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8,お揃い
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ベッドに寝転がってスマホをいじっている。
もう窓を開けると肌寒い風が入ってきて短い夏がとっくに終わったとわかる。
スマホにも飽きて横をみる。
ベッドに寄りかかって漫画を読んでいる椎木くんの黒い髪や首や肩をぼんやり見つめる。
触れたいな、、僕の方をみて笑って欲しい。
「椎木くん楽しい?」
「んー」
漫画に真剣である。
寝転がったまま彼の髪の毛に手を伸ばそうとしてふと思い出した。
学校で座っている椎木くんの後ろから抱きついていた春川さんの姿。
僕は思い出した事に1人でムッとして身体を起こすと、後ろからがばっと椎木くんの首に腕を回して抱きつく。
あれ、、想像以上の無反応。
抱きつかれ慣れてる感じがムカつく。
「春川さんのまねー。」
「受け手の心情が違ってくるんですけど」
不機嫌な声で嫌味を言ってやると、そのまま漫画を読みながら、ふっと笑って返してくる。
「うそつけ。慣れてるくせに」
僕がますます拗ねてみせて、回した手を離そうとすると、彼は空いた手で僕の腕を掴んで離れないように引き戻す。
「あー、2人きりの部屋で楠木はベッドに寝てるし、あろうことか抱きついてくるし、俺のこと何だと思ってんのかなー。俺も年頃の男の子だから、そんな事されるともしかして誘ってんのかなーとか良い方に捉えてそろそろ振り返ってベッドに押し倒してみようかとか、あたりまえのようにムラムラと、ー」
「うわぁ、わかった!ストップストップ!」
わざとらしくペラペラと言う彼の口を慌てて塞ぐ。
楽しそうに笑う椎木くん。
僕の腕から手を離した椎木くんがくるりと振り返って「はい、手遅れー」と不敵な笑いを浮かべてベッドに上がってくる。
「はい、押し倒しー」
僕にのしかかるように組み敷いてくる。
「ご、ごめんなさい。ふざけました。」
「男子高校生をなめちゃいけない」
冗談とも本気ともつかない顔で笑いながら僕の腕を掴んで上にのっている椎木くんがキスをしてくる。
「んんっ」
当然のように舌を僕の舌にからめる。
僕にとってももうそれはいつものキスで、抵抗を諦めて彼の首に腕をまわして応じる。
ただここがベッドの上だというだけで、椎木くんが僕の上にいるというだけでちょっと緊張してしまう。
ーそんなことを思っている時、首筋に椎木くんの冷たい指が撫でるように触れてその冷たさにゾクリとして首をすくめる。
顔を離して僕を見る彼の瞳が熱を帯びていて少し焦る。
彼は触れていた僕の首筋にゆっくり唇を這わせる。
「っんっ、ま、待って、椎木くん!」
首筋に彼の温かい舌の感触。その感触に急速に熱が下半身に集まるのを感じて半ばパニックに陥る。
ーやばい、やばい、身体の反応止まれ!どうしよう、椎木くんが本気っぽい、やばい
触れ合ってキスをするのにはずいぶん慣れた。でもこの体勢で、それ以上に進もうとする椎木くんを前に焦るなと言う方が無理だ。
その時僕を救ってくれたのは椎木くんの携帯の着信音だった。
「ね、椎木くん、で、電話なってる」
「無視で良くね」
低い声で言いながら、ツーと舌先で首筋をなぞる。体がピクリと反応してしまう。
「っうあっ、だ、だめだって!電話だってば!早く出て!」
うわずる僕の声に仕方がなさそうにゆっくりと身体を離して電話のもとへ行った隙に、僕は布団で下半身を隠した。
焦った、、電話がならなかったらどうなっていたか、、
