中年おばちゃんにガチ恋しました!

伊上申

文字の大きさ
11 / 19

10話 つかず離れずだったのに2

しおりを挟む
10話 つかず離れずだったのに2


「家、どこだっけ?」

 明らかに体調の悪い暖子さんを自宅に送るまでは良かったが、肝心の暖子さんの家を俺は知らなかった。

 一応、近所の惣菜屋まで来たところで助手席に座る暖子さんに聞いてみる。


「……あ。ここでいいよ、ありがとうね」

 シートにぐったりとして座っている暖子さんは力無く答えた。


「そう言う訳にはいかないでしょ。家の前まで送るから」

 降りようとする暖子さんに、俺が少し強めに言うと、

「……」
 彼女は俯いてしばらく黙っていたが、
「……お惣菜屋さんの裏手のアパートまでお願い……、出来るかな?」
 多分熱が上がっているのだろう、暖子さんの頬は少し赤らんでおり呼吸もどこか苦しげだった。

「分かった……」
 そんな彼女の様子がさらに心配になった俺は小さく頷いて素早く車を走らせた。


 惣菜屋の裏手に車を回すと、

「あ、あのアパート……」

 暖子さんが、左側の小さなアパートを指差した。個室三つの二階建てである本当に小さいアパートだが外観は小綺麗だった。


 アパートの前で車を停止させると、

「……あ、ありがとね。ごめんね……」

 暖子さんが億劫そうにシートベルトを外す。

 俺は急いでエンジンを切り車を降りると助手席側に回ってドアを開けてやった。

 
「は、暖子さん、本当に大丈夫……?!」

「……う、うん」

 覚束ない足取りで車から降りる暖子さんの肩を俺は咄嗟に支える。――肩が、小刻みに震えているのが分かった。

 俺は本当にこの時、何らかの不安を感じてしまい躊躇いもなく彼女をお姫様抱っこした。


「ゆ、雪斗くん……?!」

 か細い声で驚く暖子さんを無視して、

「部屋番どこ?」
「え、あ、にいまるさん号……」

 俺が有無を言わさない口調で聞くと暖子さんは反射的に答えてしまう。


 ――うん。体調が悪いのが効いてるのか、躱す事無く素直に答えてくれたな。そんな風に思ってしまう俺は何とも意地悪いことこの上無いな。


 俺は暖子さんをお姫様抱っこしながら彼女が住んでいる部屋室の扉の前まで来ると、
「……鍵は?」
 横目で抱えている暖子さんを見る。


 俺と目が合うと暖子さんは俯いてしまい、
「……あ、あの。降ろして、欲しい……」
 照れているのか、口の中で小さく呟いた。


「ああ」
 今更ながらに気付いたように俺は軽く返事をして、
「ごめんごめん。でも、本当に大丈夫?」
 
 暖子さんの顔を覗き込むと彼女は黙って頷く。


 俺は仕方なく暖子さんの身体に負担をかけないようゆっくりと彼女を地に降ろす。


「……も、もう大丈夫。こ、ここまで送ってくれてありがとね」

 暖子さんは俺と視線を合わせず俯いたまま小さなショルダーポーチから鍵を取り出していた。


「うん」

 俺は短く頷いたが、その場から動くことはしなかった。

 理由は、暖子さんが気掛かりだったから。

 彼女が部屋の中に入るのを見届けるまでは安心出来なかった。


「も、もう戻っていいよ? お昼休憩無くなっちゃうから……」

 生返事しつつ立ち去ろうとしない俺を不思議に思っただろう暖子さんは少し目を丸くして俺を見上げてきた。


「俺の事より自分の心配しなって」

 そう言いつつ、俺はなかなか扉を開錠しない暖子さんの手から鍵を取って代わりに開けてやる。

「ほら。入った入った」

 黙って奪ってしまった鍵を暖子さんに返して、彼女が部屋に入るよう横目で促した。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。 **2026.01.02start~2026.01.17end**

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました

大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――

淫紋付きランジェリーパーティーへようこそ~麗人辺境伯、婿殿の逆襲の罠にハメられる

柿崎まつる
恋愛
ローテ辺境伯領から最重要機密を盗んだ男が潜んだ先は、ある紳士社交倶楽部の夜会会場。女辺境伯とその夫は夜会に潜入するが、なんとそこはランジェリーパーティーだった! ※辺境伯は女です ムーンライトノベルズに掲載済みです。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

女の子がほとんど産まれない国に転生しました。

さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。 100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳 そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。 当面は2日に1話更新予定!

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

処理中です...