がお兄様を嫌っているというようなことは絶対にありませんから。それだけは特別にお兄様に教えてあげます」
「それは「お嬢様、馬車の準備ができました」」
「ありがとう。それではお兄様行ってきますね」
たぶん、お姉様が昔のお兄様を覚えていなかったことを今でも気にしているのでしょうが、私からお兄様に言うのはやめておきましょう。
馬車に乗り込み、動き出してからも、お兄様は家の前でポツンと立っているのが見えます。私が言ったことを考えているのでしょうか。
「本当にお兄様はシアお姉様が好きなのですね」
お兄様はいつも淡々と行動しているので、あんな風に悩んでいるのは初めて見ました。
「悩んでいるお兄様に言って上げてもいいのですけどね…」
思い出すのはシアお姉様との初めて会った日のことです。
「このドレスはもうボロボロなので、新しいものを用意しましょう」
「ちょ、ちょっと待ってもらえませんか!」
「どうしたのですか?」
「そのドレスは特別なものなんです。だから、洗っていただけるだけで…」
このドレスはシルバー商会のものです。ご両親の形見という訳ではないと思うのですが…
「何か理由があるのですか?」
「…はい。顔や名前はまだ出てこないのですが、ある男の子が私のためにって、見繕ってくれたものなんです。それがとても嬉しくて…だから、その…、ご迷惑でないならば、それは置いておいて欲しいのですが…」
「ええ、それなら置いておきましょうか。さあ、お風呂に入りましょう」
この方がお兄様が一目惚れになった方でしたか。どおりでお兄様が必死になって探す訳です。なるほど、そうでしたか。
「アリシア様は、その服を見繕ってくれた殿方のことをどう思っているのですか?」
「えっ、殿方のことですか?すいません、そこまで本当に覚えていないのです。ですが…」
「ですが?」
「…ですが、その殿方と一緒に家族が笑っていた記憶はあります。私を彼が着飾ってくれて、それをお父様やお母様が褒めてくれるのです。彼は少し無表情で何を考えているのか最初はわかりませんでしたが、私が嬉しそうにしているのを見て、笑った顔が印象的でした。それを見て、お…父様もおか…さまも、みんなで…わら…て…」
そう言いながら、アリシア様が泣いてしまわれました。今思えば、これは私の配慮が足りていませんでしたね。傍目に見て元気そうだと思っていたので、目の前で両親がなくなっていることを失念していました。当時は私も8歳だったので、許してください。
ですが、あの時、私と同じ年齢なのにも関わらず、気丈に振舞っているアリシア様をみて、友人として、また、将来の姉になって欲しいと思い、私の部屋では強引に迫ってしまいました。
それに、夕食の後にお母様から聞かされたことを私の部屋で理解したらしく、シアお姉様が言っていた彼のことがお兄様だと知った時の慌てふためいていた姿は、とても可愛らしいお姿でした。
「お嬢様、お城に到着しました」
私は馬車からおり、パーティー会場であるお城を眺めます。私たちの国では、学園を卒業式の日、パーティーは学園では行わず、お城で行います。これは今回に限ったことではなく、伝統として行われているそうです。理由としては、これから自分たちが尽くす場所をよく知ることができるようにでしょうか?理由は知られていません。もしかしたら、王族の方が城でやろうと最初に言い出したからかもしれませんね。
「シシリー様、ごきげんよう」
「あっ、シアお姉様ごきげんよう」
シアお姉様ったら、シシリーと呼んでくださいと言ってあるのに、自主的にあまり呼んでくださらないのです。ですが、今日はお兄様にも呼ばれているので、帰りの馬車ではきっちりと呼び捨てで呼んでもらえるようにしましょう。
ふふっ、帰る時が楽しみです。
「シシリー、話があるんだが」
「?お兄様、どうしたのですか?」
「今日、パーティーが終わったら、アリシアを連れて帰ってきてほしい」
「?シアお姉様を?わかりましたわ」
お兄様が私に話しかけてくる8割?9割くらいは全部シアお姉様関係のお話です。ですが、連れて帰ってきて欲しいと頼まれたのは初めてですね。今日、何かあるのでしょうか。
私は問題がないので、返事をしておきます。ですが、お兄様の顔をみていると、思い悩んでいるようでした。本来、お兄様は無表情で、普段は何を考えているのか私には一切わかりません。お母様はわかりやすいとおっしゃるのですがそんなことはないと思います。けれども、私でもお兄様が何を考えているのかがわかる時があります。それが、シアお姉様のことを考えている時です。
お兄様が今考えていることは、シアお姉様がお兄様に不満を持っていないか心配になったとというようなところでしょうか?
