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14:義母ローレルの怒り
しおりを挟むマリーの父であるブラックが、事業に失敗をし大損害を被ったそうだ。
「マリー! あなたの父親を信じた私が馬鹿だったわ! 大金よ! どうしてくれるの!!!」
ローレルは、マリーがリリーを寝かしつけているにも関わらず急に部屋へ入って来たかと思うと、大声で怒鳴り上げた。
フリージアは驚いてマリーの後ろに隠れ、マリーにしがみついている。
「お義母様、やっと今リリーが寝ついたところなのです。もう少し声を小さくしては下さいませんか? フリージアも怖がっています」
マリーは困った顔で立ち上がり、リリーを揺らしてあやしながら言った。
リリーは今にも起きそうで、顔を少ししかめている。
「そんなの知った事ですか! どうしてくれるのよ! あなたが代わりに全額返しなさい!」
「おぎゃーーーーー!!!」
寝ついたばかりで起こされ、リリーは不満気に大声で泣き喚いた。
「ああ、五月蝿いわね! 黙らせなさい! これだから女は! 男の子を産まないから、ろくな事がないじゃないの!」
ローレルの滅茶苦茶な言い分に呆れながら、マリーは言う。
「お義母様……私が結婚時にして下さった融資で私の父が事業を成功をし、お義母様もかなり稼がれたと聞いております。それを、今回は損をしたから返せと言うのはあんまりです。この様な事が起こり得る事は、わかった上で融資をされた筈です」
珍しく口答えをしたマリーに、ローレルは目くじらを立てて噛みついた。
「調子に乗るんじゃないわよ! 今回はあなたの父親が全て悪いのよ! 男を産めない娘なんかを嫁に来させる父親は、やはり信用ならなかったわね!!!」
呆れ果てたマリーはもう何も言わずに、冷たい視線をローレルにただ送る。
「おぎゃーーー!! おぎゃーーー!!!」
一瞬の間、二人の間にはリリーの泣き声だけが響き渡った。
「……マリー、あなたの父親を信じて大金を預けたという意味では私にも過失はあるかもしれないわね。しかし今回は、全面的にあなたの父親が悪いの。絶対に許さないから。全額返金しない限りは貴方の顔ももう二度と見たくはないわ!」
ローレルは急に"スンッ"と冷静になった。
そして、冷淡に、心の底から軽蔑と憎悪が溢れる冷たい目でマリーを見て、そう言い放つ。
少しボリュームの落ちたリリーの鳴き声に負けないように、はっきりと大きな声で……
(私と旦那様を結婚させた時と変わらず、お義母様の関心事は金儲けと後継ぎの事だけなのね……)
ローレルに負けない軽蔑の眼差しでジッと見ながら、マリーはそう思う。
ローレルは真っ直ぐにマリーを睨み付けながら佇まいを直し、口を開いた。
「貴方の様な嫁はタングール伯爵家には必要ありません。出て行きなさい。離婚です」
マリーは目を見開いた。
開いた口が塞がらなかった。
「そんな……子供達は……」
「置いていきなさい。女でもタングール伯爵家の血を継ぐ者です。今後何か役に立つことがあるかもしれませんからね」
マリーは頭にカッと血が上るのを感じた。
(子供達のことを一体何だと思っているの……!?)
怒りに満ち溢れマリーが何も言えずにいると、ローレルはそれ以上何も言わずに子供達には目もくれずに部屋を出て行く。
ローレルが本気だという事は、マリーには十分に伝わってきた。
マストとマリーの結婚の時には、ブラックとローレルは多額の利益を得ている。
今回もローレルが大金を融資したがブラックが損害を出してしまい、ローレルへの返済が滞っているのであろうと、マリーはそう考えていた。
しかし、数日後の知らせにより真実を知ったマリーは、顔面蒼白で立ちすくむこととなる……
「マリー! 今知らせが来た。プルドー男爵が自害をしたそうだ!!!」
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