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けんたは、また、かんがえて、いいました。
「ほかには、おもいつかないよ。わるいことなら、たくさんあるよ」

おじいちゃんは、あわてて、いいました。
「わるいことは、いわなくていい。まいにち、やねのあるところで、ふとんをきてねむれるとか、ぐあいがわるくなったら、びょういんにけるとかは、どうかな?」
「そんなの、あたりまえじゃないか」

「そうでもないんだぞ? おじいちゃんが、ちいさいころは、いえがせんそうで、やけてから、そとで、ねとまりしていたんだ。ふとんはないから、ふゆはさむいし、あめがふったら、びしょぬれだった。ねつがても、おかねがなくて、びょういんにはかかれなかった。むかしのはなしだと、おもうかもしれないが、ほんとうに、おじいちゃんは、そうだったんだぞ?」

「それは、たいへんだったね。むかしに、うまれなくてよかったなあ。あっ、こんなふうにいうと、おじいちゃんは、いやなきもちになるかな?」

「いや、わしのことはよい。むかしではなくても、いまでも、アフリカのあるところでは、たべものやびょういんが、たりなくて、ちいさいどもが、つぎつぎと、なくなっていると、きくぞ。いずれ、こんなことは、がっこうでおそわると、おもうがね。ほら、こうしてかんがえていると、いまのほんとうのせかいが、すこしは、ゆめのせかいのように、おもえてくるじゃろ?」

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