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二章 複雑な事情
二章 複雑な事情02
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「すみません、3人で一部屋借りたいんですが…空いてますか?」
「あっ……はい、まだ空きがございますよ。何日泊まりますか?」
俺が何事もなく話しかけてきたことに動揺しているのか、目をぱちくりさせていたが…すぐに綺麗な笑みを浮かべてマニュアル通りの対応をする。
「とりあえず、1週間でお願いします」
「かしこまりました。そうしましたら、15000ミニオになります」
「はい」
「ありがとうございます。こちらが鍵になります。お部屋ですが、3階を上ったすぐのところになります」
お金を支払い、代わりに鍵を受け取る。
お礼を言って、言われた通りにすぐ左手にある階段を上っていく。
その間も背中に視線が突き刺さって痛かったが、今度は誰にも絡まれることなく、部屋へと向かうことが出来た。
貰った鍵の番号は303で、部屋の番号を確認しながら歩いて行けば、3個目の扉に303と書いてあった。
ここか、なんて思いながら鍵を開けて、部屋の中へと入る。
「高いとは思ったが、結構広いな」
電気をつけてみれば、部屋の中は綺麗で、清潔感が漂っている。
3人で借りたが、この広さなら4人くらいで泊まれそうだ。
ベッドもダブルベッドが2つずつ置いてあるし。
「リュート様、ここにいた人たち…少し変……」
ルゥがツンツンと俺の服を引っ張り、どこか不安そうな表情を浮かべて見上げてくる。
きっとルゥが心配しているのは、アランたちだろう。きっとアランたちはここに泊まっているだろうから…。
「――安心しろ。何かあったら俺が手助けくらいするから」
そんなルゥに笑みを浮かべて頭をグシャグシャと撫でてやれば、ルゥもニコリと笑みを浮かべて頷いた。
安心そうな表情を浮かべられると、俺って随分と信頼されてるな…なんて思う。
当然と言っちゃ当然なんだろうが、そう思ってしまう俺は随分と自意識過剰なのかもしれない。
「リュート様がそう言うなら…リュート様に任せる。でも、僕も手伝うからね?」
「我も手伝えることがあれば手伝う。何かあったら言ってくれ」
ルゥとクウトの言葉に、ありがとうと感謝の言葉を述べ、夜食をどうするかを考える。
そう言えば、少しくらいなら俺のバッグに食材が入っていたことを思い出した。
何でもすぐにバッグに入れてしまうから、ついつい入れたモノを忘れてしまうが…意外とこういう時に役立つものだな、なんて思う。
また外に出て絡まれるのも体力の無駄遣いになるし…今回は、俺がご飯を作るか。
「クウト、ルゥ、俺の作る飯でもいいか?」
「っ!?リュート様が作るの?」
「流石にまた外出るのも面倒だしな…。そんなに素材が無いから、有り合わせになってしまうが…」
「我は食べれれば何でも構わぬ」
「僕も!僕も何でもいい!リュート様のご飯、久々……!」
ルゥの嬉しそうな弾んだ声に、こっちまで笑顔になってしまう。
こうやってルゥの笑顔が見れるだけで、俺はこの世界に戻ってきてよかったと思うし。
クウトは俺の手料理を食べたことが無いから、お前作れるの?と言った表情を浮かべている。
これでもそれなりに料理は出来る方だ。
サランが料理上手だったため、サランが料理担当になっていただけで。
簡易台所に立ち、バッグに入っていた食材を取り出していく。
玉ねぎ、ジャガイモ、人参…そして肉。
後は…カレーの素。
何でカレーの食材が丁度よくあるのかわからないが、これならすぐにできるし、何より大量に作ることが出来る。
今夜のご飯はカレーに決まった。
