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砂の世界
王都ラピリア
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「やっと着いたわね、ここがラピス王国の王都ラピリアよ」
燃えるように赤い髪の少女ユナ・アーネスが言う
「思ってたよりも発展してるんだな、もっと砂やらが舞っている街を想像してたんだけど」
少女の隣、黒髪に黒目で左腕に腕輪をした青年、無神の代行者シンが答える
「そうね、私も来たばかりだから詳しくは知らないけど、国王の方針みたいでねラピス王国の町はどこも綺麗な街並みをしているわ」
ユナのが言っている通り、ラピス王家は代々国民の生活を第一に考え、税金なども国民のため街道の整備などに使い、さらに街の警備を充実させ、商店街や宿場を作り旅人や商人なども頻繁に迎え入れることで流通を良くし国を発展させていた。
「でもそれの弊害って言っていいのかしら?王国軍はあまり強化出来ないみたいね、だから戦争になると傭兵を雇ってやりくりしているの、でもしょせんは傭兵だから軍事国家のミリア皇国の騎士とは力の差はあるわ」
「そうなのか、俺が騎士に囲まれてたのはやっぱり傭兵と間違えられたからなんだな、まあおかげでユナに会えたけど」
「そうね、私もラピスの人だとおもったから助けたし、まあまさかあんたが変態とは思わなかったけどね!」
「失礼な、俺は変態じゃないからな」
「よくそんな事言えるわね、自分のやったことをもう忘れたの!ぶった切るわよ」
剣を抜きながらユナが言う。
「わかった、悪かったから剣をしまってくれ」
この件に関してはシンが完全に悪いので、謝るしかない。
「もうあんなことはしない事ね!じゃあ私は行くとこがあるから先に行くわ、また会うことがあったらよろしくね」
「ああ、ユナは強いのがわかったからな、何かあったら手を借りるよ、ここまで送ってくれてありがとな」
「いいわよ、お礼なんて」
道を進むユナを見送りながら王都を見ることにする。
王都ラピリア
王都ラピリアは高くそびえる白い石材でできたラピリア城を中心にしたラピス王国の首都である。
王都は街を円状に囲んでいる城壁に囲まれており、ラピリア城から東西南北に門へと繋がる4つの大きな街道と城壁の内側も街道になっている。
王都の北側は高い岩山がそびえたっているため、北門はほとんど使われていない、そのため南門が正門となっており、商人や旅人はほとんど南門を使用している。
街は大きく4つの区画分けがされていて、南は宿舎や宿屋、武器屋、防具屋がある商業エリアとなり、西には酒場などの歓楽街になり東と北に居住区や軍施設、魔道具工房、鍛冶屋などがある。
建物の多くはレンガを使っているが街道は石材を使用してあり、馬車なども3台ほど並んで通れるくらい広い
(とりあえず俺はこの砂の世界の事をほとんど知らないからな、情報収集からしよう、戦争の事もあるけど証もどこにあるかわからないからな)
(情報を集めるならやっぱ酒場かな?ユナの事も気になるな、あんなに強いんだ有名だろう、この国の兵士かもしれないけどあの赤い長衣って兵士っぽくないしな)
門付近にいるこの国の兵士と思われる人たちの格好は赤ではなくグレーのような色をしたローブをしておりユナのような恰好をしている者はほとんどいない。
(まずはこの世界について教えてもらおう、聞ければ証についても聞きたいな)
そういってシンは王都を歩き出す、この後待ち受ける重大な問題など気にもとめないまま
******************************************************************************
「おい!こっちまだ酒が来てねーぞ!」
大柄な厳ついはげ頭の男が叫ぶ
「はい!ただいまお持ちします!」
酒場の店員だろうか、黒髪の若い店員が返事をする。
王都ラピリアでは夜になると酒場は賑やかになる。今日もどこの酒場でも満員状態だ、当然酒場の店員は大忙しこっちの席で注文を聞き、あっちの席からも呼び出しが掛かる。
