7 / 9
チャプター6【断罪1】
しおりを挟む
チャプター6【断罪1】
――二年四組のクラスメイト二名が、不可解な死を遂げて約三ヶ月が過ぎた頃。
井川遥(いがわはるか)と加藤憲久(かとうのりひさ)の不可解な死は、猟奇的な殺人事件となったが事件の経緯、犯人など捜査は難航したまま一時的に打ち切りとなってしまった。そんな状態の中、当事者の遺族等は納得いくものではないが、クラス内はようやくではあるが少しずつ落ち着きを取り戻していた。
「…『あれ』は本当にシンさんがやったの…?」
シンがその身を置く【相談室】に新宮司正継(しんぐうじまさつぐ)はソファに座りシンが淹れた紅茶を飲んでいた。
「ふふふ。どうだかな」
正継の向かいに座るシンもまた紅茶を一口して少し愉しげに微笑んだ。
「…『希望と期待』から一変、『拒絶と失望』の色にかられているな」
「ー…え?」
シンの何気ない謎かけのような言葉に正継は意味が分からず呆然とした面持ちでシンを見る。
シンはそんな正継を見て厭らしく口角をあげた。
「ーークラスメイトという仲間が二人同時に不可解な死を遂げた。不安と恐怖、疑心が生まれるのも無理はない」
「…そう言えば。みんな表向きは落ち着いてるけど前に比べたらなんか『よそよそしい』っていうか」
正継は言葉を紡ぎつつも、『何で自分はこんなにも冷静なんだろう』と、頭の片隅でそう思ってしまった。
正継が、そのような不可解な感覚に捉われているのをシンは容易に【識って】しまう。少年といえど、彼の内にある復讐心は【本物】だった。
――もう少し、自身の状況下を愉しんで貰おうか。
シンは心中で声高らかに笑い、
「ーー次は、誰にしようか」
満面の笑みで正継にそう問い掛けた。
「…あんな死に方ってあるのかよ…」
あるカラオケボックスの一室。
仲間の一人が気持ちよく歌う中、早川克(はやかわすぐる)はソファの端に座りつつ小さく呟いた。
「ね~克、まだ気にしてんのォ?」
オレンジジュースが入ったタンブラーグラスを手に、克の隣に座るのは五島爽佳(ごとうそうか)。
「私あいつ嫌いだったしどうでもいいんだけど」
と言って爽佳は残り半分のオレンジジュースを一気に飲み干した。
「…そんな言い方ねーだろ」
軽薄そうに言う爽佳を窘(たしな)めるように言う克だが、
「…あいつが私にした事忘れたのっ?!」
爽佳は空になったグラスを乱暴に置くとものすごい形相で克を睨みつけた。
「ー…まだっ。消えてないんだからっ!!」
すぐに視線を逸らした爽佳は顔を俯かせ徐に左腕の袖を肘まで捲り上げた。
すらりとした色白の細い腕に浮かぶ幾つかの赤黒い斑点――それは火のついた煙草を押し付けた跡で、いわゆる『根性焼き』というものだった。根性焼きの疵痕(きずあと)は手首から肘裏にかけて五つほどつけられていた。
「…爽佳……」
彼女の名を呟き、克は爽佳の腕についた根性焼きを痛々しく見つめる。
「…私……」
爽佳は捲った袖を戻し、俯いたまま言葉を紡いだ。
「…嫌だった…。あいつの『女』になるのが…。克がいるから嫌だって言った……。そしたら『コレ』つけられたの……」
「爽佳…っ」
小さな声で静かに語る爽佳の震える肩を克はそっと抱き寄せた。
「…でも。それで克を裏切らないで済むなら我慢できた」
と、少し目尻に浮かんだ涙を見せて微笑む爽佳。
――二年四組のクラスメイト二名が、不可解な死を遂げて約三ヶ月が過ぎた頃。
井川遥(いがわはるか)と加藤憲久(かとうのりひさ)の不可解な死は、猟奇的な殺人事件となったが事件の経緯、犯人など捜査は難航したまま一時的に打ち切りとなってしまった。そんな状態の中、当事者の遺族等は納得いくものではないが、クラス内はようやくではあるが少しずつ落ち着きを取り戻していた。
「…『あれ』は本当にシンさんがやったの…?」
シンがその身を置く【相談室】に新宮司正継(しんぐうじまさつぐ)はソファに座りシンが淹れた紅茶を飲んでいた。
「ふふふ。どうだかな」
正継の向かいに座るシンもまた紅茶を一口して少し愉しげに微笑んだ。
「…『希望と期待』から一変、『拒絶と失望』の色にかられているな」
「ー…え?」
シンの何気ない謎かけのような言葉に正継は意味が分からず呆然とした面持ちでシンを見る。
シンはそんな正継を見て厭らしく口角をあげた。
「ーークラスメイトという仲間が二人同時に不可解な死を遂げた。不安と恐怖、疑心が生まれるのも無理はない」
「…そう言えば。みんな表向きは落ち着いてるけど前に比べたらなんか『よそよそしい』っていうか」
正継は言葉を紡ぎつつも、『何で自分はこんなにも冷静なんだろう』と、頭の片隅でそう思ってしまった。
正継が、そのような不可解な感覚に捉われているのをシンは容易に【識って】しまう。少年といえど、彼の内にある復讐心は【本物】だった。
――もう少し、自身の状況下を愉しんで貰おうか。
シンは心中で声高らかに笑い、
「ーー次は、誰にしようか」
満面の笑みで正継にそう問い掛けた。
「…あんな死に方ってあるのかよ…」
あるカラオケボックスの一室。
仲間の一人が気持ちよく歌う中、早川克(はやかわすぐる)はソファの端に座りつつ小さく呟いた。
「ね~克、まだ気にしてんのォ?」
オレンジジュースが入ったタンブラーグラスを手に、克の隣に座るのは五島爽佳(ごとうそうか)。
「私あいつ嫌いだったしどうでもいいんだけど」
と言って爽佳は残り半分のオレンジジュースを一気に飲み干した。
「…そんな言い方ねーだろ」
軽薄そうに言う爽佳を窘(たしな)めるように言う克だが、
「…あいつが私にした事忘れたのっ?!」
爽佳は空になったグラスを乱暴に置くとものすごい形相で克を睨みつけた。
「ー…まだっ。消えてないんだからっ!!」
すぐに視線を逸らした爽佳は顔を俯かせ徐に左腕の袖を肘まで捲り上げた。
すらりとした色白の細い腕に浮かぶ幾つかの赤黒い斑点――それは火のついた煙草を押し付けた跡で、いわゆる『根性焼き』というものだった。根性焼きの疵痕(きずあと)は手首から肘裏にかけて五つほどつけられていた。
「…爽佳……」
彼女の名を呟き、克は爽佳の腕についた根性焼きを痛々しく見つめる。
「…私……」
爽佳は捲った袖を戻し、俯いたまま言葉を紡いだ。
「…嫌だった…。あいつの『女』になるのが…。克がいるから嫌だって言った……。そしたら『コレ』つけられたの……」
「爽佳…っ」
小さな声で静かに語る爽佳の震える肩を克はそっと抱き寄せた。
「…でも。それで克を裏切らないで済むなら我慢できた」
と、少し目尻に浮かんだ涙を見せて微笑む爽佳。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
1
1 / 4
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる