セックスレスの悲しみを越えて、不満なしの境地に至るまでの過程を赤裸々に

妊活開始後

20.最後のその時

そのことについて、話してくれていたらどうだっただろう。

もう、セックスしたいとは思わない。
面倒だし、ゲームの方が楽しい。

それだけが理由なんだと、思っていた時と。

なかなか勃たせるのも、大変になった。
その問題を、解決する気はない。

と、本音を教えてくれた場合。
どう、違ったんだろう。


きっと、私の絶望は軽くなったはず。


例えるなら、どうだろう。
『働くのは面倒だ。ゲームの方が楽しいから行きたくない』とだけ言われるより『上司もヒステリックで辛い。だからといって異動を求めたりと動くのも面倒だから何もしないけど、行きたくない』という理由もあった方が、多少は共感できる、といったところだろうか。

言わなかったのは、セックスに関することで歩み寄るつもりはなかったからだと思う。

自分はしたくないのに、わざわざ精力をつける何かを摂取したくはないだろうし、ましてや病院に相談なんて、したくないに違いない。

私の心を傷つけてしまう可能性も、考えたのかもしれない。


「駄目だ、勃たない……っ」


苦しげにそう言う夫を、責める気にはなれない。

何とか一瞬だけ勃起したそれを、数秒後には元に戻ってしまいそうなそれを、妊活ジェルを塗っておいた私の中に急いで入れて、高速で出す。

もう十分だ。
あなたも頑張った。

どうか、どうかこれが最後でありますように。
どうか、妊娠しますように。

普段、意識すらしない、いるのかどうかすらも分からない神様に、ひたすら祈った。


その、最後のセックスで、私は妊娠した。