先ほどの店員もあっちにいったりこっちにいったり店中を駆け回っている。だが新人なのだろうか。
「注文と違うじゃねえか!しっかりしろ!」
「すいません!すぐ取り替えます!」
注文を間違えることも、忘れてしまうことも多々あった、すると見かねた店の先輩だろうか
「あんた厨房行きな!注文はあたしがとるよ!」
40代くらいの気の強そうな女性が交代をするように言う
「すいません、ラベッカさん慣れてないもので」
申し訳なさそうに言う黒髪の青年。
「いいさ、皿洗いでもするんだね」
「はい!」
そう返事をして厨房に向かう若い店員、というかシンであった。
すると新たに店に入ってくる新たな客が見える、その新たな客と目が合うシン。
「えっあんたこんなとこで何やってんの!」
新たな客、燃えるような赤い髪に赤い長衣を身にまっとた少女ユナ・アーネスが同じく赤い長衣を身にまとう2人のお供を連れて入って来た。3名様ご来店です。
「何やってるって言われても、店員やってます?」
「なんで疑問形なのよ」
そうなんでこんなことになってしまったのか。
*************************************************************************
「兄ちゃん!この防具どうだい!剣なんかはじいちまうよ!」
「ラピス特産の鉱石から作った剣だよ!安くしとくよ!」
「今が旬のフルーツたくさんあるよ!見ていきな!」
(ほんとに活気がいいなこの町は、商業が盛んなのは本当だったな)
昼の時間を過ぎた頃、シンは商業エリアを歩いていた。
歩いていると様々な方向から声を掛けられる、商業エリアは王都ラピリアで最も活気のある通りである、ここでは主婦の女性や商人、旅人などが数多く歩いている、各々目当ての物を探し、買い物を楽しんでいる。
(酒場は確か西の街道だったな、昼間に行っても大丈夫なのか?)
そんなことを思いつつ西の街道に向かう、西の街道に入ると人々の服装が変わっている。
(武装した奴らがやけに多いな、やっぱり酒場なんかは冒険者みたいなのもいんのかな?)
その通りである、この砂の世界では魔獣の討伐や、薬草採取などの依頼を酒場がまとめており、腕に自信のある者はこの依頼をこなし生活しているのだ。
(とにかくこの世界について教えてもらおう、酒場の店主なんかは詳しそうだしな)
そんなことを考えつつ、シンは一軒の酒場に入っていく、何件かある酒場のうちそこそこ大きめの店を見つけそこに入ることにした。
「いらっしゃい!レベール亭にようこそ」
店に入ると、気の強そうな大柄の女性に声を掛けられる
「こんにちは、自分は旅をしているんですが、この辺りにはこの前来たばかりでして、いろいろと教えてもらいたいんですが」
「おっなんだい、若いのに旅をしてるのかい、あたしも昔は旅をしたもんさ、いいよなんでも聞きな、この辺りの事を知らないんだったね、別の世界から来たのかい?」
「ええ、砂の世界には初めてです。それで最初にここについたんですが、途中に騎士に囲まれたりで大変でしたよ」
「その騎士はたぶんミリアの騎士だね、災難だったね、ちょうど戦争中なんだよ、王国と皇国がね」
「そうなんです、たまたま居合わせた王国の兵士だと思うんですが、その方に助けられまして、その方にここまで案内してもらいました。よろしければ、その戦争とかのこの世界について教えてもらっていいですか?」
「運がいいんだか、悪いんだかわかんない坊やだね、いいよじゃあ王国と皇国から教えようかね」
「ありがとうございます」
こうしてレーベル亭の店主であったレベッカさんにこの世界について教えてもらうことに。
まず王国と皇国の戦争について、戦争といってもいきなり戦うわけではないようだ、お互いに条件を出し、戦地をきめる、そして戦地となる場所の住民は避難をするそうだ。
この世界に来てから人になかなか会えなかったのは、今回俺がいたところが戦地だったからだそうだ。
こんな戦争がいつもあるのか聞いてみると、結構な頻度であるそうだ。
戦争をするのは、大概が王国と皇国なんだそうだが、砂の世界には他にも国が存在するようだ。
