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27話 ウルーガ3
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27話 ウルーガ3
「お前、癒しの術使えるのか?」
「あ、はい。一応は」
「じゃあ、傷、すぐ治るから平気だ」
ウルーガが少し自虐気味に言うと、
「傷は、確かに治りますけど……」
ジャスティスは困ったように俯いて、
「……心に蓄積したダメージまでは癒せないんですよ」
「……『心に蓄積したダメージ』?」
おうむ返しに聞くウルーガに頷くジャスティス。
「…『痛い』とか『辛い』とかの人の負の感情は法術じゃあ治せないんです」
俯いたまま呟くジャスティス。
「ウルーガさんは……武器とか、ないんですか?」
『そのままじゃあ、傷だらけになっちゃう』
ウルーガの腕を見つめ微かに眉を顰(しか)める。先程の傷はジャスティスの治癒で治ったが、よく見れば古い傷があちらこちらに浮かんでいる。
「俺……、武器は持たない」
ウルーガはかぶりを振るう。その言葉にジャスティスが頭を上げてウルーガを見れば――
「人でも魔物でも、動物でもーー傷、つけるのは嫌だ」
「……ウルーガさん」
ジャスティスは少しビックリしたような感心したような、複雑な笑みを浮かべた。
こんな考え方もあるんだ、と。
確かに武器を振るう事が闘いではない。人にはそれぞれ、その人に合った闘い方がある。けれども――
「でも、やっぱり防げる事には越した事ないですよね?」
「まあ……そう、だな」
ジャスティスの、確認するような問いかけめいた言葉にウルーガは困惑しながら頷いた。
――それから数十分ほど歩いただろうか、木々生い茂るところから抜けて拓けた広場に出ると、調理するための焚き火と鍋が掛けられるように設置されており、すぐ側には木造の小屋が建っていた。
「……こんな所あるんですね」
ジャスティスは初めて見た光景にびっくりしたような感動したような不思議な表情をしている。
「ジャスティスはこういうのは初めてか?」
背中に抱えていた大きな革リュックを下ろすウルーガ。
「あ、はい。街からは出た事なかったので」
ジャスティスも荷物を下ろし、
「こういうのも初めてでーーなんか、すごく不思議で。でもワクワクしてる自分もいる……」
嬉しそうに頬を紅潮させていた。
それを見ていたウルーガとふいに目が合ってしまい、ジャスティスは照れ隠しに視線を逸らしてワザと咳払いをする。
「火、興しましょうか」
ジャスティスが慌てて言えば、
「……ああ」
ウルーガは笑いを堪えつつ頷き、設置された鍋を持つと小屋の際にある小さな湧水で水を調達する。その間にジャスティスが魔術で焚き火に火をつけた。
――キュルルル……
鍋に張った水を沸かす間、ジャスティスのお腹から空腹を訴える合図がなる。
「……」
「す、すみません。お腹、空いちゃって」
ウルーガが不思議そうに見ればジャスティスは照れたようにお腹をさすった。
ウルーガは自身の大きめなリュックを覗き込みつつジャスティスに聞く。
「お前、好き嫌いあるか?」
「え? 特には無いです」
「そうか。よかった」
安堵したように言いつつ、ウルーガはリュックから干し肉と香草、保存用の野菜類を出した。
「……ウルーガさん、料理されるんですか?」
しまいには、『自前』であろうまな板や包丁なども取り出したウルーガに首を傾げるジャスティス。
「俺、料理得意……」
ぽつりと呟くウルーガは慣れた手つきで食材を刻み鍋に入れていく。
「ウルーガさん、すごい!」
声を上げるジャスティスの瞳は好奇心なのか嬉しいのかキラキラと輝いている。
「……」
そんなジャスティスの素直な表現に気を良くしたウルーガは、
「お前、よく食べそうだな」
「え。そ、そうかな? ……多分、普通だと思うけど」
「体力つくもの、作ってやる」
「え? やったぁ!」
ジャスティスが満面の笑みを浮かべて喜ぶと、