何故かこの世界と俺のいた世界では、ちょいちょい野菜とかが全く同じなのだ。
たまに全く別物もあるが…。これなら、俺も慣れ親しんだモノだから、取り扱いが簡単だ。
その後は、手際よくカレーを作り、米は温めるだけで食べれるものがあったので、それを使った。
3人分にしては少し量が多くなってしまったが、残ったら明日の朝に食べればいい。
そう考えながら、皿によそっていく。
俺の作ったカレーに興味津々なクウトは、さっきから小首を傾げたまま不思議そうにカレーを見ている。
ルゥはルゥで、キラキラとした瞳で俺の作ったカレーを今か今かと待っている状態だ。
「クウト、これはカレーって言うんだ。お前は食べるの初めてだったか?」
「うむ、初めて見る。人間の世界には面白い食べ物が沢山あるのだな」
そんなにマジマジとみられると恥ずかしいのだが…言っちゃ悪いが、こんなの誰でも作れるし。
「リュート様のカレー!僕、大好きです!」
ルゥはいまだに興奮しているのか、さっきから声がいつもより大きく感じる。
ここまで喜んでもらえると、作ったかいがあるというものだ。
二人に皿を渡せば――みるみるうちにカレーが消えていき、鍋に入っていたカレーは全部二人に食べられてしまった。
言っておくが、俺は自分用にちゃんと確保済みだ。
クウトは最初恐る恐る口にいれていたが…一口食べて、すぐに美味しいものと思ったらしく、二口、三口とパクパクと食べ進めていった。
二人の食べっぷりに、相当お腹を空かせていたんだな…なんて見当違いの考えを思い浮かべていた。
勿論二人が嬉しそうに食べていたのは、リュートが作ったからである。
俺もそんな二人を見ながら自分の分を口にしたのだった。
お腹も満たされて、お風呂にもしっかりと入り、今は各々好きなことをしている。
ちなみにお風呂にはみんなで入った。クウトがシャワーの使い方を知らないから、教えるために一緒に入ると言ったら、ルゥも一緒に入りたいと言い出したためである。
クウトは別に水浴びしなくても構わないと言っていたが、俺が気にするからと無理やり入らせたのだ。
まぁ、聖獣は基本汚れたりしないから、ブラッシングだけすればいいのだが…なにせ、今は人の姿だから、流石に風呂に入らないヤツと一緒に寝れない。というか、寝たくないって思ってしまった。
「さて…そろそろ寝た頃だろ。ルゥ、悪いんだが…アランたちを呼んできてくれないか?」
「…うん!連れてくるね!」
少し眠そうにしているルゥに申し訳ないと思いつつ、お願いすれば嬉しそうに快諾してくれた。
そのまますぐにその場から姿を消したルゥ。きっと今頃アランたちのところにいるはずだ。
ルゥが戻ってくるのを待つこと数分。
――トントン。
控えめなノック音に扉を開ければ、ルゥを腰に抱き着かせたアランとその様子に苦笑いを浮かべるサランの姿があった。
その場では何も言わずに、3人の招き入れ、鍵をしっかりと掛ける。
「やっとちゃんと話せるな」
「ほんとにな…ったく、お前がいなくなってからこっちは散々な目に合ってるんだからなぁ?」
軽口を叩くアランに素直に「迷惑かけたな…」と頭を下げた。
そんな俺にアランとサランはどこか寂しそうな笑みを浮かべるだけで、何も言わなかった。
とりあえず、二人をリビングへと案内してソファに座るように促す。
まず二人はクウトを見て「誰だこいつ」という目線を俺に投げてきた。
それに気付いたクウトが口を開いた。
「お二方、久しいな。この姿では初めてだからわからぬだろうが、我はクウトだ」
「ええ!?クウトなの!?聖獣って本当に人の姿になれたのね…初めて見るわ」
「クウトか!久しぶりだなー!元気だったか?」
サランが目を見開いて驚く中、アランは動じずに平然と挨拶を交わす。
図太いと言うか…こいつすげぇわ。と感心してしまう。
