中年おばちゃんにガチ恋しました!

伊上申

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プロローグ

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「……本当に、私でいいの?」

 地元から離れた山奥にあるラブホテルの一室。

 備え付けのバスローブを身に纏った少しぽっちゃりとした女性が眉をひそめて俺を上目遣いで見てきた。


 もう『耳にタコができる』って言うことわざがお似合いの言葉に俺は呆れるような溜息を鼻息とともに吐いた。


「俺には暖子(はるこ)さんしかいねぇから」

 俺もまた前々から何度も同じ答えを返しているだろう言葉を紡ぎ、隣に座る女性――鈴村暖子(すずむらはるこ)を見た。


 頬から顎にかけて丸みを帯びた輪郭で見上げてくる顔は不安と申し訳なさが入り混じったような、切なく憂いを帯びた表情をしていた。


(ああもう……。そんな顔、しないで欲しい。暖子さんには笑顔でいてほしい)


 胸が締め付けられる感じがして何か言おうと口を開きかけた途端に被さる暖子さんの声。


「だって……、私おばちゃんなのに……。雪斗(ゆきと)くんとはひと回りも離れてる……」

 そう言って顔を俯かせてしまう暖子さん。これも何度も聞かされた台詞だが、小さな肩が小刻みに震えてる。


 ――ちょっと待て。

 これじゃあ今から俺に襲われるみたいじゃん。いや。襲われるは間違いか。暖子さんだってまあ俺と『したい』からここにいる訳だし。

 いやでも。あんまり乗り気じゃなかったらどうしよう?

 俺としては準備万全できてる訳だけど、実際のところ――暖子さんからちゃんと『好き』とは言われてなくて……。

 いやこれ、暖子さんが俺の気持ちを汲んでの行為だったりするのか?

 ……それってなんか、無理矢理じゃねーのか?


 ここにきて色々な不安が頭を巡り俺は押し黙ってしまった。そんな俺の様子に気付いたのか、

「雪斗くん……?」
 心配そうな顔で暖子さんが俺の顔を覗き込んできた。
「大丈夫?」
 頬に優しく触れられる小さな手。その手を俺は優しく包み返した。

「……暖子さん」
 暖子さんの手の甲に触れるだけのキスを落とすと小さな吐息とともに肩がぴくりと反応した。
 
 それを目の当たりにすると身体の中心がじわじわと熱くなり、すぐさま解放したい衝動に駆られた。


(ああやばい。俺の理性が飛びそう。なんだってそんなに俺を掻き乱すんだろうか……)


 押し倒してしまいたいのを堪えて代わりに少しカサついた彼女の唇を奪った。

 最初は互いの唇を堪能するキス。それは次第に濃厚になり、半ば開いた口の隙間から暖子さんの舌が入り込んでくる。触れる舌先に身体が軽く痺れる。

 腰から背中にかけて何かが突き抜ける衝撃にたまらず鼻で息を整えた。

 迎え入れた舌先で、彼女の舌を貪るように舐め回す。咥内から淫靡な音が脳内まで響いて軽い立ちくらみを起こしそうになる。

 互いに互いの舌を絡めて舐め回して――それだけで天上の快楽に誘われる。俺のナニは誇張を極め早く解放しろと言わんばかりにヒクヒクと疼き若干の痛覚さえ感じるほどに張り詰めている。


 めちゃくちゃに食い散らかしたい衝動と、彼女の膣(なか)で達(い)き果てたい欲求が入り混じり、どうしようもない感情に俺はようやく口を離す。

 淡いオレンジ色を発する常夜灯(じょうやとう)が、二人の唇から繋がり落ちた唾液をいやらしく光らせた。


 俺の表情はきっと切羽詰まっているだろう。眉間に皺よるのが体感で分かる。目を細めた先は、恍惚に頬を朱に染め目尻にじんわりと雫を浮かべた暖子さんの顔。


(ああもう……反則だろそれ。やっぱり俺、暖子さんの中で果てたい――)


 脳内でそう感じつつ、『暖子さん』という媚薬に自ら染まった俺は、肩が少しはだけた彼女の身体をゆっくりと押し倒した――
 
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