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13話 この感情をなんと言うのか2
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13話 この感情をなんと言うのか2
ローテーブルの前に胡座で座る俺は、差し出されたお茶を呆然と見つめていたようで、暖子(はるこ)さんから訝しげに掛かる声で意識を取り戻した。
「……雪斗(ゆきと)くん、もしかして私の風邪がうつっちゃった?」
少し申し訳なさそうに眉をひそめ俺の顔を覗き込んでくる暖子さん。
「あ~違う違う」
俺は情けなく笑い首を横に振るう。
「暖子さんが体調良くなってよかったなぁって」
別にやましい事はないのだが、(そもそも暖子さんに恋愛対象など抱いてはいなくて本当にただの気の合う友人のような感覚)、俺はなぜか言葉を濁してしまった。
「……う。あの時は本当にごめんなさい。でもありがとうね」
暖子さん独特の柔らかい微笑み――その笑みはどうしてだろうか、見る度に俺の心臓を跳ね上がらせる。
とうに枯れ果てたはずの得体の知れない感情が湧き水の如く溢れ出てきそうで、本能なのか、俺はその溢れ出そうな潤いに固く堅く栓をした。
(やめてくれ。俺はもう同じような過ちを繰り返したくはない)
警鐘にも似た自主的防衛。
暖子さんとは、『ただの友人』でいたい。
俺の気持ち悪い性癖なんて、暖子さんは知らなくていい。知らないままでいて欲しい。この関係を崩したくはないから。
そう思うと同時に、もっと近づきたいと言う相反した衝動にも駆られてしまう。
『もっと彼女の事を知りたい。もっと俺の事を知って欲しい』
なんて実に手前勝手な自分も、舌舐めずりして内側から這い出てこようとしている。
色んな感情が入り乱れて俺は気付かずうちに深い溜息を吐いてしまったようで、
「……雪斗くん、大丈夫?」
心配そうな顔でこちらを覗き込んでくる暖子さん。
「まあ、疲れたってのはあるけど……」
当たり障りない会話をし、暖子さんの視線から不自然ではない程度に顔を逸らした。
「そうだっ、暖子さん!」
彼女との、このまま友人としての状態を何とかと持ちたかった俺は『ある提案』を暖子さんに投げかけた。
「ライン、交換しない?」
「……『ライン』?」
俺の向かいに座った暖子さんの表情が少し曇る。
もしかしてこれって迷惑だったのだろうか。
「あ、嫌なら別にいいんだけど……」
「ううん、違うの。えっとね」
慌てて首を横に振るう暖子さん。少し考え込むように顎に手を添え、
「私、ラインあるけどあまり使ってなくて……」
ちょっとすまなさそうな表情で上目遣いで俺を見てきた。
「何だそんな事」
俺は、本当は嫌なんじゃないかと身構えていたから拍子抜けしてしまった。半ば呆れ笑いになりながらも、
『またなんかあった時に連絡しやすいでしょ?』
最もらしい理由をつけてどうにか暖子さんとラインの交換をした。
暖子さんが手慣れた手つきでスマートフォンを操作しているのを何気なく見ていると俺のスマートフォンが、ピロリンッと着信音を響かせた。画面を見ると、今人気のアニメのスタンプで『お礼』のメッセージが暖子さんから送られてきた。
「暖子さんもこのアニメ好きなの?」
「えへへ」
俺がそう聞くと暖子さんは少し照れたように笑い小さく頷いた。
まるで、いたずらっ子のような普段とのギャップが相まって俺の心臓は再びトクントクンと高鳴り始めた。
これ以上の深入りはいけないと思いつつも、しばしその心地よく懐かしい感覚に少しだけ身を委ねたのだった。
ローテーブルの前に胡座で座る俺は、差し出されたお茶を呆然と見つめていたようで、暖子(はるこ)さんから訝しげに掛かる声で意識を取り戻した。
「……雪斗(ゆきと)くん、もしかして私の風邪がうつっちゃった?」
少し申し訳なさそうに眉をひそめ俺の顔を覗き込んでくる暖子さん。
「あ~違う違う」
俺は情けなく笑い首を横に振るう。
「暖子さんが体調良くなってよかったなぁって」
別にやましい事はないのだが、(そもそも暖子さんに恋愛対象など抱いてはいなくて本当にただの気の合う友人のような感覚)、俺はなぜか言葉を濁してしまった。
「……う。あの時は本当にごめんなさい。でもありがとうね」
暖子さん独特の柔らかい微笑み――その笑みはどうしてだろうか、見る度に俺の心臓を跳ね上がらせる。
とうに枯れ果てたはずの得体の知れない感情が湧き水の如く溢れ出てきそうで、本能なのか、俺はその溢れ出そうな潤いに固く堅く栓をした。
(やめてくれ。俺はもう同じような過ちを繰り返したくはない)
警鐘にも似た自主的防衛。
暖子さんとは、『ただの友人』でいたい。
俺の気持ち悪い性癖なんて、暖子さんは知らなくていい。知らないままでいて欲しい。この関係を崩したくはないから。
そう思うと同時に、もっと近づきたいと言う相反した衝動にも駆られてしまう。
『もっと彼女の事を知りたい。もっと俺の事を知って欲しい』
なんて実に手前勝手な自分も、舌舐めずりして内側から這い出てこようとしている。
色んな感情が入り乱れて俺は気付かずうちに深い溜息を吐いてしまったようで、
「……雪斗くん、大丈夫?」
心配そうな顔でこちらを覗き込んでくる暖子さん。
「まあ、疲れたってのはあるけど……」
当たり障りない会話をし、暖子さんの視線から不自然ではない程度に顔を逸らした。
「そうだっ、暖子さん!」
彼女との、このまま友人としての状態を何とかと持ちたかった俺は『ある提案』を暖子さんに投げかけた。
「ライン、交換しない?」
「……『ライン』?」
俺の向かいに座った暖子さんの表情が少し曇る。
もしかしてこれって迷惑だったのだろうか。
「あ、嫌なら別にいいんだけど……」
「ううん、違うの。えっとね」
慌てて首を横に振るう暖子さん。少し考え込むように顎に手を添え、
「私、ラインあるけどあまり使ってなくて……」
ちょっとすまなさそうな表情で上目遣いで俺を見てきた。
「何だそんな事」
俺は、本当は嫌なんじゃないかと身構えていたから拍子抜けしてしまった。半ば呆れ笑いになりながらも、
『またなんかあった時に連絡しやすいでしょ?』
最もらしい理由をつけてどうにか暖子さんとラインの交換をした。
暖子さんが手慣れた手つきでスマートフォンを操作しているのを何気なく見ていると俺のスマートフォンが、ピロリンッと着信音を響かせた。画面を見ると、今人気のアニメのスタンプで『お礼』のメッセージが暖子さんから送られてきた。
「暖子さんもこのアニメ好きなの?」
「えへへ」
俺がそう聞くと暖子さんは少し照れたように笑い小さく頷いた。
まるで、いたずらっ子のような普段とのギャップが相まって俺の心臓は再びトクントクンと高鳴り始めた。
これ以上の深入りはいけないと思いつつも、しばしその心地よく懐かしい感覚に少しだけ身を委ねたのだった。
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