1 / 1
にわとりの卵
しおりを挟む
朝おきて台所へ行くと、健太のお母さんがフライパンに卵をわって、めだまやきを作っていました。
「おはよう、お母さん」
「あら、おはよう健太。もうすぐ朝ごはんできるから、まっててね」
ごはんができて、健太は、めだまやきを食べようとしたとき、ふと思いました。
「卵からひよこが生まれるんじゃなかったかな?」
目の前には、卵の白身の中に丸い黄身が見えます。健太はお母さんに聞いてみました。
「お母さん、この黄色いところは、ひよこだったの?」
お母さんはあわてて言いました。
「ちがうわ。心配しなくて大丈夫よ。お店には、ひよこが生まれない卵しか置いてないの。だから、お母さんが買ってくる卵の中には、最初からひよこはいないのよ」
健太は、ふうんと思いました。しかし、ひよこの生まれる卵と、そうじゃない卵はどう違うのか、よく分かりませんでした。だから、学校のとしょかんで調べることにしました。
としょかんの先生に聞いて、ちょうどいい本を教えてもらい、読んでみました。
「ふむふむ、ゆうせいらんを二十日くらい温めると、ひよこがかえると書いてある」
健太は、よく分からなかったけれど、しんぼう強く卵を温めれば、ひよこが生まれる可能性があるのだなと思いました。だから、一度ためしてみようと思いました。
家に帰ると、健太はれいぞうこから、こそりと一つ卵をとりだし、自分のへやにもっていきました。そして、毛布にくるみました。つぶれると、毛布がよごれてしまうので、ふまないように、すこし高いところにおいておきました。
それから毎日、学校から帰ると、健太は毛布をひらき、卵の様子を見ました。両手でやさしくもって、温めたりもしました。
ある日、健太が毛布をひらくと、卵が半分くらいわれていました。中で何かが動いています。
「生まれるぞ」
パリパリパリ・・・。ついに、ひよこが生まれました。
両手にやさしくひよこをもち、すぐにお母さんにほうこくしました。
「お母さん、ひよこが生まれたよ」
お母さんはおこった顔で言いました。
「あら? それは、どこから取ってきたの? すぐに持ち主に返しなさい」
健太は、泣きそうな顔で、反論しました。
「ぬすんだんじゃないよ。うちの卵から生まれたんだよ」
「そんなわけないでしょ。うちの卵からはひよこは生まれないの。正直に本当のことを話すまで、ごはんぬき!」
お母さんは、全く信じてくれず、健太は悲しくなりました。
その夜、健太はごはんに呼んでもらえませんでした。おなかがすいて食卓に行くと、お母さんは言いました。
「本当のことを話す気になった?」
「最初から本当のことを言ってるもん」
「じゃあ、ごはんはぬきね。食べちゃダメ」
そのとき、テレビからニュースが流れました。
「養鶏所の手違いで、有精卵が市場に出回っています。ご家庭で購入した卵から、ひよこが生まれる可能性があります」
お母さんは、それを聞いて、健太を見つめて言いました。
「それ、本当にうちの卵から生まれたの?」
「最初からそう言ってるよ」
「とりあえず、ごはん食べなさい」
おなかがすいているので、ごはんは食べました。でも、お母さんは信じてくれなかったし、あやまってもくれない。健太はお母さんを嫌いになりそうでした。
それから一か月くらいたったある日、健太が学校へいくと、教室のまどガラスがわれていました。近くにいた海斗くんに「何があったの?」と聞きました。
そのとき、ちょうど先生が教室に入ってきて、ガラスを見て言いました。
「わったのは、だれだ?」
すると、海斗くんが信じられないことを言いました。
「わったのは、健太くんです」
健太はあわてて、違うと言おうとしました。しかしその前に、海斗くんの友だちの友介くんと正昭くんが言いました。
「ぼくたちも健太くんがわったのを見ました」
先生は健太に言いました。
「ちょっと職員室に来なさい」
職員室では、健太はもちろん、ガラスをわったことを認めませんでした。そこで、先生はお母さんを呼びました。そして、言いました。
「健太くんがガラスをわったみたいなんですが、認めようとしないのですよ。三人の子がみているので、間違いないと思うんですがねえ。ガラスをべんしょうしてもらって、いいですか?」