「ふふっ、お兄様は本当にシアお姉様がお好きなのですね」
「…」
「どうしてわかったのか?という顔をしていますよ。お兄様はシアお姉様のことになると、本当に顔に出やすいのですね」
「…だめか?」
「いいえ、そんなことありませんわ。ですが一つだけ」
「?」
「シアお姉様がお兄様を嫌っているというようなことは絶対にありませんから。それだけは特別にお兄様に教えてあげます」
「それは「お嬢様、馬車の準備ができました」」
「ありがとう。それではお兄様行ってきますね」
たぶん、お姉様が昔のお兄様を覚えていなかったことを今でも気にしているのでしょうが、私からお兄様に言うのはやめておきましょう。
馬車に乗り込み、動き出してからも、お兄様は家の前でポツンと立っているのが見えます。私が言ったことを考えているのでしょうか。
「本当にお兄様はシアお姉様が好きなのですね」
お兄様はいつも淡々と行動しているので、あんな風に悩んでいるのは初めて見ました。
「悩んでいるお兄様に言って上げてもいいのですけどね…」
思い出すのはシアお姉様との初めて会った日のことです。
「このドレスはもうボロボロなので、新しいものを用意しましょう」
「ちょ、ちょっと待ってもらえませんか!」
「どうしたのですか?」
「そのドレスは特別なものなんです。だから、洗っていただけるだけで…」
このドレスはシルバー商会のものです。ご両親の形見という訳ではないと思うのですが…
「何か理由があるのですか?」
「…はい。顔や名前はまだ出てこないのですが、ある男の子が私のためにって、見繕ってくれたものなんです。それがとても嬉しくて…だから、その…、ご迷惑でないならば、それは置いておいて欲しいのですが…」
「ええ、それなら置いておきましょうか。さあ、お風呂に入りましょう」
この方がお兄様が一目惚れになった方でしたか。どおりでお兄様が必死になって探す訳です。なるほど、そうでしたか。
「アリシア様は、その服を見繕ってくれた殿方のことをどう思っているのですか?」
「えっ、殿方のことですか?すいません、そこまで本当に覚えていないのです。ですが…」
「ですが?」
「…ですが、その殿方と一緒に家族が笑っていた記憶はあります。私を彼が着飾ってくれて、それをお父様やお母様が褒めてくれるのです。彼は少し無表情で何を考えているのか最初はわかりませんでしたが、私が嬉しそうにしているのを見て、笑った顔が印象的でした。それを見て、お…父様もおか…さまも、みんなで…わら…て…」
そう言いながら、アリシア様が泣いてしまわれました。今思えば、これは私の配慮が足りていませんでしたね。傍目に見て元気そうだと思っていたので、目の前で両親がなくなっていることを失念していました。当時は私も8歳だったので、許してください。
ですが、あの時、私と同じ年齢なのにも関わらず、気丈に振舞っているアリシア様をみて、友人として、また、将来の姉になって欲しいと思い、私の部屋では強引に迫ってしまいました。
それに、夕食の後にお母様から聞かされたことを私の部屋で理解したらしく、シアお姉様が言っていた彼のことがお兄様だと知った時の慌てふためいていた姿は、とても可愛らしいお姿でした。
「お嬢様、お城に到着しました」
私は馬車からおり、パーティー会場であるお城を眺めます。私たちの国では、学園を卒業式の日、パーティーは学園では行わず、お城で行います。これは今回に限ったことではなく、伝統として行われているそうです。理由としては、これから自分たちが尽くす場所をよく知ることができるようにでしょうか?理由は知られていません。もしかしたら、王族の方が城でやろうと最初に言い出したからかもしれませんね。
「シシリー様、ごきげんよう」
「あっ、シアお姉様ごきげんよう」
シアお姉様ったら、シシリーと呼んでくださいと言ってあるのに、自主的にあまり呼んでくださらないのです。ですが、今日はお兄様にも呼ばれているので、帰りの馬車ではきっちりと呼び捨てで呼んでもらえるようにしましょう。
ふふっ、帰る時が楽しみです。
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