勇者のお仕事一巻【旅立ち編】

伊上申

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32話 山賊、再び3

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32話 山賊、再び3


 山賊Cと対峙(たいじ)するジャスティスは内心少しの焦りを感じていた。

 人と戦って、命の取り合いになるのはこれが初めてだったから。魔物相手だと容赦なく力を発揮できたものの、人が相手になるとどうも気後れしてしまう。

 しかし、山賊Cは他の二人と違い剣の腕が多少なりと立つようで到底手加減できる相手ではなかった。

 ジャスティスは双剣を握る手に自然と力を込める。


 ―…ガンッ! ドコォッ!


 この場をどう乗り切ろうかとジャスティスが思考を巡らせていると、いつのまにか三日月刀(シミター)を構えた山賊AとBがウルーガと対峙していた。盾を構えたウルーガに容赦なく切り掛かる山賊の二人。


「ウルーガさん……ッ!」

 ――ガキィィン!


 ジャスティスがウルーガのほうを見ると同時に鳴り響く剣戟(けんげき)――ジャスティスの隙をついた山賊Cの一振りを、ジャスティスは双剣を胸の前で交差させて受け止めた。


「よそ見するなんて随分と余裕だな、坊主!」

「……」

 ジャスティスは山賊Cを少し上目遣いで見た。自分が、実戦経験のない事をこの山賊はすでに分かっているに違いない。
 表情では平気な素振りを見せるジャスティスだが、内心では心臓がドキドキと脈を打ち動悸による息切れのために呼吸が荒くなる。

 それでもそれを悟られないようにジャスティスは口の中で喉を鳴らすように息を飲み込んだ。


 ちらりと横目でウルーガを見れば、盾で山賊たちの攻撃を防いではいるものの、唐檜(トウヒ)で作った盾は所々傷がついておりジャスティスはより一層不安感を募らせた。



(……どうしよう。このままじゃあ僕たちはここで山賊さんたちにやられちゃう……ウルーガさんだってずっとあのまま防いでばっかりだし、いずれは力尽きて……)



 荒くなる呼吸を抑えつつ、ジャスティスはこの場の打開策を心中考え巡らす。だが焦りばかりが先走り双剣を握る手がじんわりと汗をかいて滑り落ちそうになる。



「……グッ」

 山賊AとBに力任せに押し切られウルーガが小さく呻いて膝をついた。


「ー…ウルーガさん!」

 ジャスティスは双剣ごと山賊Cを押し退けてウルーガのほうへ駆け寄った。


「大丈夫ですか?!」
「ああ、大丈夫だ」

 ウルーガは怪我こそしてないもの顔色に若干の疲労を帯びていた。



「大人に歯向かうからこうなるんだぜぇ?」

 山賊Aが勝ち誇ったような嫌な笑みを見せてきた。


「……下品な言い方はするんじゃねぇ」

 山賊Cもまたジャスティスに三日月刀の切っ先をジャスティスに向けつつ、

「さて、遊びは終わりだ。ここからは本気でいかせてもらうぞ」

 そう言う山賊Cの表情は先程とは変わってひどく冷静に見えた。残り二人の山賊たちもジャスティスとウルーガを取り囲むようにして三日月刀を構え直した。


「……ッ」

 ジャスティスはこの時初めて山賊たちに【手加減されていた】事を身をもって知る事となった。
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