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4.ホテル
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イタリア料理を存分に味わい、いつも通りラブホテルに着いた。
豪華というわけではないけれど、アジアンテイストの落ち着いた雰囲気の部屋で、私たちは抱き合う。
「満琉さんのお陰で、ネクタイはずすの上手くなったんだから」
首元にわざと息を吹きつけるようにしながら、ネクタイをほどいていく。ゆるく巻いた髪を満琉が弄ぶのを感じながら、ネクタイがさらりと手の中に落ちる。
「里美、いい匂い」
ワイシャツのボタンに手をかける私を制し、今度は満琉が薄い上着を脱がせ始めた。ワンピース一枚になり、肩があらわになる。
「何もしてないよ。香水も嫌いだし、化粧もそんなにしていない」
「だからいいんだよ。俺の好きな、里美の匂いだ」
剥き出しの肩に、ちゅっと音を立ててキスをした後に、ぺろりと舐めた。
匂いが移らなければ、浮気がばれにくい。
だから目をつけたのだろうか。
私を思い出す何かを持たず、匂いも残らない。シャンプーも使わず、お湯に浸かるか流すかの二択だ。
お泊まりをしたこともないし、レシートは置いていく。
今が終われば、何も残らず、なかったことになる。
だから関係を続けているのだろうか。
満琉も、匂いはしない。
煙草の匂いも、コーヒーの匂いも、何もない。
だから私も、関係を持ったのかもしれない。
甘い蜜で私を引き寄せ、脳を麻痺させるこの男と。
次は私の番だとワイシャツのボタンに指を掛ける。手を押しつけるように一つずつ外して、軽く刺激する。
完全に脱がし終えると、テーブルの上のネクタイに重ねるようにして無造作に置く。
それを待っていたとばかりに、満琉は背中のファスナーを、引き下ろした。
ストンと、薄い水色の花柄ワンピースが床に落ちる。そのまま、花の花弁を一枚一枚むいていくように、まとう布を剥がしては、落としていく。
花びらの落ちたむき出しの私はどう映っているのだろうか。
満琉の瞳を覗きこむと、そのままキスをされ、見えなくなった。
体が上気し、無臭だったはずの二人の間には、むせ返るような熱さが宿る。
私は、静かに瞳を閉じた。
キスをしながら瞳を開けても、きっとつまらないものしか映らない。
豪華というわけではないけれど、アジアンテイストの落ち着いた雰囲気の部屋で、私たちは抱き合う。
「満琉さんのお陰で、ネクタイはずすの上手くなったんだから」
首元にわざと息を吹きつけるようにしながら、ネクタイをほどいていく。ゆるく巻いた髪を満琉が弄ぶのを感じながら、ネクタイがさらりと手の中に落ちる。
「里美、いい匂い」
ワイシャツのボタンに手をかける私を制し、今度は満琉が薄い上着を脱がせ始めた。ワンピース一枚になり、肩があらわになる。
「何もしてないよ。香水も嫌いだし、化粧もそんなにしていない」
「だからいいんだよ。俺の好きな、里美の匂いだ」
剥き出しの肩に、ちゅっと音を立ててキスをした後に、ぺろりと舐めた。
匂いが移らなければ、浮気がばれにくい。
だから目をつけたのだろうか。
私を思い出す何かを持たず、匂いも残らない。シャンプーも使わず、お湯に浸かるか流すかの二択だ。
お泊まりをしたこともないし、レシートは置いていく。
今が終われば、何も残らず、なかったことになる。
だから関係を続けているのだろうか。
満琉も、匂いはしない。
煙草の匂いも、コーヒーの匂いも、何もない。
だから私も、関係を持ったのかもしれない。
甘い蜜で私を引き寄せ、脳を麻痺させるこの男と。
次は私の番だとワイシャツのボタンに指を掛ける。手を押しつけるように一つずつ外して、軽く刺激する。
完全に脱がし終えると、テーブルの上のネクタイに重ねるようにして無造作に置く。
それを待っていたとばかりに、満琉は背中のファスナーを、引き下ろした。
ストンと、薄い水色の花柄ワンピースが床に落ちる。そのまま、花の花弁を一枚一枚むいていくように、まとう布を剥がしては、落としていく。
花びらの落ちたむき出しの私はどう映っているのだろうか。
満琉の瞳を覗きこむと、そのままキスをされ、見えなくなった。
体が上気し、無臭だったはずの二人の間には、むせ返るような熱さが宿る。
私は、静かに瞳を閉じた。
キスをしながら瞳を開けても、きっとつまらないものしか映らない。
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