閉鎖的な国であるラーズ王国は、他国にあまり介入をしないそうだ、交易などもあまりしていないので独自の生活をしているそうだ。
もう一つはウェンズ共和国、民主制の政治をしていて国軍もいるにはいるが、戦争ではほとんどが傭兵などを使って戦う国家との事。
そして現在ラピス王国と戦争をしているミリア皇国、第11代皇帝アレクシス・ミリアが頂点に立つ皇国は砂の世界最強と言われており、最強の名の通り軍事国家となっていて大陸統一を目指している。今の皇帝は特に独占欲が強く経済的にも繁栄しているラピス王国を取り込もうと必死らしい。軍事力に差がある王国は少しずつ領土を取られている。
「そこでラピス王国は、手を打って出たのさ、資金力は王国の方が上だからね、多額の報酬を条件に最強と言われてる傭兵集団を雇ったのさ、この前の戦いで初めて出陣したんだけどね、そのおかげもあって今回は王国が勝ったのさ」
どうやらその最強の集団のおかげで皇国の侵攻を退けたらしい。
「へぇ、ほんとに強いんですね、どんな人たちなんです?」
最強の傭兵集団、そういわれると自然と興味がわいてくる。戦いたい訳じゃないよ、戦闘狂じゃないし
「その傭兵団の名前は赤姫って言うんだとさ、15人くらいの傭兵団なんだけどね1人1人がバケモンみたいな強さなんだってよ、あたしも聞いたことしか無いんだけどね、中でも団長と副長は特に強いんだと、なんてったって団長は序列5位、副長は序列8位って言うじゃないか、その団長が1人づつ声を掛けて作った傭兵団って話だ、最強なんてのも納得だね」
序列・その名の通りに1から10までの順位があり、7つすべての世界における最強の10人の事を指している、1対1での戦闘能力を示しているが能力の相性もあるため必ずしも上の順位が勝利するわけではないが、基本的には1位が1番強い、序列に名を連ねる者にはその順位が刻まれた紋章が左手首に刻まれる。
序列外の者が序列を持つものに勝利すれば、勝利したものにそのまま受け継がれるが、序列同士の戦いでは下位の者が勝利すると上位の者と入れ替わりになる。
序列に名を連ねるのがこの世界の強者達の目標でもあり、憧れの存在でもある。
「5位と8位ですか、それはすごいですね、それにしても赤鬼ですか怖そうな集団ですね」
頭の中で鬼のような集団を想像するシン、関わりたくなさそうな顔をする。
「その顔、何を想像してるか知らないけど、鬼じゃなくて姫だからね、赤い姫で赤姫だよ、なんでも団員全員が女の子って話だよ」
「女の子ですか、なんかイメージ出来ないですね」
そういいつつ頭の中でユナ想像し、もしかして赤姫?と考えているシンであった。
「特徴はそうだねぇ、団員全員が赤い長衣を着ているよ、街の中で見なかったのかい?」
「もしかして、赤い髪に赤い剣を持ってる子も団員です?」
「なんだい、知ってるじゃないか!その子が赤姫の団長だよ!」
レベッカの言葉に驚いてしまうシン、さらには冷や汗までかいてしまう。
(まじか、ユナって序列5位じゃないか!強いとは思ったけどそこまでか、長衣だから腕はみえなかったしな、やっぱり道中は全然本気の戦闘じゃなかったよな、やべ、胸さわっちゃったよセクハラだよ、よく生きてるな俺、また会ったらちゃんと謝ろう)
そう固く決心するシンであった。
しかしこの後のレベッカとの会話でまたも冷や汗をかくことになる。
「ほら、うちの自慢のシチューだよ!食べてきな、まさかとは思わないけど酒場まで来て話聞きに来ただけじゃないだろう?」
シンは王都につく前から食事をしていなかった、そのため何も考えず口にしてしまう。
「うまい!あっいやすごくおいしいですよこのシチュー!それにこのパンもおいしい、焼き立てですか?」
「そうかい、気に入ってもらえたかい?うちは手作りが自慢の店だからね、喜んでもらえたらうれしいさね」
あっという間に完食するシン。
「本当においしかったです、ごちそうさまですまさか食事までいただけるとは」
さりげなくタダにしようとするシンしかし。
「何いってんだいあんた、話はタダだけど食事は別だよ!情報料だと思って払いな!1食ラピス銅貨3枚だよ!」