「おお、我は元気だ。お二方は……何やら枷のようなものが見えるが…」
二人の状態に一瞬で気づいたクウトは流石聖獣といったところだろうか。
「あっ……はい、まだ空きがございますよ。何日泊まりますか?」
俺が何事もなく話しかけてきたことに動揺しているのか、目をぱちくりさせていたが…すぐに綺麗な笑みを浮かべてマニュアル通りの対応をする。
「とりあえず、1週間でお願いします」
「かしこまりました。そうしましたら、15000ミニオになります」
「はい」
「ありがとうございます。こちらが鍵になります。お部屋ですが、3階を上ったすぐのところになります」
お金を支払い、代わりに鍵を受け取る。
お礼を言って、言われた通りにすぐ左手にある階段を上っていく。
その間も背中に視線が突き刺さって痛かったが、今度は誰にも絡まれることなく、部屋へと向かうことが出来た。
貰った鍵の番号は303で、部屋の番号を確認しながら歩いて行けば、3個目の扉に303と書いてあった。
ここか、なんて思いながら鍵を開けて、部屋の中へと入る。
「高いとは思ったが、結構広いな」
電気をつけてみれば、部屋の中は綺麗で、清潔感が漂っている。
3人で借りたが、この広さなら4人くらいで泊まれそうだ。
ベッドもダブルベッドが2つずつ置いてあるし。
「リュート様、ここにいた人たち…少し変……」
ルゥがツンツンと俺の服を引っ張り、どこか不安そうな表情を浮かべて見上げてくる。
きっとルゥが心配しているのは、アランたちだろう。きっとアランたちはここに泊まっているだろうから…。
「――安心しろ。何かあったら俺が手助けくらいするから」
そんなルゥに笑みを浮かべて頭をグシャグシャと撫でてやれば、ルゥもニコリと笑みを浮かべて頷いた。
安心そうな表情を浮かべられると、俺って随分と信頼されてるな…なんて思う。
当然と言っちゃ当然なんだろうが、そう思ってしまう俺は随分と自意識過剰なのかもしれない。
「リュート様がそう言うなら…リュート様に任せる。でも、僕も手伝うからね?」
「我も手伝えることがあれば手伝う。何かあったら言ってくれ」
ルゥとクウトの言葉に、ありがとうと感謝の言葉を述べ、夜食をどうするかを考える。
そう言えば、少しくらいなら俺のバッグに食材が入っていたことを思い出した。
何でもすぐにバッグに入れてしまうから、ついつい入れたモノを忘れてしまうが…意外とこういう時に役立つものだな、なんて思う。
また外に出て絡まれるのも体力の無駄遣いになるし…今回は、俺がご飯を作るか。
「クウト、ルゥ、俺の作る飯でもいいか?」
「っ!?リュート様が作るの?」
「流石にまた外出るのも面倒だしな…。そんなに素材が無いから、有り合わせになってしまうが…」
「我は食べれれば何でも構わぬ」
「僕も!僕も何でもいい!リュート様のご飯、久々……!」
ルゥの嬉しそうな弾んだ声に、こっちまで笑顔になってしまう。
こうやってルゥの笑顔が見れるだけで、俺はこの世界に戻ってきてよかったと思うし。
クウトは俺の手料理を食べたことが無いから、お前作れるの?と言った表情を浮かべている。
これでもそれなりに料理は出来る方だ。
サランが料理上手だったため、サランが料理担当になっていただけで。
簡易台所に立ち、バッグに入っていた食材を取り出していく。
玉ねぎ、ジャガイモ、人参…そして肉。
後は…カレーの素。
何でカレーの食材が丁度よくあるのかわからないが、これならすぐにできるし、何より大量に作ることが出来る。
今夜のご飯はカレーに決まった。
何故かこの世界と俺のいた世界では、ちょいちょい野菜とかが全く同じなのだ。
たまに全く別物もあるが…。これなら、俺も慣れ親しんだモノだから、取り扱いが簡単だ。
その後は、手際よくカレーを作り、米は温めるだけで食べれるものがあったので、それを使った。
