“元”勇者がまた勇者として召喚されたけど…

青海 兎稀

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一章 再会の時

一章 再会の時 01



念のため気配を探るが辺りには人の気配は全くない。あるとしたら、動物や魔物の気配だけだ。

「普通誰もいない所に召喚するかよ……」

普通ならここは仲間が俺のことを待ってるべきじゃないか?
まあ、あいつが考えてることなんて分からないから仕方ないか。

大きなため息を吐き出し、頭をボリボリと掻きながら森を出るべく歩き出した。




数時間経ったが、動物にも魔物にも出会うことがない。
勿論、人にも会っていない。
まあ、動物も魔物も俺の纏ってるオーラにビビってるからだろうけど。
なにせレベルという概念があるとしたら俺はカンスト済みだろうし。

てか、そんなことはどうでもいい。なんで森から出れないんだ?
首を傾げて思案するが……森から出れない理由なんて方向音痴以外に何があるんだろうか。
無性に大声を出したくなったところで、フッと我に返る。
そういえば俺には前回の旅で契約をした相棒がいるんだった。

はたしてまだ契約が続行されてるか怪しいが、召喚してみよう。

「我が盟約のもと、我が声に応えよ――天馬ペガサス

魔法陣が足下に浮かび上がり、足下から前方た魔法陣が移動し――魔法陣から光が溢れる。

「まだ契約続行してくれてたのか」

これは召喚に成功した証だ。つまり、契約はずっと交わされたままということ。

久々に会えると思うと、だらしなく頬が緩んでしまう。

魔法陣から背中に両翼を持つ白銀に輝く天馬が現れたと思ったら、そのまま俺に向かって羽ばたき寄ってきた。

『主!生きておられたのか!』

「あー……うん」

その勢いに若干後ずさりながら、コクリと頷いてみせた。


そう言えば、元の世界に戻る前に魔王の魔法を受けたんだっけ。
元の世界に戻ったら傷口すら無かったから、瀕死状態だったことも今の今まで忘れていた。

「心配かけて悪いな。ほら、俺は無事だから」

よしよしと頭から首辺りを優しく撫でると、スリスリと気持ち良さそうに擦り寄ってきた。
久々の再会だからか、ものすごく可愛く見えるのは気のせいか?
しかし、少しだけ汚れてるな。旅してる時は毎夜、ブラッシングしていたから綺麗だったが…これはどこかで風呂に入らないといけないな、なんてことを考えていた。


存分に天馬に癒されてから…口を開いた。

「てか、契約破棄してなかったんだな」

『我が心から許すのはこれからもずっとリュートのみ。我の主はリュートだけだと、決めている』

心外だぞ、と天馬――クウトが俺に非難の声を浴びせる。
信用してなかったとかじゃないのだが、まさか死んだも同然の俺の契約が残っているとは思わなかった。
消えたやつのことなんて忘れて新しい契約者を探すのも有りだと思うし。

「俺と契約してる他の奴らはどうしてる?」

『む?繋がりは切れてはないはずだぞ。主と契約してる奴らは皆、クセが強いこともあるが。なにより、主に救われたヤツらばかりだ』

「救ったつもりないんだけどな…」

クウトの言葉に契約した奴らの出会いを思い出して苦笑いを浮かべる。
ただ目の前で苦しんでるやつを見捨てるなんてことが出来ないだけで、俺は普通の人間だから。



「今更だけど、久しぶりだな。元気だったか?」

『無論、変わりないぞ。主も相変わらずのようで何よりだ』

俺の胸元に顔を埋めてクンクンと匂いを嗅ぎながら言う。

こいつってこんな甘えキャラだったか?
どちらかと言うとクールな印象だった気がするんだが。

こうして俺に犬みたいに擦り寄ってくることは、旅をしてる時には無かった気がする。逆に愛玩動物みたいな扱いを嫌っていたような…。
余程寂しかったのか?なんて、クウトの性格から有り得ないこと思い浮かべてしまう。

『主?もっと撫でてくれ』

催促するように鼻先でグイグイとお腹当たりを押してくる。
その仕草が犬にしか見えないが、可愛いから良しとしよう。

「可愛がってやりたいのは山々なんだけど、ちょっと街まで連れて行ってくれないか?この森から出れなくて困ってたんだよ」

『………承知』

俺の言葉に不満あり気な表情を浮かべたが、渋々頷いてくれた。

どうやらまだ甘えたりないらしい。

仕方ない奴だな、と可愛く思いながら鼻先にチュと音を立ててキスを一つ落とした。

『あ、主!?』

ビクリと全身を震わせて後ずさると、視線を俺に向けた。

俺がキスしたことに相当驚いたらしい。
クウトは雄だから男(おれ)にこういう事をされるのは嫌がりそうだから、こういう事を今までしたことがなかったからかもしれない。
他のやつには結構していることだが。