通じなかった、それも当然だ、話を聞けたのは良かったがまさか食事まで出てくるとは、いやなんとなくわかっていた、でもそこまで深く考えていなかった、何とかなるだろう、そう思っていたのだ、だめでも俺の話術で切り抜けられるとも思っていた。
しかしこの百戦錬磨(想像)の鬼店主レベッカに俺の拙い話術など通用しなかった、そう何をかくそうこの俺シンはラピス銅貨なんてものは知らない、ついでに硬貨自体持ってない、一言で言おう俺は金がない
(そりゃそうだよな、情報も教えてくれる上にご飯もタダなんて話ある訳がない、まずい無銭飲食で捕まるのだろうか、牢獄行きなのだろうかどうする逃げるか?いやこの目の前の鬼店主から逃げられる気がしない、だか、いや……)
などと考えていると
「あんた旅してるんだったよね、もしかして金が無いのかい?」
「はい、すみません本当はご飯は食べないつもりだったんですが、あまりにもおいしそうだったのでつい」
などと言い訳を言ってしまう。やばい殺される…などと頭の中で考えてしまっていたが、レベッカは優しかった。
「しょうがないね、若いのに旅をするなんて苦労もあるだろう、2日でどうだい?2日この店で働いたら許してやるよ!金もないんだ宿も取れないだろう?うちで寝泊まりするといい、ご飯も出してやるよ!」
「本当ですか!ありがとうございます!精一杯働きます!」
(鬼店主なんて言ってごめんなさい)
そう心で謝るシンであった。
1日働きレベッカさんとも仲良くなれた。いろんな話もしてくれた。
レベッカさんは昔冒険者をしていたらしい、棍棒のレベッカなんて二つ名で呼ばれていたんだとちょっとイメージ通りで軽く笑ってしまった。
そんな二つ名を持つレベッカさんだったが、本当に優しい人だ、俺が慣れない仕事で失敗してしまって客を怒らせてしまっても俺をかばってくれて最後には強引に笑い話にしてしまったりしてくれる。
わからないだろうことは事前に教えてくれるし、無銭飲食のこんな俺を本当によくしてくれた。
この砂の世界における母親のような存在になりつつあった。酒場に来る客も昔からレベッカさんにお世話になった人たちがよく来ている、王都でも頼りにされているのが見ていてわかった。
「これから旅でつらいことあったらいつでもここに来なよ!歓迎するからね!」
こう言ってくれたりする。適当に選んだ酒場だったけどここに来て本当に良かったと思っている。
レベッカさんには感謝してもしきれないくらいだ、砂の証を手に入れたら何かお礼をしないと証についてレベッカさんは知ってるのだろうか、聞いてみよう。
「レベッカさんは砂の証を知ってますか?」
「砂の証?ああミリアスの指輪のことかね?それなら知ってるよ!あれが欲しいのかい?」
「たぶんそうだと思います。俺の旅の目的は証を集める事ですから!どこにあるんですか?」
「証を集める?あんた代行者なのかい!こりゃ驚いたあんな伝説信じてる奴なんていないからね、ミリアスの指輪ならこの街にもあるよ!」
「本当ですか!この街のどこにあるんです?」
「なんだ、王城にはまだいってないのかい?王城の中で店があるからそこに行きな!売ってるから」
「王城にあるんですね!ありがとうございます、って売ってる?証がですか?」
「ああそうさ、ミリアスの指輪はこのラピス特産の鉱石から出来てるからね、ラピス金貨5枚だよ」
(金貨10枚…)
ラピス硬貨・・・ラピス王国で使われている効果は4種類ある、上から順に
白金貨
金貨
銀貨
銅貨
である。
銅貨は10枚で銀貨1枚
銀貨は50枚で金貨1枚
金貨は100枚で白金貨1枚になる。
硬貨の含有率は全世界で共通となっているため、他の世界でもラピス硬貨は利用できる
ちなみにラピス王国における一か月の平均収入は、銀貨20枚だ。
「こればっかりは地道に稼ぐしかないからね、まああんたでも出来そうな依頼があったら紹介するよ」
「わかりました、ありがとうございます」
「あとあんま代行者って言うのはやめな!あたしは違うけど、他にも狙ってる奴がいるかもしんないからね気を付けるんだよ」
「はい、肝に銘じておきます」
「まあがんばんな!」