3人分にしては少し量が多くなってしまったが、残ったら明日の朝に食べればいい。
そう考えながら、皿によそっていく。
俺の作ったカレーに興味津々なクウトは、さっきから小首を傾げたまま不思議そうにカレーを見ている。
ルゥはルゥで、キラキラとした瞳で俺の作ったカレーを今か今かと待っている状態だ。
「クウト、これはカレーって言うんだ。お前は食べるの初めてだったか?」
「うむ、初めて見る。人間の世界には面白い食べ物が沢山あるのだな」
そんなにマジマジとみられると恥ずかしいのだが…言っちゃ悪いが、こんなの誰でも作れるし。
「リュート様のカレー!僕、大好きです!」
ルゥはいまだに興奮しているのか、さっきから声がいつもより大きく感じる。
ここまで喜んでもらえると、作ったかいがあるというものだ。
二人に皿を渡せば――みるみるうちにカレーが消えていき、鍋に入っていたカレーは全部二人に食べられてしまった。
言っておくが、俺は自分用にちゃんと確保済みだ。
クウトは最初恐る恐る口にいれていたが…一口食べて、すぐに美味しいものと思ったらしく、二口、三口とパクパクと食べ進めていった。
二人の食べっぷりに、相当お腹を空かせていたんだな…なんて見当違いの考えを思い浮かべていた。
勿論二人が嬉しそうに食べていたのは、リュートが作ったからである。
俺もそんな二人を見ながら自分の分を口にしたのだった。
お腹も満たされて、お風呂にもしっかりと入り、今は各々好きなことをしている。
ちなみにお風呂にはみんなで入った。クウトがシャワーの使い方を知らないから、教えるために一緒に入ると言ったら、ルゥも一緒に入りたいと言い出したためである。
クウトは別に水浴びしなくても構わないと言っていたが、俺が気にするからと無理やり入らせたのだ。
まぁ、聖獣は基本汚れたりしないから、ブラッシングだけすればいいのだが…なにせ、今は人の姿だから、流石に風呂に入らないヤツと一緒に寝れない。というか、寝たくないって思ってしまった。
「さて…そろそろ寝た頃だろ。ルゥ、悪いんだが…アランたちを呼んできてくれないか?」
「…うん!連れてくるね!」
少し眠そうにしているルゥに申し訳ないと思いつつ、お願いすれば嬉しそうに快諾してくれた。
そのまますぐにその場から姿を消したルゥ。きっと今頃アランたちのところにいるはずだ。
ルゥが戻ってくるのを待つこと数分。
――トントン。
控えめなノック音に扉を開ければ、ルゥを腰に抱き着かせたアランとその様子に苦笑いを浮かべるサランの姿があった。
その場では何も言わずに、3人の招き入れ、鍵をしっかりと掛ける。
「やっとちゃんと話せるな」
「ほんとにな…ったく、お前がいなくなってからこっちは散々な目に合ってるんだからなぁ?」
軽口を叩くアランに素直に「迷惑かけたな…」と頭を下げた。
そんな俺にアランとサランはどこか寂しそうな笑みを浮かべるだけで、何も言わなかった。
とりあえず、二人をリビングへと案内してソファに座るように促す。
まず二人はクウトを見て「誰だこいつ」という目線を俺に投げてきた。
それに気付いたクウトが口を開いた。
「お二方、久しいな。この姿では初めてだからわからぬだろうが、我はクウトだ」
「ええ!?クウトなの!?聖獣って本当に人の姿になれたのね…初めて見るわ」
「クウトか!久しぶりだなー!元気だったか?」
サランが目を見開いて驚く中、アランは動じずに平然と挨拶を交わす。
図太いと言うか…こいつすげぇわ。と感心してしまう。
「おお、我は元気だ。お二方は……何やら枷のようなものが見えるが…」
二人の状態に一瞬で気づいたクウトは流石聖獣といったところだろうか。
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