「クウトが可愛かったから、つい」

『か、かわいい……?わ、我がか?』

素直に思ってることを伝えると、困惑の表情を浮かべて戸惑い始めた。

馬なので表情の変化は分かりにくいが、長年契約聖獣として側にいたからか、何となくクウトがどんな表情を浮かべているのか分かる。

こうも素直な反応をされると、ついイジメたくなってくる。

でもここでイジメて、クウトを怒らせてしまっては元も子もない。
気持ちを落ち着かせて、クウトに声を掛ける。

「クウト、悪いけど街の近くまで頼むな」


ゆっくり落ち着いたら、その時にまたからかう事にしよう。


『うむ。主、我の背に』

さっきの慌てぶりが嘘のように、いつものように俺が乗りやすいように膝を折ってしゃがむ。

「頼むな」

『承知』

クウトの背に乗り、手網を手に取る。
俺の状態を確認してから、クウトはゆっくりと翼を羽ばたか始めた。

久々の空を飛ぶ感覚にテンションが上がる。
久しぶりの飛行だからか、クウトはいつもよりゆっくりと飛んでくれている。

「クウトとこうしてまた空の旅ができるなんて、な」

『我もまさかまた主と旅できるとは、思っていなかったぞ』

嬉々とした声色で、本当に嬉しいという感情が伝わってきた。

「帰ってきたんだな…」

ニヤリと口角をあげて薄く笑みを浮かべて、ポツリと言葉を零した。

下に広がる広大な大地を見おろしながら、帰ってきたこと実感する。
日本ではこんなに自然が豊かなところなんて、殆ど無いからな。






俺のいた森は街からかなり遠くにあったみたいで、クウトに乗って20分ほどしたところに街があった。
クウトは最高位の聖獣のため、かなりの速度で飛ぶことが出来る。
つまり、人の足で歩いていたら2時間くらいはかかる距離だ。

クウトを呼んで良かった、と心の底から思った。

「クウト、ありがとな」

このままクウトに乗って街に降りたら大変なことになるのは目に見えているから、少し離れた場所で降ろしてもらった。

『主、もう少し主といたい』

「え?でも、お前を連れて街に入ったら大変なことになるだろ?」

『ム……』

クウトの言葉に首を横に振る。数匹と数が少ない最高位の聖獣を連れて街中を歩くのは流石にまずい。

俺の言葉にしょぼんと落ち込んでしまったが、こればかりは許可することは出来ない。


『主……』

覇気のない声に、クウトのひどく落ち込んだ表情に頭を抱えてしまう。

「あ!」

『主?どうされた?』

「最高位の聖獣って、人の姿にもなれたよな?」

一緒に旅をしていた時は人の姿になることが無かったから忘れていたが、確か最高位の聖獣は人の姿と獣の姿になれたはずだ。

『そう言えば……全くならないから我も忘れていた』

あっけらかんと言うクウトの姿に、飽きれながらもこれで街に入れると安心した。

「じゃ、さっさと人になって街に入るぞ」

『うむ、任せろ』

言うが早いかクウトは静かに目を閉じ――光がクウトを包み込む。

光が消えると、そこには1人の美青年がいた。
年齢は20代前半くらいだろうか?

「主、これで一緒に街に入れるぞ」

「……そ、そうだな」

違う意味で目立ちそうだが、クウトのキラキラと嬉しそうな顔を見たら嫌とは言えない。

白銀の短髪、鋭いアイスグリーンの瞳、スラリとした手足……これは女性が放っておかない容姿をしている。
左耳には白い羽のついた長いピアスをしている。

身長は……180くらいか?
176の俺より少し高いから、多分このくらいだろう。

「リュート?ほら、早く行こう」

いつの間にか名前で呼ばれていたが、主よりこっちの方があえて指摘はしない。
まるで仲間みたいで嬉しいから。

「あ、ああ」

思案していた俺の腕をクウトに引かれて我に返る。
俺の反応にクウトは首を傾げていたが、何でもないと伝えて街に入ろうと促す。
クウトはひとつ頷いて、それ以上詮索はしてこなかった。

漸く街で情報収集が出来そうだ。

“今”がどういう状況なのかを、まずは知るべきだからな。
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