椎木くんは最初のように僕に背を向けてベッドに寄りかかって座ると電話に出た。
「もしもしーどした?」
「ーえ、何で?」
「は?何で。ーあー、、まぁそっすね。」
「どこ?瀬戸んち?無理かもだけど、、わかった。折り返すわ」
早々に電話を切った椎木くんが僕を振り返る。
「え、何で布団被ってんの?」
「!?いや、別に!」
「もしかして、勃っちゃった?」
その台詞に今度は顔に血があつまる。
「っるさい!あんたのせいだろ。からかうな!」
悔しくて椎木くんの肩を蹴っ飛ばす。
「待て、怒んな。からかってないって。嬉しかっただけ。ーそれに俺もお揃い!正常な反応!」
「嘘つけ」
「嘘じゃないって。続きをすればわかる。」
「え、、いや、、ごめん。」
たじろいで僕が首を横に振ると椎木くんは笑う。
「うわ、ひでぇ。」
「、、んー、、やっぱごめん!意気地なしです!」
「いやいや、冗談っす。ーあ、でもお揃いなのは本当」
「本当に?椎木くんも?」
「お互い年頃の男子。好きな人とキスとかそれ以上とかすれば反応もするでしょ。」
言いながら彼は少し照れたように視線をそらす。
ーそうか、椎木くんは違うと勝手に思っていた。僕はそういう経験がないから、僕だけが恥ずかしいんだと思った。
椎木くんも僕で勃っちゃったりするんだ、、。
「エヘヘ」
「うわ、何」
「嬉しい」
拗ねたと思ったら恥ずかしがったり怒ったり喜んだり、、忙しいやつ、と椎木くんは思っただろう。
次の日の土曜日、僕らは瀬戸くんの家の近くの駅で待ち合わせをして瀬戸くんの家へ向かっていた。
昨日僕を救助してくれた電話は瀬戸くんからで、僕と椎木くんに明日家まで来て欲しいという内容だった。
「瀬戸俺らの事知ったっぽい。昨日開口一番、くっきーと一緒か?って聞かれた」
「うん、、一緒に来てっていうあたり、そうっぽいね。」
質問攻めにされたらどうしよう、学校では秘密にしてくれるだろうか?
そんな事を不安に思いながら瀬戸くんの家につくと、待っていたのは予想外の事だった。
「えーと、瀬戸さん?」
瀬戸くんの部屋に入ると知らない人がいた。中性的な顔をしていて華奢な人だ。
椎木くんが説明を求めると、「まぁ座って座って」とテーブルの反対側に座るように促されて、瀬戸くんはその人の横に座る。
「えー、楠木くん、椎木くん、申し訳ありませんでした!」
座るなり深々と瀬戸くんが頭を下げる。
「いや待て瀬戸、話がみえねぇ。」
「昨日朱莉が見たことも無いような剣幕でガチギレしまして、、小一時間説教されました。」
「お、おお、、?」
「オレの軽率な行動でキミらが大変なことになったとも聞きまして、、」
「朱莉やってんな」
「そもそもは2人も聞いたと思うけど、オレがうじうじしていたせいで、、キミらの関係知らなかったとは言えもめる原因作ってしまいました!!」
そこまで頭を下げていた瀬戸くんは、ふと思い出したように頭を上げて僕と椎木くんを交互に見る。
「え、って言うか、全然気づかんかったからガチでビビったんだけど、いつからそういうご関係??」
「言うかよ。瀬戸の事でこっちだってビビったわ」
「そりゃそうかぁ。」アハハハと笑ってようやく隣の人を紹介しはじめる。
「一年生の吾妻拓実くん、俺が春から付き合ってた人です。」
やっと紹介されて、ずっと黙っていた彼は自己紹介してから自分達の揉め事に巻き込む形になった事を申し訳なさそうに謝る。
目が大きくて色が白くてまつ毛が長い。女の子には見えないけれど女の子のように可愛い。
「ーあれ?瀬戸くんと、えっと吾妻くん?って別れたんじゃないの??」
僕が言うと
「あ、拓実で良いです。皆そうよぶんで。ー8月の最初に別れました。けど、昨日からまた、、」