そう言って豪快に笑いながら背中を叩いて来るレベッカさんだった。力強すぎだろ、背中痛いし
しかし、証って普通に売ってるもんなのかい、偽物の可能性もあるしな、あとでノアに聞いとくか
燃えるように赤い髪の少女ユナ・アーネスが言う
「思ってたよりも発展してるんだな、もっと砂やらが舞っている街を想像してたんだけど」
少女の隣、黒髪に黒目で左腕に腕輪をした青年、無神の代行者シンが答える
「そうね、私も来たばかりだから詳しくは知らないけど、国王の方針みたいでねラピス王国の町はどこも綺麗な街並みをしているわ」
ユナのが言っている通り、ラピス王家は代々国民の生活を第一に考え、税金なども国民のため街道の整備などに使い、さらに街の警備を充実させ、商店街や宿場を作り旅人や商人なども頻繁に迎え入れることで流通を良くし国を発展させていた。
「でもそれの弊害って言っていいのかしら?王国軍はあまり強化出来ないみたいね、だから戦争になると傭兵を雇ってやりくりしているの、でもしょせんは傭兵だから軍事国家のミリア皇国の騎士とは力の差はあるわ」
「そうなのか、俺が騎士に囲まれてたのはやっぱり傭兵と間違えられたからなんだな、まあおかげでユナに会えたけど」
「そうね、私もラピスの人だとおもったから助けたし、まあまさかあんたが変態とは思わなかったけどね!」
「失礼な、俺は変態じゃないからな」
「よくそんな事言えるわね、自分のやったことをもう忘れたの!ぶった切るわよ」
剣を抜きながらユナが言う。
「わかった、悪かったから剣をしまってくれ」
この件に関してはシンが完全に悪いので、謝るしかない。
「もうあんなことはしない事ね!じゃあ私は行くとこがあるから先に行くわ、また会うことがあったらよろしくね」
「ああ、ユナは強いのがわかったからな、何かあったら手を借りるよ、ここまで送ってくれてありがとな」
「いいわよ、お礼なんて」
道を進むユナを見送りながら王都を見ることにする。
王都ラピリア
王都ラピリアは高くそびえる白い石材でできたラピリア城を中心にしたラピス王国の首都である。
王都は街を円状に囲んでいる城壁に囲まれており、ラピリア城から東西南北に門へと繋がる4つの大きな街道と城壁の内側も街道になっている。
王都の北側は高い岩山がそびえたっているため、北門はほとんど使われていない、そのため南門が正門となっており、商人や旅人はほとんど南門を使用している。
街は大きく4つの区画分けがされていて、南は宿舎や宿屋、武器屋、防具屋がある商業エリアとなり、西には酒場などの歓楽街になり東と北に居住区や軍施設、魔道具工房、鍛冶屋などがある。
建物の多くはレンガを使っているが街道は石材を使用してあり、馬車なども3台ほど並んで通れるくらい広い
(とりあえず俺はこの砂の世界の事をほとんど知らないからな、情報収集からしよう、戦争の事もあるけど証もどこにあるかわからないからな)
(情報を集めるならやっぱ酒場かな?ユナの事も気になるな、あんなに強いんだ有名だろう、この国の兵士かもしれないけどあの赤い長衣って兵士っぽくないしな)
門付近にいるこの国の兵士と思われる人たちの格好は赤ではなくグレーのような色をしたローブをしておりユナのような恰好をしている者はほとんどいない。
(まずはこの世界について教えてもらおう、聞ければ証についても聞きたいな)
そういってシンは王都を歩き出す、この後待ち受ける重大な問題など気にもとめないまま
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「おい!こっちまだ酒が来てねーぞ!」
大柄な厳ついはげ頭の男が叫ぶ
「はい!ただいまお持ちします!」
酒場の店員だろうか、黒髪の若い店員が返事をする。
王都ラピリアでは夜になると酒場は賑やかになる。今日もどこの酒場でも満員状態だ、当然酒場の店員は大忙しこっちの席で注文を聞き、あっちの席からも呼び出しが掛かる。
先ほどの店員もあっちにいったりこっちにいったり店中を駆け回っている。だが新人なのだろうか。
「注文と違うじゃねえか!しっかりしろ!」
「すいません!すぐ取り替えます!」