お母さんは健太を見つめて言いました。
「あなたがわったの?」
「ぼくじゃないよ。来たときは、もうわれていたんだ」
そう言ったとき、健太は卵のときのことを思いだし、怖くなりました。
先生からもお母さんからも信じてもらえないんだ。本当にわっていないのに・・・。
すると、お母さんは先生に言いました。
「わったのは、うちの子じゃありません。この子はうそをついていません。もっとちゃんと調べてください」
先生は、驚いて言いました。
「そうは言っても、3人も見ている子がいますからねえ」
先生とお母さんは、大きなこえで、言い争いになりました。
十分くらい言い争いをしていると、職員室に他のクラスの先生と、同じクラスの女の子が五人入って来ました。
「ガラスをわったのは、海斗くんたちです。わたしたち、見ていました。健太くんが犯人にされていると聞いて、わたしたち、びっくりしました」
他のクラスの先生が、言い争いを見て、教室に行って、詳しく話を聞いてきてくれたのです。
こうして、健太の無実が証明されました。
健太に罪をなすりつけようとした海斗くんたちは、先生はもちろん、お父さんやお母さんからも、こっぴどくしかられました。
健太を信じようとしなかった先生も、校長先生から、こっぴどくしかられました。
お家に帰って、健太はお母さんにたずねました。
「どうして、ぼくを信じてくれたの?」
お母さんは言いました。
「卵のときは、あなたを信じてあげられなかったから、次にこういうことがあったら、絶対に健太を信じようと決めていたの。あのときは、本当に悪かったと思ったの。ごめんなさいね。今日のあなたの目は、あのときと同じだったから、絶対にうそをついていないとわかったわ」
健太はお母さんが思っていたことを知りました。
そして、今日はピンチを救ってくれました。
健太はお母さんが大好きになりました。
「おはよう、お母さん」
「あら、おはよう健太。もうすぐ朝ごはんできるから、まっててね」
ごはんができて、健太は、めだまやきを食べようとしたとき、ふと思いました。
「卵からひよこが生まれるんじゃなかったかな?」
目の前には、卵の白身の中に丸い黄身が見えます。健太はお母さんに聞いてみました。
「お母さん、この黄色いところは、ひよこだったの?」
お母さんはあわてて言いました。
「ちがうわ。心配しなくて大丈夫よ。お店には、ひよこが生まれない卵しか置いてないの。だから、お母さんが買ってくる卵の中には、最初からひよこはいないのよ」
健太は、ふうんと思いました。しかし、ひよこの生まれる卵と、そうじゃない卵はどう違うのか、よく分かりませんでした。だから、学校のとしょかんで調べることにしました。
としょかんの先生に聞いて、ちょうどいい本を教えてもらい、読んでみました。
「ふむふむ、ゆうせいらんを二十日くらい温めると、ひよこがかえると書いてある」
健太は、よく分からなかったけれど、しんぼう強く卵を温めれば、ひよこが生まれる可能性があるのだなと思いました。だから、一度ためしてみようと思いました。
家に帰ると、健太はれいぞうこから、こそりと一つ卵をとりだし、自分のへやにもっていきました。そして、毛布にくるみました。つぶれると、毛布がよごれてしまうので、ふまないように、すこし高いところにおいておきました。
それから毎日、学校から帰ると、健太は毛布をひらき、卵の様子を見ました。両手でやさしくもって、温めたりもしました。
ある日、健太が毛布をひらくと、卵が半分くらいわれていました。中で何かが動いています。
「生まれるぞ」
パリパリパリ・・・。ついに、ひよこが生まれました。
両手にやさしくひよこをもち、すぐにお母さんにほうこくしました。
「お母さん、ひよこが生まれたよ」
お母さんはおこった顔で言いました。
「あら? それは、どこから取ってきたの? すぐに持ち主に返しなさい」
健太は、泣きそうな顔で、反論しました。
「ぬすんだんじゃないよ。うちの卵から生まれたんだよ」