そう言ってはにかむ。
「んで、キミらのことも知っちゃったし、隠す必要ないかなーって」
いたずらっ子のように瀬戸くんが笑う。
「僕嬉しいです!堂々と隠さずいられる人っていなかったから」
うん、わかる気がする。普通の恋人でいたい気持ち。
「瀬戸だったらまわりにオープンにするかもって思ったから、春からとかビビった」
「今まではねー。相手が拓実ってことも最初はあって言わなかったけど、実際すげぇ好きだから外野に首突っ込まれたくなかったんだわ。」
「まぁ、うん、人ごとではない。」
僕と拓実くんは、同じ立場のような気がしてすぐに意気投合した。瀬戸くんと椎木くんの会話を聞きながらゲームをしたりしていた。
「バレそうになった時とか、何かあったときにフォローもし合えるし、ここだけはオープンな関係って事で!」
「でも拓実くんさ、本当に瀬戸でいいん?コイツの学校での振る舞い知ってんでしょ?」
ゲームの手を止めて、椎木くんの言葉にニコッと笑う。
「はい、女の子とイチャイチャベタベタデレデレして、ー」
「おい、タクミそれ以上言うな椎木センパイも似たようなもんだ」
「え、酷くね?ね、楠木。ーアレ?楠木さんもそんな感じっすか?」
瀬戸くんと椎木くんが顔を見合わせて不満げな顔をするから思わず僕と拓実くんは笑う。
ーあぁ、ホントだ。ただ誰かと気持ちを共有出来るだけでスッと心が軽くなる。
「しかもプライベートもだらしなくて常に浮気の心配もしなきゃですけど、昨日ちゃんと話して、やっぱりお互い好きなので仕方がないです。」
力強く言いきる拓実くんは見かけによらず男らしいなと思う。僕も見習いたいと思う。
帰り際、「楠木センパイ、よかったら連絡先交換しませんか?」と拓実くんが言ってくれた。
「え、クッキー俺とも!俺そう言えば友だちなのにしらんのよ。」
「おい、お前はぜってー駄目だろ。」
「はぁ!?俺は楠木くんと友だち!椎木に制限される筋合いないべ!彼氏面かよ、独占欲かよ」
「うん、瀬戸さんはダメ。僕と椎木センパイが許さない。」
「うーわ、お前ら、、言っとくけど椎木と拓実も駄目だかんな」
瀬戸くんが拗ねて、皆んなが笑う。
僕は嬉しかった。椎木くんの隣にいることが認められる空間が出来たことが。皆んなが笑っていて、椎木くんが笑っていて心底幸せだなと思った。
「じゃあねー」
「拓実くんは家近いの?」
「こいつは今日オレんちにお泊まりなの。親が朱莉連れてばーちゃんち行ってるからね」
言いながら瀬戸くんが拓実くんの腰に腕を回す。拓実くんもそれを照れたりせずにニコニコしたまま手を振っていた。
帰り道。暗い道に街灯が灯っている。
あの2人はそういう関係なんだなと僕にもわかる。そして昨日の僕を思い出すとちょっとだけ落ち込む。
「何考え込んでんの?」ペットボトルに口をつけながら椎木くんが聞く。
「ーあの2人、、エッチしたよね、、」
ゲホゲホと椎木くんがむせる。
「うわ、溺れるかと思ったわ。ーそりゃしてんでしょ。あの瀬戸がしないとかありえねーわ。」
「だよね。。」
黙る僕の手を椎木くんの手が包む。
「なに悩んでんの」
「ー椎木くんも、したい?」
「は、俺?」
単刀直入に聞く僕に「えー、、」と困った顔をしていたけど、僕が真面目な顔をしていたから椎木くんも少しだけ無言になった。
「したいか、したくないかって聞かれたらしたいよ。」
「、、、」
「そりゃ好きな人に触れたいし、もっと近くに、と思う。」
「うん。」
「でもそれはさ、楠木の気持ちを置いてってまでって事じゃないんだよ。」
わかる?と言うように優しい目で僕を覗く。