「やっぱりお前、面白いやつ」
スープをかき回しつつ声を殺して笑うウルーガ。
「お前、癒しの術使えるのか?」
「あ、はい。一応は」
「じゃあ、傷、すぐ治るから平気だ」
ウルーガが少し自虐気味に言うと、
「傷は、確かに治りますけど……」
ジャスティスは困ったように俯いて、
「……心に蓄積したダメージまでは癒せないんですよ」
「……『心に蓄積したダメージ』?」
おうむ返しに聞くウルーガに頷くジャスティス。
「…『痛い』とか『辛い』とかの人の負の感情は法術じゃあ治せないんです」
俯いたまま呟くジャスティス。
「ウルーガさんは……武器とか、ないんですか?」
『そのままじゃあ、傷だらけになっちゃう』
ウルーガの腕を見つめ微かに眉を顰(しか)める。先程の傷はジャスティスの治癒で治ったが、よく見れば古い傷があちらこちらに浮かんでいる。
「俺……、武器は持たない」
ウルーガはかぶりを振るう。その言葉にジャスティスが頭を上げてウルーガを見れば――
「人でも魔物でも、動物でもーー傷、つけるのは嫌だ」
「……ウルーガさん」
ジャスティスは少しビックリしたような感心したような、複雑な笑みを浮かべた。
こんな考え方もあるんだ、と。
確かに武器を振るう事が闘いではない。人にはそれぞれ、その人に合った闘い方がある。けれども――
「でも、やっぱり防げる事には越した事ないですよね?」
「まあ……そう、だな」
ジャスティスの、確認するような問いかけめいた言葉にウルーガは困惑しながら頷いた。
――それから数十分ほど歩いただろうか、木々生い茂るところから抜けて拓けた広場に出ると、調理するための焚き火と鍋が掛けられるように設置されており、すぐ側には木造の小屋が建っていた。
「……こんな所あるんですね」
ジャスティスは初めて見た光景にびっくりしたような感動したような不思議な表情をしている。
「ジャスティスはこういうのは初めてか?」
背中に抱えていた大きな革リュックを下ろすウルーガ。
「あ、はい。街からは出た事なかったので」
ジャスティスも荷物を下ろし、
「こういうのも初めてでーーなんか、すごく不思議で。でもワクワクしてる自分もいる……」
嬉しそうに頬を紅潮させていた。
それを見ていたウルーガとふいに目が合ってしまい、ジャスティスは照れ隠しに視線を逸らしてワザと咳払いをする。
「火、興しましょうか」
ジャスティスが慌てて言えば、
「……ああ」
ウルーガは笑いを堪えつつ頷き、設置された鍋を持つと小屋の際にある小さな湧水で水を調達する。その間にジャスティスが魔術で焚き火に火をつけた。
――キュルルル……
鍋に張った水を沸かす間、ジャスティスのお腹から空腹を訴える合図がなる。
「……」
「す、すみません。お腹、空いちゃって」
ウルーガが不思議そうに見ればジャスティスは照れたようにお腹をさすった。
ウルーガは自身の大きめなリュックを覗き込みつつジャスティスに聞く。
「お前、好き嫌いあるか?」
「え? 特には無いです」
「そうか。よかった」
安堵したように言いつつ、ウルーガはリュックから干し肉と香草、保存用の野菜類を出した。
「……ウルーガさん、料理されるんですか?」
しまいには、『自前』であろうまな板や包丁なども取り出したウルーガに首を傾げるジャスティス。
「俺、料理得意……」
ぽつりと呟くウルーガは慣れた手つきで食材を刻み鍋に入れていく。
「ウルーガさん、すごい!」
声を上げるジャスティスの瞳は好奇心なのか嬉しいのかキラキラと輝いている。
「……」
そんなジャスティスの素直な表現に気を良くしたウルーガは、
「お前、よく食べそうだな」
「え。そ、そうかな? ……多分、普通だと思うけど」
「体力つくもの、作ってやる」
「え? やったぁ!」
ジャスティスが満面の笑みを浮かべて喜ぶと、
「やっぱりお前、面白いやつ」
スープをかき回しつつ声を殺して笑うウルーガ。
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