注文を間違えることも、忘れてしまうことも多々あった、すると見かねた店の先輩だろうか
「あんた厨房行きな!注文はあたしがとるよ!」
40代くらいの気の強そうな女性が交代をするように言う
「すいません、ラベッカさん慣れてないもので」
申し訳なさそうに言う黒髪の青年。
「いいさ、皿洗いでもするんだね」
「はい!」
そう返事をして厨房に向かう若い店員、というかシンであった。
すると新たに店に入ってくる新たな客が見える、その新たな客と目が合うシン。
「えっあんたこんなとこで何やってんの!」
新たな客、燃えるような赤い髪に赤い長衣を身にまっとた少女ユナ・アーネスが同じく赤い長衣を身にまとう2人のお供を連れて入って来た。3名様ご来店です。
「何やってるって言われても、店員やってます?」
「なんで疑問形なのよ」
そうなんでこんなことになってしまったのか。
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「兄ちゃん!この防具どうだい!剣なんかはじいちまうよ!」
「ラピス特産の鉱石から作った剣だよ!安くしとくよ!」
「今が旬のフルーツたくさんあるよ!見ていきな!」
(ほんとに活気がいいなこの町は、商業が盛んなのは本当だったな)
昼の時間を過ぎた頃、シンは商業エリアを歩いていた。
歩いていると様々な方向から声を掛けられる、商業エリアは王都ラピリアで最も活気のある通りである、ここでは主婦の女性や商人、旅人などが数多く歩いている、各々目当ての物を探し、買い物を楽しんでいる。
(酒場は確か西の街道だったな、昼間に行っても大丈夫なのか?)
そんなことを思いつつ西の街道に向かう、西の街道に入ると人々の服装が変わっている。
(武装した奴らがやけに多いな、やっぱり酒場なんかは冒険者みたいなのもいんのかな?)
その通りである、この砂の世界では魔獣の討伐や、薬草採取などの依頼を酒場がまとめており、腕に自信のある者はこの依頼をこなし生活しているのだ。
(とにかくこの世界について教えてもらおう、酒場の店主なんかは詳しそうだしな)
そんなことを考えつつ、シンは一軒の酒場に入っていく、何件かある酒場のうちそこそこ大きめの店を見つけそこに入ることにした。
「いらっしゃい!レベール亭にようこそ」
店に入ると、気の強そうな大柄の女性に声を掛けられる
「こんにちは、自分は旅をしているんですが、この辺りにはこの前来たばかりでして、いろいろと教えてもらいたいんですが」
「おっなんだい、若いのに旅をしてるのかい、あたしも昔は旅をしたもんさ、いいよなんでも聞きな、この辺りの事を知らないんだったね、別の世界から来たのかい?」
「ええ、砂の世界には初めてです。それで最初にここについたんですが、途中に騎士に囲まれたりで大変でしたよ」
「その騎士はたぶんミリアの騎士だね、災難だったね、ちょうど戦争中なんだよ、王国と皇国がね」
「そうなんです、たまたま居合わせた王国の兵士だと思うんですが、その方に助けられまして、その方にここまで案内してもらいました。よろしければ、その戦争とかのこの世界について教えてもらっていいですか?」
「運がいいんだか、悪いんだかわかんない坊やだね、いいよじゃあ王国と皇国から教えようかね」
「ありがとうございます」
こうしてレーベル亭の店主であったレベッカさんにこの世界について教えてもらうことに。
まず王国と皇国の戦争について、戦争といってもいきなり戦うわけではないようだ、お互いに条件を出し、戦地をきめる、そして戦地となる場所の住民は避難をするそうだ。
この世界に来てから人になかなか会えなかったのは、今回俺がいたところが戦地だったからだそうだ。
こんな戦争がいつもあるのか聞いてみると、結構な頻度であるそうだ。
戦争をするのは、大概が王国と皇国なんだそうだが、砂の世界には他にも国が存在するようだ。
閉鎖的な国であるラーズ王国は、他国にあまり介入をしないそうだ、交易などもあまりしていないので独自の生活をしているそうだ。
もう一つはウェンズ共和国、民主制の政治をしていて国軍もいるにはいるが、戦争ではほとんどが傭兵などを使って戦う国家との事。