頷くと僕はモヤモヤと心の中にあるものを思い切って話し始める。
「ー僕はさ、別に超がつくほど奥手ではなくって、、椎木くんを見て触れたいと思ったりキスしたいとも思う普通の男なんだよ。やらしい事も考えるし、椎木くんとの、、事も、、考えて1人で、したりも」
「っちょ、待て待て。一回タイム。心の準備させて。なんかすごい事言ってるけどわかってる?今俺心臓止まった。」
立ち止まって飲み物を口にする椎木くんの声が焦ってて僕はちょっと笑った。
「たまに楠木にはビビるわ。。よし、オケ。オレの事を考えてのくだりから頼む」
「いや、もうそこはいいよ!言いたいのはそこじゃなくて、えっと、、僕だって同じふうに思ってるってことを伝えたくて」
「ー、、うん。」
「たぶんだけど、相手が女の子だったら、してると思う。」
「ーそれはちょっと複雑」
「あ、ごめ、今の無し。ちょっと違うや。えっと何だろ、椎木くんも初めてだったら、とか、、」
「、、、楠木さ、言いたいこと何となーくわかるんだけど、ゆーて俺だって同性初めてだし、楠木が感じる不安ときっと同じようなもの持ってる。」
椎木くんが立ち止まって少し困った顔をする。
「俺だって、迷うし、緊張もする。
ごめん、楠木、1人で悩まんで。たぶん俺のそうゆーのが分かりづらいから、楠木は自分と俺の違いが大きいと思って戸惑ってるんじゃないかって、、話聞いて思った。」
「そ、、うなのかな?」
「違う?」
「椎木くんはいつも余裕があって、僕ばっかり焦って、、って、、」
「最初が違う。余裕なんて無いし、楠木と何も違わないよ。ーただ俺の身勝手で楠木に嫌な思いはさせたくはない」
「そっか、、」
「そ。」
また手を繋いで歩き出す。
「椎木くん、ありがとう。話してみて良かった。」
「いや、俺こそ。いろいろわかって良かったわ。特に楠木が俺をおかずに1人で」
「わーーーっ!もうそこいいから!忘れろよ!」
口を塞ごうとする僕の手をパッとかわして椎木くんが笑う。
「お揃いだねー」
「はぁ~っ!?」
もう窓を開けると肌寒い風が入ってきて短い夏がとっくに終わったとわかる。
スマホにも飽きて横をみる。
ベッドに寄りかかって漫画を読んでいる椎木くんの黒い髪や首や肩をぼんやり見つめる。
触れたいな、、僕の方をみて笑って欲しい。
「椎木くん楽しい?」
「んー」
漫画に真剣である。
寝転がったまま彼の髪の毛に手を伸ばそうとしてふと思い出した。
学校で座っている椎木くんの後ろから抱きついていた春川さんの姿。
僕は思い出した事に1人でムッとして身体を起こすと、後ろからがばっと椎木くんの首に腕を回して抱きつく。
あれ、、想像以上の無反応。
抱きつかれ慣れてる感じがムカつく。
「春川さんのまねー。」
「受け手の心情が違ってくるんですけど」
不機嫌な声で嫌味を言ってやると、そのまま漫画を読みながら、ふっと笑って返してくる。
「うそつけ。慣れてるくせに」
僕がますます拗ねてみせて、回した手を離そうとすると、彼は空いた手で僕の腕を掴んで離れないように引き戻す。
「あー、2人きりの部屋で楠木はベッドに寝てるし、あろうことか抱きついてくるし、俺のこと何だと思ってんのかなー。俺も年頃の男の子だから、そんな事されるともしかして誘ってんのかなーとか良い方に捉えてそろそろ振り返ってベッドに押し倒してみようかとか、あたりまえのようにムラムラと、ー」
「うわぁ、わかった!ストップストップ!」
わざとらしくペラペラと言う彼の口を慌てて塞ぐ。
楽しそうに笑う椎木くん。
僕の腕から手を離した椎木くんがくるりと振り返って「はい、手遅れー」と不敵な笑いを浮かべてベッドに上がってくる。
