プロクラトル

たくち

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砂の世界

エルリックの日常 2

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 ここ最近で何度目かわからない気絶(だいたいシンが悪い)から目覚め体を起こすと周りにはユナとクレアそして初めて見る小柄な女の子が立っていた。

「だっ大丈夫ですか?」

 小さな声で声をかける女の子は小柄なユナよりもさらに小さいがその胸はこの場にいる誰よりも膨らんでいた。

「ああ、心配ない」

 見知らぬ女の子に返事をしつつ状況の確認をする。
するとシンの話を聞いたユナはクレアを呼びエルリックの指導をするメンバーを決めたらしい。

 そのメンバーがこの子のようだが大丈夫なのだろうか?気弱そうなその子は不安そうな表情でこちらを見ている。

「問題ないわ、アニーは槍を使うしこれでも”暴君”なんて呼ばれているのよ!」

 自信満々に言うユナだったがやはり不安だ。
エルリックの方が強いんじゃないか?と思えるほどこの女の子からはひ弱な印象しか持てない。

「はぅ、そんな見ないで下さい」

 シンが怪しそうに見ていた為、女の子はユナの後ろに隠れてしまう。

「あんた、そんな目でうちの団員を見ないでくれる?」

 また拳骨を食らうのはゴメンなので素直に謝っておく、確かに見過ぎたかもしれない。

 だがシンにはまだ気になる事がある。

「暴君?」

 何故この小動物のような女の子がそんな恐ろしい二つ名で呼ばれているのか、不思議でならない。
 しかし、教えてはくれないようだ「見てればわかるわよ」と意味深な事を言ってエルリックとの訓練の日時を決める。

 明日と言うとすんなりOKされ、こいつら意外とヒマなのか?と疑問に思ったがスルーする。また殴られるかもしれないし。

 エルリックに伝える為、その場を離れるシンにクレアが通りすがるシンに向かって「エルリック殿は覚悟してくれ」と恐ろしい事を言ってきたのだがシンには関係ないのでエルリックには伝えない事にする。哀れエルリック。



「わかった、明日だな」

 赤姫のメンバーとの訓練が出来ると意気込むエルリックだがシンはどうも嫌な予感がする。
 あのアニーとかいう子なら大丈夫だと思うが、あの真面目そうなクレアが覚悟するように言ったのだ、もしかしたら何か理由をつけクレアなりが訓練に参加するのかもしれない。


*******

 翌日、訓練場に到着したシンは驚き目を見開いてしまう、先に到着して準備をするエルリックは当然いるのがわかったのだが問題は他だ。
 ユナやクレアはわかるのだがなんと赤姫のメンバーが全員揃っていた。

 全員が揃ってるのを初めて見たのだが、やはりヒマなのかと結論を出しエルリックのもとへ向かう。

「エルリック、調子はどうだ?」
「ああ、最高に近いな、これは良い経験になりそうだ」

 エルリックの調子を聞いたが、良さそうだった。
 エルリックの戦いを見た事があるがあの槍捌きは天才と言われるにふさわしいものだ、これなら心配は無いだろう。

 エルリックと会話していたが、途中から赤姫たちのきゃっきゃした会話が聞こえてきた。

 最強の傭兵団などと言われているが、やっぱり女の子なのだろう。それに汗臭いはずの訓練場はなんだか良い匂いがする。

「アニーガンバ!」
「怪我しちゃダメよ!」

 などとアニーに群がっている赤姫たち、なるほどアニーは赤姫のマスコット的な子なんだろう。
だが本人はたくさんのメンバーに詰め寄られ「あわわっ」とあたふたしている、一体何が暴君なんだろうか。

「さあ!始めるわよ!」

 ユナの一声でメンバーは整列しアニーが歩き出す、さすがは団長だ。この統率力は見事なものだ、何か鉄の掟でもあるのだろう。

 訓練場の真ん中にエルリックも歩き出す、「頑張れよ」と友人にエールを送る。
 1人では何か嫌なので、戦いの解説をしてくれそうなクレアの所に行く。
 初めて会った時にクレアのお願いでユナを立ち直らす事が出来たので、クレアは俺の事を良く思ってくれている。

 赤姫の中でもシンの知る限り1番の常識人なのでシンとしても付き合いやすかった、殴られないし。

「クレアさん、解説をお願いしても良いですか?」
 
 快く引き受けてくれたクレアに感謝しつつ、エルリック達に向き直る。
 赤姫のメンバーたちからアニーに黄色い声援が飛んでいる、羨ましい。

「アニーさんは何故暴君なのです?」

「見てればわかるわよ」

 クレアに聞いたはずなのにいつの間にか隣にいたユナが答える、教えてくれたって良いじゃない。

「約束覚えてるわよね」

 約束?何の事だ?と思ったがそんな事聞いたら俺の訓練(一方的な殺戮)が始まってしまいそうなので素直に頷く。

「ほんと?なら明日朝集合ね!」

 明日の予定が勝手に決まってしまったが特にやる事もないので了解しておく、「ふふん♪」と機嫌の良くなったユナを見て選択肢を間違えなかった事に安堵しつつ、訓練の開始を待つ。

 しばらくして「おいしょ!」と可愛げな声を出して準備運動していたアニーが訓練用の槍を持ちエルリックに近づいた、またも「がんばれー」と黄色い声援が飛んでいる。

 そしていつの間にやら王国軍の兵士達が集まっていた、訓練場にいた兵士達が呼び集めたのだろう、将軍とか呼ばれてる奴もいた。
 そして王国軍は天才と言われるエルリックと対戦するのが小柄な女の子だと知り「エルリック~イジメんなよ~」とエルリックに様々なヤジを飛ばしていた。
 この訓練場にはエルリックの味方はいないのだろう、哀れエルリック。
 
「よろしくお願いします」

「・・・おう」

 丁寧にお辞儀をするエルリックにアニーが短く、おう、と言っていた。

(えっ?おう?)

