好きな人は、3人

秋風いろは

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11.岩石との出会い

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 小岩井岩石との出会いは、漫研の新入生歓迎コンパだ。

 見た目が若い相撲取りのような風貌で威圧感があり、てっきり卒業したOBの先輩が遊びに来たのだと勘違いをした。

 仲を深めても意味がないと思い、人数が多かったので近づくこともなく、その時は一言も話さなかった。

 初めて会話をしたのは、二限の授業前に寄った部室で会った時だ。朝だからか、他に人はいなかった。

「新歓コンパで会いましたよね。会話はしていませんが」

 奥に座っている彼の隣に座り、話しかけた。初めて近くで顔を見ると、ガタイがいい割に、色素の薄い瞳の色をしていた。

 机の上の紙には、なぜか鉛筆で筋肉ばかりが描かれている。筋肉を描くのが趣味なのかもしれない。

「えーと。覚えてませんね。誰でしょう」
「古城里美です。一年生です」
「名前や顔覚えるの、苦手なんですよ。俺は、小岩井岩石です」
「岩石! 岩の石ですか? 強そうですね」
「よく言われますよ」
「岩が二つもあるじゃないですか。だからそんなに体も大きいんですね」
「関係ないかと」

 あまり愛想がいいタイプではないらしく、話していても壁を感じた。

「何年生ですか? 先輩ですよね」
「いえいえ、一年生ですよ」

 つい、顔をしかめた。

「早く言ってよ。ずっと敬語で話してたじゃん」
「そっちが敬語だったから」
「先輩だと思ったからに決まってるでしょ。一年生だって私が言った時点で、俺も俺もーって敬語取ってよ。タメ相手に頑張って丁寧語使っちゃったよ」
「無駄骨だったな」
「無駄骨にさせたんでしょ」
「いきなり丁寧語外せるほど、人付き合い慣れてないんで。お疲れさん」
「何それ。とりあえずタメなら、連絡先教えて」
「いきなり?」
「今後幽霊部員になる予定だから、情報源が必要なの。もうすぐ授業だし早くして」
「いきなり幽霊宣言ですか。早すぎでしょ、いくらなんでも」

 ごちゃごちゃ言いながら、しぶしぶといった様子の岩石と、連絡先を交換した。

「話、合わないもん。ちょっとジャンルが皆とズレてる気がする。ボーイズラブや萌え系よりも、異世界ものや感動系が好きなんだよね、私。新歓コンパの時点で、話が合わなさすぎて諦めた」
「見切り早すぎるな」
「とりあえず、呼び方は岩ちゃんでいい? それから、私の名前、覚えてる?」
「あー。えっと」
「里美ね、よろしく。じゃ、もう授業行くから」
「はいはい」

 はー、とため息混じりに送り出された。

 これが、小岩井岩石との出会いだった。

 一年生の時は、部室には昼休憩以外の時間によく行っていた。人数が少なく、話しやすかったからだ。授業前のわずかな時間だけというのも、気楽だった。

 岩石に対しては、なぜか今まで、一度も嘘をついたことがない。不思議と何を言っても許されるような、受け入れてもらえるような気安さがあった。

 見た目に反してスイーツが好きで、休日は二人でたまに食べに行く。

 平日夜に満琉と会うと、翌日は童心に戻って椿桔の家に行きたくなり、そんな自分に嫌気がさすと、嘘をつかずに自分を出せる岩石に会いたくなる。

 その繰り返しだ。

 私は昼休憩が終わって苦痛だった部室を後にすると、岩石にメッセージを送った。

『学祭は一日目の十五時からラストまでに、入れといた。昼は残念ながら、埋まってた。ところで今日、一緒に帰れる? 五限の終わりに図書館入ってすぐの椅子で待ってる』

 今日は三限から五限まで、ぎっちり授業が入っている。授業を受けながら、のんびり返事を待とう。
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