「はい、押し倒しー」
僕にのしかかるように組み敷いてくる。
「ご、ごめんなさい。ふざけました。」
「男子高校生をなめちゃいけない」
冗談とも本気ともつかない顔で笑いながら僕の腕を掴んで上にのっている椎木くんがキスをしてくる。
「んんっ」
当然のように舌を僕の舌にからめる。
僕にとってももうそれはいつものキスで、抵抗を諦めて彼の首に腕をまわして応じる。
ただここがベッドの上だというだけで、椎木くんが僕の上にいるというだけでちょっと緊張してしまう。
ーそんなことを思っている時、首筋に椎木くんの冷たい指が撫でるように触れてその冷たさにゾクリとして首をすくめる。
顔を離して僕を見る彼の瞳が熱を帯びていて少し焦る。
彼は触れていた僕の首筋にゆっくり唇を這わせる。
「っんっ、ま、待って、椎木くん!」
首筋に彼の温かい舌の感触。その感触に急速に熱が下半身に集まるのを感じて半ばパニックに陥る。
ーやばい、やばい、身体の反応止まれ!どうしよう、椎木くんが本気っぽい、やばい
触れ合ってキスをするのにはずいぶん慣れた。でもこの体勢で、それ以上に進もうとする椎木くんを前に焦るなと言う方が無理だ。
その時僕を救ってくれたのは椎木くんの携帯の着信音だった。
「ね、椎木くん、で、電話なってる」
「無視で良くね」
低い声で言いながら、ツーと舌先で首筋をなぞる。体がピクリと反応してしまう。
「っうあっ、だ、だめだって!電話だってば!早く出て!」
うわずる僕の声に仕方がなさそうにゆっくりと身体を離して電話のもとへ行った隙に、僕は布団で下半身を隠した。
焦った、、電話がならなかったらどうなっていたか、、
椎木くんは最初のように僕に背を向けてベッドに寄りかかって座ると電話に出た。
「もしもしーどした?」
「ーえ、何で?」
「は?何で。ーあー、、まぁそっすね。」
「どこ?瀬戸んち?無理かもだけど、、わかった。折り返すわ」
早々に電話を切った椎木くんが僕を振り返る。
「え、何で布団被ってんの?」
「!?いや、別に!」
「もしかして、勃っちゃった?」
その台詞に今度は顔に血があつまる。
「っるさい!あんたのせいだろ。からかうな!」
悔しくて椎木くんの肩を蹴っ飛ばす。
「待て、怒んな。からかってないって。嬉しかっただけ。ーそれに俺もお揃い!正常な反応!」
「嘘つけ」
「嘘じゃないって。続きをすればわかる。」
「え、、いや、、ごめん。」
たじろいで僕が首を横に振ると椎木くんは笑う。
「うわ、ひでぇ。」
「、、んー、、やっぱごめん!意気地なしです!」
「いやいや、冗談っす。ーあ、でもお揃いなのは本当」
「本当に?椎木くんも?」
「お互い年頃の男子。好きな人とキスとかそれ以上とかすれば反応もするでしょ。」
言いながら彼は少し照れたように視線をそらす。
ーそうか、椎木くんは違うと勝手に思っていた。僕はそういう経験がないから、僕だけが恥ずかしいんだと思った。
椎木くんも僕で勃っちゃったりするんだ、、。
「エヘヘ」
「うわ、何」
「嬉しい」
拗ねたと思ったら恥ずかしがったり怒ったり喜んだり、、忙しいやつ、と椎木くんは思っただろう。
次の日の土曜日、僕らは瀬戸くんの家の近くの駅で待ち合わせをして瀬戸くんの家へ向かっていた。
昨日僕を救助してくれた電話は瀬戸くんからで、僕と椎木くんに明日家まで来て欲しいという内容だった。
「瀬戸俺らの事知ったっぽい。昨日開口一番、くっきーと一緒か?って聞かれた」
「うん、、一緒に来てっていうあたり、そうっぽいね。」
質問攻めにされたらどうしよう、学校では秘密にしてくれるだろうか?