「そんなわけないでしょ。うちの卵からはひよこは生まれないの。正直に本当のことを話すまで、ごはんぬき!」
お母さんは、全く信じてくれず、健太は悲しくなりました。
その夜、健太はごはんに呼んでもらえませんでした。おなかがすいて食卓に行くと、お母さんは言いました。
「本当のことを話す気になった?」
「最初から本当のことを言ってるもん」
「じゃあ、ごはんはぬきね。食べちゃダメ」
そのとき、テレビからニュースが流れました。
「養鶏所の手違いで、有精卵が市場に出回っています。ご家庭で購入した卵から、ひよこが生まれる可能性があります」
お母さんは、それを聞いて、健太を見つめて言いました。
「それ、本当にうちの卵から生まれたの?」
「最初からそう言ってるよ」
「とりあえず、ごはん食べなさい」
おなかがすいているので、ごはんは食べました。でも、お母さんは信じてくれなかったし、あやまってもくれない。健太はお母さんを嫌いになりそうでした。
それから一か月くらいたったある日、健太が学校へいくと、教室のまどガラスがわれていました。近くにいた海斗くんに「何があったの?」と聞きました。
そのとき、ちょうど先生が教室に入ってきて、ガラスを見て言いました。
「わったのは、だれだ?」
すると、海斗くんが信じられないことを言いました。
「わったのは、健太くんです」
健太はあわてて、違うと言おうとしました。しかしその前に、海斗くんの友だちの友介くんと正昭くんが言いました。
「ぼくたちも健太くんがわったのを見ました」
先生は健太に言いました。
「ちょっと職員室に来なさい」
職員室では、健太はもちろん、ガラスをわったことを認めませんでした。そこで、先生はお母さんを呼びました。そして、言いました。
「健太くんがガラスをわったみたいなんですが、認めようとしないのですよ。三人の子がみているので、間違いないと思うんですがねえ。ガラスをべんしょうしてもらって、いいですか?」
お母さんは健太を見つめて言いました。
「あなたがわったの?」
「ぼくじゃないよ。来たときは、もうわれていたんだ」
そう言ったとき、健太は卵のときのことを思いだし、怖くなりました。
先生からもお母さんからも信じてもらえないんだ。本当にわっていないのに・・・。
すると、お母さんは先生に言いました。
「わったのは、うちの子じゃありません。この子はうそをついていません。もっとちゃんと調べてください」
先生は、驚いて言いました。
「そうは言っても、3人も見ている子がいますからねえ」
先生とお母さんは、大きなこえで、言い争いになりました。
十分くらい言い争いをしていると、職員室に他のクラスの先生と、同じクラスの女の子が五人入って来ました。
「ガラスをわったのは、海斗くんたちです。わたしたち、見ていました。健太くんが犯人にされていると聞いて、わたしたち、びっくりしました」
他のクラスの先生が、言い争いを見て、教室に行って、詳しく話を聞いてきてくれたのです。
こうして、健太の無実が証明されました。
健太に罪をなすりつけようとした海斗くんたちは、先生はもちろん、お父さんやお母さんからも、こっぴどくしかられました。
健太を信じようとしなかった先生も、校長先生から、こっぴどくしかられました。
お家に帰って、健太はお母さんにたずねました。
「どうして、ぼくを信じてくれたの?」
お母さんは言いました。
「卵のときは、あなたを信じてあげられなかったから、次にこういうことがあったら、絶対に健太を信じようと決めていたの。あのときは、本当に悪かったと思ったの。ごめんなさいね。今日のあなたの目は、あのときと同じだったから、絶対にうそをついていないとわかったわ」
健太はお母さんが思っていたことを知りました。
そして、今日はピンチを救ってくれました。
健太はお母さんが大好きになりました。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
稀代の悪女は死してなお
朔雲みう (さくもみう)
児童書・童話
「めでたく、また首をはねられてしまったわ」
稀代の悪女は処刑されました。
しかし、彼女には思惑があるようで……?