そして現在ラピス王国と戦争をしているミリア皇国、第11代皇帝アレクシス・ミリアが頂点に立つ皇国は砂の世界最強と言われており、最強の名の通り軍事国家となっていて大陸統一を目指している。今の皇帝は特に独占欲が強く経済的にも繁栄しているラピス王国を取り込もうと必死らしい。軍事力に差がある王国は少しずつ領土を取られている。
「そこでラピス王国は、手を打って出たのさ、資金力は王国の方が上だからね、多額の報酬を条件に最強と言われてる傭兵集団を雇ったのさ、この前の戦いで初めて出陣したんだけどね、そのおかげもあって今回は王国が勝ったのさ」
どうやらその最強の集団のおかげで皇国の侵攻を退けたらしい。
「へぇ、ほんとに強いんですね、どんな人たちなんです?」
最強の傭兵集団、そういわれると自然と興味がわいてくる。戦いたい訳じゃないよ、戦闘狂じゃないし
「その傭兵団の名前は赤姫って言うんだとさ、15人くらいの傭兵団なんだけどね1人1人がバケモンみたいな強さなんだってよ、あたしも聞いたことしか無いんだけどね、中でも団長と副長は特に強いんだと、なんてったって団長は序列5位、副長は序列8位って言うじゃないか、その団長が1人づつ声を掛けて作った傭兵団って話だ、最強なんてのも納得だね」
序列・その名の通りに1から10までの順位があり、7つすべての世界における最強の10人の事を指している、1対1での戦闘能力を示しているが能力の相性もあるため必ずしも上の順位が勝利するわけではないが、基本的には1位が1番強い、序列に名を連ねる者にはその順位が刻まれた紋章が左手首に刻まれる。
序列外の者が序列を持つものに勝利すれば、勝利したものにそのまま受け継がれるが、序列同士の戦いでは下位の者が勝利すると上位の者と入れ替わりになる。
序列に名を連ねるのがこの世界の強者達の目標でもあり、憧れの存在でもある。
「5位と8位ですか、それはすごいですね、それにしても赤鬼ですか怖そうな集団ですね」
頭の中で鬼のような集団を想像するシン、関わりたくなさそうな顔をする。
「その顔、何を想像してるか知らないけど、鬼じゃなくて姫だからね、赤い姫で赤姫だよ、なんでも団員全員が女の子って話だよ」
「女の子ですか、なんかイメージ出来ないですね」
そういいつつ頭の中でユナ想像し、もしかして赤姫?と考えているシンであった。
「特徴はそうだねぇ、団員全員が赤い長衣を着ているよ、街の中で見なかったのかい?」
「もしかして、赤い髪に赤い剣を持ってる子も団員です?」
「なんだい、知ってるじゃないか!その子が赤姫の団長だよ!」
レベッカの言葉に驚いてしまうシン、さらには冷や汗までかいてしまう。
(まじか、ユナって序列5位じゃないか!強いとは思ったけどそこまでか、長衣だから腕はみえなかったしな、やっぱり道中は全然本気の戦闘じゃなかったよな、やべ、胸さわっちゃったよセクハラだよ、よく生きてるな俺、また会ったらちゃんと謝ろう)
そう固く決心するシンであった。
しかしこの後のレベッカとの会話でまたも冷や汗をかくことになる。
「ほら、うちの自慢のシチューだよ!食べてきな、まさかとは思わないけど酒場まで来て話聞きに来ただけじゃないだろう?」
シンは王都につく前から食事をしていなかった、そのため何も考えず口にしてしまう。
「うまい!あっいやすごくおいしいですよこのシチュー!それにこのパンもおいしい、焼き立てですか?」
「そうかい、気に入ってもらえたかい?うちは手作りが自慢の店だからね、喜んでもらえたらうれしいさね」
あっという間に完食するシン。
「本当においしかったです、ごちそうさまですまさか食事までいただけるとは」
さりげなくタダにしようとするシンしかし。
「何いってんだいあんた、話はタダだけど食事は別だよ!情報料だと思って払いな!1食ラピス銅貨3枚だよ!」
通じなかった、それも当然だ、話を聞けたのは良かったがまさか食事まで出てくるとは、いやなんとなくわかっていた、でもそこまで深く考えていなかった、何とかなるだろう、そう思っていたのだ、だめでも俺の話術で切り抜けられるとも思っていた。