そんな事を不安に思いながら瀬戸くんの家につくと、待っていたのは予想外の事だった。
「えーと、瀬戸さん?」
瀬戸くんの部屋に入ると知らない人がいた。中性的な顔をしていて華奢な人だ。
椎木くんが説明を求めると、「まぁ座って座って」とテーブルの反対側に座るように促されて、瀬戸くんはその人の横に座る。
「えー、楠木くん、椎木くん、申し訳ありませんでした!」
座るなり深々と瀬戸くんが頭を下げる。
「いや待て瀬戸、話がみえねぇ。」
「昨日朱莉が見たことも無いような剣幕でガチギレしまして、、小一時間説教されました。」
「お、おお、、?」
「オレの軽率な行動でキミらが大変なことになったとも聞きまして、、」
「朱莉やってんな」
「そもそもは2人も聞いたと思うけど、オレがうじうじしていたせいで、、キミらの関係知らなかったとは言えもめる原因作ってしまいました!!」
そこまで頭を下げていた瀬戸くんは、ふと思い出したように頭を上げて僕と椎木くんを交互に見る。
「え、って言うか、全然気づかんかったからガチでビビったんだけど、いつからそういうご関係??」
「言うかよ。瀬戸の事でこっちだってビビったわ」
「そりゃそうかぁ。」アハハハと笑ってようやく隣の人を紹介しはじめる。
「一年生の吾妻拓実くん、俺が春から付き合ってた人です。」
やっと紹介されて、ずっと黙っていた彼は自己紹介してから自分達の揉め事に巻き込む形になった事を申し訳なさそうに謝る。
目が大きくて色が白くてまつ毛が長い。女の子には見えないけれど女の子のように可愛い。
「ーあれ?瀬戸くんと、えっと吾妻くん?って別れたんじゃないの??」
僕が言うと
「あ、拓実で良いです。皆そうよぶんで。ー8月の最初に別れました。けど、昨日からまた、、」
そう言ってはにかむ。
「んで、キミらのことも知っちゃったし、隠す必要ないかなーって」
いたずらっ子のように瀬戸くんが笑う。
「僕嬉しいです!堂々と隠さずいられる人っていなかったから」
うん、わかる気がする。普通の恋人でいたい気持ち。
「瀬戸だったらまわりにオープンにするかもって思ったから、春からとかビビった」
「今まではねー。相手が拓実ってことも最初はあって言わなかったけど、実際すげぇ好きだから外野に首突っ込まれたくなかったんだわ。」
「まぁ、うん、人ごとではない。」
僕と拓実くんは、同じ立場のような気がしてすぐに意気投合した。瀬戸くんと椎木くんの会話を聞きながらゲームをしたりしていた。
「バレそうになった時とか、何かあったときにフォローもし合えるし、ここだけはオープンな関係って事で!」
「でも拓実くんさ、本当に瀬戸でいいん?コイツの学校での振る舞い知ってんでしょ?」
ゲームの手を止めて、椎木くんの言葉にニコッと笑う。
「はい、女の子とイチャイチャベタベタデレデレして、ー」
「おい、タクミそれ以上言うな椎木センパイも似たようなもんだ」
「え、酷くね?ね、楠木。ーアレ?楠木さんもそんな感じっすか?」
瀬戸くんと椎木くんが顔を見合わせて不満げな顔をするから思わず僕と拓実くんは笑う。
ーあぁ、ホントだ。ただ誰かと気持ちを共有出来るだけでスッと心が軽くなる。
「しかもプライベートもだらしなくて常に浮気の心配もしなきゃですけど、昨日ちゃんと話して、やっぱりお互い好きなので仕方がないです。」
力強く言いきる拓実くんは見かけによらず男らしいなと思う。僕も見習いたいと思う。
帰り際、「楠木センパイ、よかったら連絡先交換しませんか?」と拓実くんが言ってくれた。
「え、クッキー俺とも!俺そう言えば友だちなのにしらんのよ。」
「おい、お前はぜってー駄目だろ。」
「はぁ!?俺は楠木くんと友だち!椎木に制限される筋合いないべ!彼氏面かよ、独占欲かよ」
「うん、瀬戸さんはダメ。僕と椎木センパイが許さない。」
「うーわ、お前ら、、言っとくけど椎木と拓実も駄目だかんな」
瀬戸くんが拗ねて、皆んなが笑う。
僕は嬉しかった。椎木くんの隣にいることが認められる空間が出来たことが。皆んなが笑っていて、椎木くんが笑っていて心底幸せだなと思った。
「じゃあねー」
「拓実くんは家近いの?」
「こいつは今日オレんちにお泊まりなの。親が朱莉連れてばーちゃんち行ってるからね」
言いながら瀬戸くんが拓実くんの腰に腕を回す。拓実くんもそれを照れたりせずにニコニコしたまま手を振っていた。
帰り道。暗い道に街灯が灯っている。
あの2人はそういう関係なんだなと僕にもわかる。そして昨日の僕を思い出すとちょっとだけ落ち込む。
「何考え込んでんの?」ペットボトルに口をつけながら椎木くんが聞く。
「ーあの2人、、エッチしたよね、、」
ゲホゲホと椎木くんがむせる。
「うわ、溺れるかと思ったわ。ーそりゃしてんでしょ。あの瀬戸がしないとかありえねーわ。」
「だよね。。」
黙る僕の手を椎木くんの手が包む。
「なに悩んでんの」
「ー椎木くんも、したい?」
「は、俺?」
単刀直入に聞く僕に「えー、、」と困った顔をしていたけど、僕が真面目な顔をしていたから椎木くんも少しだけ無言になった。
「したいか、したくないかって聞かれたらしたいよ。」
「、、、」
「そりゃ好きな人に触れたいし、もっと近くに、と思う。」
「うん。」
「でもそれはさ、楠木の気持ちを置いてってまでって事じゃないんだよ。」
わかる?と言うように優しい目で僕を覗く。
頷くと僕はモヤモヤと心の中にあるものを思い切って話し始める。
「ー僕はさ、別に超がつくほど奥手ではなくって、、椎木くんを見て触れたいと思ったりキスしたいとも思う普通の男なんだよ。やらしい事も考えるし、椎木くんとの、、事も、、考えて1人で、したりも」
「っちょ、待て待て。一回タイム。心の準備させて。なんかすごい事言ってるけどわかってる?今俺心臓止まった。」
立ち止まって飲み物を口にする椎木くんの声が焦ってて僕はちょっと笑った。
「たまに楠木にはビビるわ。。よし、オケ。オレの事を考えてのくだりから頼む」