悪女聖女物語、第2弾♪
タイトルには2通りの意味を込めましたが、他にもあるかも……?
※ イラストは、親友の朝美智晴さまに描いていただきました。
あだ名が242個ある男(実はこれ実話なんですよ25)
tomoharu
児童書・童話
え?こんな話絶対ありえない!作り話でしょと思うような話からあるある話まで幅広い範囲で物語を考えました!ぜひ読んでみてください!数年後には大ヒット間違いなし!!
作品情報【伝説の物語(都道府県問題)】【伝説の話題(あだ名とコミュニケーションアプリ)】【マーライオン】【愛学両道】【やりすぎヒーロー伝説&ドリームストーリー】【トモレオ突破椿】など
・【やりすぎヒーロー伝説&ドリームストーリー】とは、その話はさすがに言いすぎでしょと言われているほぼ実話ストーリーです。
小さい頃から今まで主人公である【紘】はどのような体験をしたのかがわかります。ぜひよんでくださいね!
・【トモレオ突破椿】は、公務員試験合格なおかつ様々な問題を解決させる話です。
頭の悪かった人でも公務員になれることを証明させる話でもあるので、ぜひ読んでみてください!
特別記念として実話を元に作った【呪われし◯◯シリーズ】も公開します!
トランプ男と呼ばれている切札勝が、トランプゲームに例えて次々と問題を解決していく【トランプ男】シリーズも大人気!
人気者になるために、ウソばかりついて周りの人を誘導し、すべて自分のものにしようとするウソヒコをガチヒコが止める【嘘つきは、嘘治の始まり】というホラーサスペンスミステリー小説
たっくんと赤いランドセル
しきみらい
児童書・童話
もうすぐ小学校へ入学する「たっくん」は、大好きな戦隊ヒーロー「レッド」と同じ真っ赤なランドセルを買ってもらいました。しかし、幼稚園でみーちゃんに「女の子みたい」と言われてしまいます。
本当は絵本にしたかったけど、画力ないので……。
絵本に近い文体になってます。
かつて聖女は悪女と呼ばれていた
朔雲みう (さくもみう)
児童書・童話
「別に計算していたわけではないのよ」
この聖女、悪女よりもタチが悪い!?
悪魔の力で聖女に成り代わった悪女は、思い知ることになる。聖女がいかに優秀であったのかを――!!
聖女が華麗にざまぁします♪
※ エブリスタさんの妄コン『変身』にて、大賞をいただきました……!!✨
※ 悪女視点と聖女視点があります。
※ 表紙絵は親友の朝美智晴さまに描いていただきました♪
おっとりドンの童歌
花田 一劫
児童書・童話
いつもおっとりしているドン(道明寺僚) が、通学途中で暴走車に引かれてしまった。
意識を失い気が付くと、この世では見たことのない奇妙な部屋の中。
「どこ。どこ。ここはどこ?」と自問していたら、こっちに雀が近づいて来た。
なんと、その雀は歌をうたい狂ったように踊って(跳ねて)いた。
「チュン。チュン。はあ~。らっせーら。らっせいら。らせらせ、らせーら。」と。
その雀が言うことには、ドンが死んだことを(津軽弁や古いギャグを交えて)伝えに来た者だという。
道明寺が下の世界を覗くと、テレビのドラマで観た昔話の風景のようだった。
その中には、自分と瓜二つのドン助や同級生の瓜二つのハナちゃん、ヤーミ、イート、ヨウカイ、カトッぺがいた。
みんながいる村では、ヌエという妖怪がいた。
ヌエとは、顔は鬼、身体は熊、虎の手や足をもち、何とシッポの先に大蛇の頭がついてあり、人を食べる恐ろしい妖怪のことだった。
ある時、ハナちゃんがヌエに攫われて、ドン助とヤーミがヌエを退治に行くことになるが、天界からドラマを観るように楽しんで鑑賞していた道明寺だったが、道明寺の体は消え、意識はドン助の体と同化していった。
ドン助とヤーミは、ハナちゃんを救出できたのか?恐ろしいヌエは退治できたのか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる