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35:ローラの告白その後
しおりを挟む「伯爵様には内緒よ」
ローラは少し頬を紅潮させ、可愛らしくはにかんだ。
ローラはマリーに衝撃を残し、驚きに何も言葉が出ないマリーを置いて退室して行った。
ローラが帰った後、マリーは複雑な感情を自分が抱いていることに気づく。
(ローラ様が、旦那様が実は良い人だということに気付いていらっしゃることも、旦那様に好意を抱いていることも良い事のはずよ? なのになぜ、私は素直に喜べないのかしら……?)
マリーは抱っこをせがむリリーを抱き上げながら、自分の中のモヤモヤの正体を考えた。
しかし、考えても答えは出ない。
「旦那様はローラ様との関係をうまくいかせるために、私と友達となり女性との円滑なコミュニケーションの練習をしている。そしてローラ様は、旦那様に振り向いてもらいたくて子ども達と仲良くなろうと努力している……」
自分の感情についての答えは出ないが、他のことに関する答えは簡単に出た。
「……お二人は両想い……」
そう思った瞬間、マリーは何故か目から涙がこぼれた。
(最近、急に涙が出ることが多いわね……。情緒不安定なのかしら? もしそうだとしても仕方がないわよね。子ども達の将来に関わる出来事が起こっているのですもの……)
マリーはそう自分を納得させる。
「よしっ! 子ども達のために人肌脱ぐわよ!」
マリーはリリーをギュッと抱きしめた。
「マリー、子ども達はどうだ?」
「旦那様、お疲れ様です。フリージア様もリリー様もお変わりありません。今日はローラ様がいらして一緒に遊んで下さいました」
それ以降マリーは、ローラと子ども達の様子をマストに伝えるようにした。
「……そうか」
マストはそう言うと、パッとマリーを見て尋ねる。
「マリーは元気か?」
「えっ? あっ、はい、元気です」
「そうか、ならよかった」
マストはそう言ってお絵描きをしているフリージアと、おもちゃを口に咥えているリリーのもとへ行った。
(照れ隠しかしら? まあ、旦那様はこの手の話は苦手そうよね……)
マリーは気にせずに声をかける。
「旦那様、私との自然な会話にはだいぶ慣れたのではありませんか?」
「ああ、そうだな。あっ、こらリリー、それは食べては駄目だ!」
慌ててリリーの口の中に指を入れているマストを、マリーは微笑ましく見つめる。
(本当に、結婚している頃に今のようにたくさん話せたら良かったのよね……。私も諦めて努力をしなくなっていたわ……。結局は、私も旦那様もどっちもどっちだったのよね……)
マリーはしみじみそう思うも、『今更そんなことを考えても仕方がない』と、雑念を追い払うように頭を左右に振った。
「旦那様、今度ローラ様も交えて皆んなで出掛けませんか?」
「……何故だ?」
「えっ……最近は外出を暫くしておりませんし、お子様がもうすっかりローラ様に慣れていますので、皆んなで出掛けたら楽しいかと思いまして……」
口ではそう言いつつも、頭の中では他のことを考えていた。
(ローラ様の、フリージア様とリリー様との仲睦ましい様子を旦那様がご覧になれば、旦那様も一歩踏み出す気持ちになるかもしれないわ!)
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