「いや、もうそこはいいよ!言いたいのはそこじゃなくて、えっと、、僕だって同じふうに思ってるってことを伝えたくて」
「ー、、うん。」
「たぶんだけど、相手が女の子だったら、してると思う。」
「ーそれはちょっと複雑」
「あ、ごめ、今の無し。ちょっと違うや。えっと何だろ、椎木くんも初めてだったら、とか、、」
「、、、楠木さ、言いたいこと何となーくわかるんだけど、ゆーて俺だって同性初めてだし、楠木が感じる不安ときっと同じようなもの持ってる。」
椎木くんが立ち止まって少し困った顔をする。
「俺だって、迷うし、緊張もする。
ごめん、楠木、1人で悩まんで。たぶん俺のそうゆーのが分かりづらいから、楠木は自分と俺の違いが大きいと思って戸惑ってるんじゃないかって、、話聞いて思った。」
「そ、、うなのかな?」
「違う?」
「椎木くんはいつも余裕があって、僕ばっかり焦って、、って、、」
「最初が違う。余裕なんて無いし、楠木と何も違わないよ。ーただ俺の身勝手で楠木に嫌な思いはさせたくはない」
「そっか、、」
「そ。」
また手を繋いで歩き出す。
「椎木くん、ありがとう。話してみて良かった。」
「いや、俺こそ。いろいろわかって良かったわ。特に楠木が俺をおかずに1人で」
「わーーーっ!もうそこいいから!忘れろよ!」
口を塞ごうとする僕の手をパッとかわして椎木くんが笑う。
「お揃いだねー」
「はぁ~っ!?」
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父子家庭のマイホームに暮らす|鷹野《たかの》|楓《かえで》は家事をこなす高校生。ある日、父の再婚話が持ちあがり相手の家族とひとつ屋根のしたで生活することに、再婚相手には年の近い息子たちがいた。
ふてぶてしい兄弟に楓は手を焼きながら、しだいに惹かれていく。
BL 男達の性事情
蔵屋
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漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。
漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。
漁師の仕事は多岐にわたる。
例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。
陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、
多彩だ。
漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。
漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。
養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。
陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。
漁業の種類と言われる仕事がある。
漁師の仕事だ。
仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。
沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。
日本の漁師の多くがこの形態なのだ。
沖合(近海)漁業という仕事もある。
沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。
遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。
内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。
漁師の働き方は、さまざま。
漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。
出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。
休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。
個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。
漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。
専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。
資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。
漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。
食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。
地域との連携も必要である。
沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。
この物語の主人公は極楽翔太。18歳。
翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。
もう一人の主人公は木下英二。28歳。
地元で料理旅館を経営するオーナー。
翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。
この物語の始まりである。
この物語はフィクションです。
この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。
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