 その可愛らしい見た目から想像できない言葉が聞こえた気がするが赤姫たちは変わらず黄色い声援を送ってるので聞き間違いであろう。

「では、参ります!」

 エルリックが槍を構え突撃する、そして何度も繰り返したのであろう正確無比な突きを放つ。

(鋭いな、やはり調子が良いのは本当みたいだ)

 そういう印象を持ちエルリックの動きに注目しようとしたシンだったが、エルリックに注目する事をシンの本能がさせなかった。

「っんだぁ!この気の抜けた槍はぁ!」

 耳を疑うような汚い言葉が聞こえた気がする。
いや確かに聞こえた、しかしシンの脳が理解する事を拒否している。

「オラオラオラオラァ!」

 だが現実はそんなシンを嘲笑うかのように真実を映し出す、その可愛らしい容姿からは想像も出来ないような高速の突きと怒声の連続がエルリックに襲いかかる。

 吹き飛ぶエルリック

 俄然とするシン+王国軍

 空いた口の塞がらないシンに向け解説役を引き受けたクレアが静まり返る訓練場で言い放つ。

「アニーは戦闘になると赤姫の中で1番凶暴になります。暴君の由来はその戦闘を見た敵が逃げながら暴君と叫んだ事から付けられました」

 エルリック、ご臨終



 とはいかず手加減していたのだろう。
吹き飛ばされたエルリックはまたまだ!と叫び立ちはだかる暴君に向かって行く、その姿はまるで勇者のようだ。

「あめぇんだよ!」

 だがエルリックの攻撃は暴君と化したアニーに素手で受け止められ脇腹に蹴りを食らいまたもや吹き飛ばされる。

 エルリックは諦めず何度も立ち向かうがアニーに通用しなかった、攻撃は見極められカウンターを受ける。
 その光景に最初はアニーを応援した王国軍達がエルリックを応援し出すほど一方的な戦いだった。

「どうだ?」

 しばらくするとアニーがエルリックに問いかけた。
 何がどうだ?なのかわからないシンだったのだがエルリックは「そういう事か」と呟くとまた戦闘を再開した。

 何がそういう事なのかわからないシンだったが、解説のクレアがシンに教えてくれる。

「エルリック殿の動きが変わりました、先ほどまでは読みやすい素直な攻撃でしたが今は所々工夫が感じられます」

 戦いに目を向けたシンはその意味が理解出来た。
先ほどまでは全てかわされていたエルリックの槍を今では少しだがアニーに槍での防御をさせている。

 あんな一方的な戦いから何かを掴んだエルリックはやはり天才なのだろう、改めてエルリックの凄さを感じるシン。

「まだまだ甘いところがありますが、エルリック殿はこれからさらに成長するでしょう。王国軍はエルリック殿がいる事を感謝すべきでしょう」

 クレアはエルリックの事をかなり高く評価しなおしたみたいだ。
あのクレアに認められエルリックも嬉しいだろう。

「そろそろマズイわね」

 そんなエルリックを微笑ましく見ていたシンだったが、隣のユナがまたもや意味深な言葉を発する。
背中を何か冷たいものが這い回るような嫌な気のする言葉にシンは気になってしまう。

「何が危ないんだ?」

「アニーはね戦闘で面白くなってくると見境がなくなるのよ、あんたも気をつけた方がいいわ、私が近くにいるから守ってあげるけど」

 何でそんな奴をエルリックの講師にしたんだ!と叫ぼうかと思ったがもう遅かった。

「ひゃっはぁぁぁぁ!」

 奇声をあげるアニーは観戦に来ていた王国軍に襲いかかる。
突然の事態に対応出来ない王国軍はまさに暴君とばかりにアニーに吹き飛ばされていく。

「クレア!」

 ユナの声を聞いたクレアは数人の赤姫を連れアニーに向かう、さすがのアニーも赤姫数人では簡単に捉えられ槍を没収される。

「え?あわわわわわ」

 拘束されていたアニーだったがしばらくすると、もとの気弱そうな女の子に戻った。
だが先ほどのアニーを見ていたシンや王国軍の兵士達はそんなアニーにもう可愛らしいなどの印象は持てなかった。

「エルリックさん!ありがとうございました」

 正気に戻ったアニーはすでにボロボロのエルリックにお辞儀をする。
「こちらこそ、ありがとうございました」と言うエルリックは満足げな様子だ。


「シン、それに赤姫の方々もありがとう」

 ヨロヨロと歩き近づいてきたエルリックはお礼を言った。
「惜しかったね!」や「次はもっといい勝負しなよ」と赤姫メンバーに声をかけられ「精進します」と答えている。

「シン、君のおかげでまた成長出来るようだ本当にありがとう、また彼女には指導して頂きたいな」

 あまりにも一方的な戦いだったのでエルリックの心配をしていたが彼のハートはダイヤモンドのように固かった、あんなの自分はゴメンだがエルリックがまたやりたいのならそうしたら良いのだ。

「じゃっ、明日よろしくね!」

 最後にユナに声をかけられたシンだったが、正直ブルっていた。まさかユナと戦うのか?とさっきの訓練以上に繰り広げられるであろう殺戮ショーに体が言う事を聞かなくなっていた。

「シン殿、明日は覚悟をして下さい」
 
 動かないシンに向けまたもやクレアが恐ろしい言葉を告げる。

 恐怖に駆られこの日シンはベットの中で縮こまり眠る事が出来ずブルブルと体を震えさせていた。
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