しかしこの百戦錬磨(想像)の鬼店主レベッカに俺の拙い話術など通用しなかった、そう何をかくそうこの俺シンはラピス銅貨なんてものは知らない、ついでに硬貨自体持ってない、一言で言おう俺は金がない
(そりゃそうだよな、情報も教えてくれる上にご飯もタダなんて話ある訳がない、まずい無銭飲食で捕まるのだろうか、牢獄行きなのだろうかどうする逃げるか?いやこの目の前の鬼店主から逃げられる気がしない、だか、いや……)
などと考えていると
「あんた旅してるんだったよね、もしかして金が無いのかい?」
「はい、すみません本当はご飯は食べないつもりだったんですが、あまりにもおいしそうだったのでつい」
などと言い訳を言ってしまう。やばい殺される…などと頭の中で考えてしまっていたが、レベッカは優しかった。
「しょうがないね、若いのに旅をするなんて苦労もあるだろう、2日でどうだい?2日この店で働いたら許してやるよ!金もないんだ宿も取れないだろう?うちで寝泊まりするといい、ご飯も出してやるよ!」
「本当ですか!ありがとうございます!精一杯働きます!」
(鬼店主なんて言ってごめんなさい)
そう心で謝るシンであった。
1日働きレベッカさんとも仲良くなれた。いろんな話もしてくれた。
レベッカさんは昔冒険者をしていたらしい、棍棒のレベッカなんて二つ名で呼ばれていたんだとちょっとイメージ通りで軽く笑ってしまった。
そんな二つ名を持つレベッカさんだったが、本当に優しい人だ、俺が慣れない仕事で失敗してしまって客を怒らせてしまっても俺をかばってくれて最後には強引に笑い話にしてしまったりしてくれる。
わからないだろうことは事前に教えてくれるし、無銭飲食のこんな俺を本当によくしてくれた。
この砂の世界における母親のような存在になりつつあった。酒場に来る客も昔からレベッカさんにお世話になった人たちがよく来ている、王都でも頼りにされているのが見ていてわかった。
「これから旅でつらいことあったらいつでもここに来なよ!歓迎するからね!」
こう言ってくれたりする。適当に選んだ酒場だったけどここに来て本当に良かったと思っている。
レベッカさんには感謝してもしきれないくらいだ、砂の証を手に入れたら何かお礼をしないと証についてレベッカさんは知ってるのだろうか、聞いてみよう。
「レベッカさんは砂の証を知ってますか?」
「砂の証?ああミリアスの指輪のことかね?それなら知ってるよ!あれが欲しいのかい?」
「たぶんそうだと思います。俺の旅の目的は証を集める事ですから!どこにあるんですか?」
「証を集める?あんた代行者なのかい!こりゃ驚いたあんな伝説信じてる奴なんていないからね、ミリアスの指輪ならこの街にもあるよ!」
「本当ですか!この街のどこにあるんです?」
「なんだ、王城にはまだいってないのかい?王城の中で店があるからそこに行きな!売ってるから」
「王城にあるんですね!ありがとうございます、って売ってる?証がですか?」
「ああそうさ、ミリアスの指輪はこのラピス特産の鉱石から出来てるからね、ラピス金貨5枚だよ」
(金貨10枚…)
ラピス硬貨・・・ラピス王国で使われている効果は4種類ある、上から順に
白金貨
金貨
銀貨
銅貨
である。
銅貨は10枚で銀貨1枚
銀貨は50枚で金貨1枚
金貨は100枚で白金貨1枚になる。
硬貨の含有率は全世界で共通となっているため、他の世界でもラピス硬貨は利用できる
ちなみにラピス王国における一か月の平均収入は、銀貨20枚だ。
「こればっかりは地道に稼ぐしかないからね、まああんたでも出来そうな依頼があったら紹介するよ」
「わかりました、ありがとうございます」
「あとあんま代行者って言うのはやめな!あたしは違うけど、他にも狙ってる奴がいるかもしんないからね気を付けるんだよ」
「はい、肝に銘じておきます」
「まあがんばんな!」
そう言って豪快に笑いながら背中を叩いて来るレベッカさんだった。力強すぎだろ、背中痛いし
しかし、証って普通に売ってるもんなのかい、偽物の可能性もあるしな、あとでノアに聞いとくか
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