セックスレスの悲しみを越えて、不満なしの境地に至るまでの過程を赤裸々に

秋風いろは

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結婚後

14.楽になった誘い文句

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オンラインゲームをいつも通りに楽しんでいる夫の横に、久しぶりにドキドキしながら近寄った。

「どうした?」

こちらを見ずに、でも声音は優しく夫が尋ねる。

「もう、2年もしてないよね」
「何を?」
「性行為」
「年が年だけにな」

また、それか。
そう思いながら、「したい」と言わずに済むことに安堵した。

「2人目の子供がほしい」

一息で、言い切った。
嫌だと言われたら、それまでだ。
父親が望んでいない子供は、産むべきじゃない。

でも、家族の在り方に関することで、夫が私の意思を拒否することは、ない気がした。

「いきなりな話だな。1人の予定じゃなかったのか?」

ずっとその予定だったから、驚いているようだった。
突然の思いつきか、悩んだ末の結論か、確かめようとしているようだった。

「ずっとほしかった。望みを捨てきれずに、まだ抱っこ紐もとってある。経済的な部分で心配だったけど、今のパート先の時給は1500円。信用もされてる。私ほど手に職があるパートは今の会社に一度も来なかったし、再就職先が見つからなければ絶対に戻れる。この金額稼げるなら、2人目を産んでも、生活は成り立つ」

考えに考えた末だと伝えるために、理詰めで説明した。

「なるほど」

ゲームをしながら、これだけ現実のことを考える夫を見るのは初めではないだろうかと思いながら、言葉を続けた。

「ただ、1人目と違って24時間介護が必要レベルの障害があると生活は厳しくなるし、息子への負担も大きくなる。私たちのほうが先に死ぬかもしれないしね。だから40歳までにできなければ、リスクも高くなるし諦める。嫌なら、やめとくよ」

数分、夫は深く考えていた。

そして、一言。

「分かった。2人目、つくろう」

そう言った。


その日は排卵日周辺ではなかったので、そのまま私は寝室へ移動した。もちろん夫は引き続きオンラインゲームだ。

ほっとした気持ちで布団に入る。

強い性欲は、子供がほしいという強い思いに、昇華した。
「夫がほしい」ではなくて、「子供がほしい」に変換できた気がした。

もう、「したい」とは言わなくて済む。
「排卵日に入るから、協力して」と言うだけで、通じる。

諦めきれずにとっておいた、息子の0歳の時のサンタ服。
使いやすかった、抱っこ紐。
お気に入りだった、ガラガラ。

また、使えるといいな。

久しぶりに、孤独を感じないまま、布団に入った。

家族をもう1人、つくろう。
もし、もっと若い時にそう決めていたのなら、ゲームにきりをつけて、抱きしめに来てくれていたのかな。
家族の未来図について話しながら、頭をなでてくれていたのかな。

変わってしまった私たちの関係に、寂しさを少し感じながら、眠りについた。
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