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10話 つかず離れずだったのに2
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10話 つかず離れずだったのに2
「家、どこだっけ?」
明らかに体調の悪い暖子さんを自宅に送るまでは良かったが、肝心の暖子さんの家を俺は知らなかった。
一応、近所の惣菜屋まで来たところで助手席に座る暖子さんに聞いてみる。
「……あ。ここでいいよ、ありがとうね」
シートにぐったりとして座っている暖子さんは力無く答えた。
「そう言う訳にはいかないでしょ。家の前まで送るから」
降りようとする暖子さんに、俺が少し強めに言うと、
「……」
彼女は俯いてしばらく黙っていたが、
「……お惣菜屋さんの裏手のアパートまでお願い……、出来るかな?」
多分熱が上がっているのだろう、暖子さんの頬は少し赤らんでおり呼吸もどこか苦しげだった。
「分かった……」
そんな彼女の様子がさらに心配になった俺は小さく頷いて素早く車を走らせた。
惣菜屋の裏手に車を回すと、
「あ、あのアパート……」
暖子さんが、左側の小さなアパートを指差した。個室三つの二階建てである本当に小さいアパートだが外観は小綺麗だった。
アパートの前で車を停止させると、
「……あ、ありがとね。ごめんね……」
暖子さんが億劫そうにシートベルトを外す。
俺は急いでエンジンを切り車を降りると助手席側に回ってドアを開けてやった。
「は、暖子さん、本当に大丈夫……?!」
「……う、うん」
覚束ない足取りで車から降りる暖子さんの肩を俺は咄嗟に支える。――肩が、小刻みに震えているのが分かった。
俺は本当にこの時、何らかの不安を感じてしまい躊躇いもなく彼女をお姫様抱っこした。
「ゆ、雪斗くん……?!」
か細い声で驚く暖子さんを無視して、
「部屋番どこ?」
「え、あ、にいまるさん号……」
俺が有無を言わさない口調で聞くと暖子さんは反射的に答えてしまう。
――うん。体調が悪いのが効いてるのか、躱す事無く素直に答えてくれたな。そんな風に思ってしまう俺は何とも意地悪いことこの上無いな。
俺は暖子さんをお姫様抱っこしながら彼女が住んでいる部屋室の扉の前まで来ると、
「……鍵は?」
横目で抱えている暖子さんを見る。
俺と目が合うと暖子さんは俯いてしまい、
「……あ、あの。降ろして、欲しい……」
照れているのか、口の中で小さく呟いた。
「ああ」
今更ながらに気付いたように俺は軽く返事をして、
「ごめんごめん。でも、本当に大丈夫?」
暖子さんの顔を覗き込むと彼女は黙って頷く。
俺は仕方なく暖子さんの身体に負担をかけないようゆっくりと彼女を地に降ろす。
「……も、もう大丈夫。こ、ここまで送ってくれてありがとね」
暖子さんは俺と視線を合わせず俯いたまま小さなショルダーポーチから鍵を取り出していた。
「うん」
俺は短く頷いたが、その場から動くことはしなかった。
理由は、暖子さんが気掛かりだったから。
彼女が部屋の中に入るのを見届けるまでは安心出来なかった。
「も、もう戻っていいよ? お昼休憩無くなっちゃうから……」
生返事しつつ立ち去ろうとしない俺を不思議に思っただろう暖子さんは少し目を丸くして俺を見上げてきた。
「俺の事より自分の心配しなって」
そう言いつつ、俺はなかなか扉を開錠しない暖子さんの手から鍵を取って代わりに開けてやる。
「ほら。入った入った」
黙って奪ってしまった鍵を暖子さんに返して、彼女が部屋に入るよう横目で促した。
「家、どこだっけ?」
明らかに体調の悪い暖子さんを自宅に送るまでは良かったが、肝心の暖子さんの家を俺は知らなかった。
一応、近所の惣菜屋まで来たところで助手席に座る暖子さんに聞いてみる。
「……あ。ここでいいよ、ありがとうね」
シートにぐったりとして座っている暖子さんは力無く答えた。
「そう言う訳にはいかないでしょ。家の前まで送るから」
降りようとする暖子さんに、俺が少し強めに言うと、
「……」
彼女は俯いてしばらく黙っていたが、
「……お惣菜屋さんの裏手のアパートまでお願い……、出来るかな?」
多分熱が上がっているのだろう、暖子さんの頬は少し赤らんでおり呼吸もどこか苦しげだった。
「分かった……」
そんな彼女の様子がさらに心配になった俺は小さく頷いて素早く車を走らせた。
惣菜屋の裏手に車を回すと、
「あ、あのアパート……」
暖子さんが、左側の小さなアパートを指差した。個室三つの二階建てである本当に小さいアパートだが外観は小綺麗だった。
アパートの前で車を停止させると、
「……あ、ありがとね。ごめんね……」
暖子さんが億劫そうにシートベルトを外す。
俺は急いでエンジンを切り車を降りると助手席側に回ってドアを開けてやった。
「は、暖子さん、本当に大丈夫……?!」
「……う、うん」
覚束ない足取りで車から降りる暖子さんの肩を俺は咄嗟に支える。――肩が、小刻みに震えているのが分かった。
俺は本当にこの時、何らかの不安を感じてしまい躊躇いもなく彼女をお姫様抱っこした。
「ゆ、雪斗くん……?!」
か細い声で驚く暖子さんを無視して、
「部屋番どこ?」
「え、あ、にいまるさん号……」
俺が有無を言わさない口調で聞くと暖子さんは反射的に答えてしまう。
――うん。体調が悪いのが効いてるのか、躱す事無く素直に答えてくれたな。そんな風に思ってしまう俺は何とも意地悪いことこの上無いな。
俺は暖子さんをお姫様抱っこしながら彼女が住んでいる部屋室の扉の前まで来ると、
「……鍵は?」
横目で抱えている暖子さんを見る。
俺と目が合うと暖子さんは俯いてしまい、
「……あ、あの。降ろして、欲しい……」
照れているのか、口の中で小さく呟いた。
「ああ」
今更ながらに気付いたように俺は軽く返事をして、
「ごめんごめん。でも、本当に大丈夫?」
暖子さんの顔を覗き込むと彼女は黙って頷く。
俺は仕方なく暖子さんの身体に負担をかけないようゆっくりと彼女を地に降ろす。
「……も、もう大丈夫。こ、ここまで送ってくれてありがとね」
暖子さんは俺と視線を合わせず俯いたまま小さなショルダーポーチから鍵を取り出していた。
「うん」
俺は短く頷いたが、その場から動くことはしなかった。
理由は、暖子さんが気掛かりだったから。
彼女が部屋の中に入るのを見届けるまでは安心出来なかった。
「も、もう戻っていいよ? お昼休憩無くなっちゃうから……」
生返事しつつ立ち去ろうとしない俺を不思議に思っただろう暖子さんは少し目を丸くして俺を見上げてきた。
「俺の事より自分の心配しなって」
そう言いつつ、俺はなかなか扉を開錠しない暖子さんの手から鍵を取って代わりに開けてやる。
「ほら。入った入った」
黙って奪ってしまった鍵を暖子さんに返して、彼女が部屋に入るよう横目で促した。
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