“元”勇者がまた勇者として召喚されたけど…

青海 兎稀

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一章 再会の時

一章 再会の時 03

「また寄ってね、お兄さん!」

お姉さんに別れを告げると、頬を赤らめながら手を振ってくれた。
それに小さく手を振り返し、クウトに向き直る。

「クウト、お腹空いてるだろ?」

ほら、とさっき買ったクルの実を一つ渡せば素直に受け取り、もぐもぐと皮ごと食べ始めた。
もちろん、皮も食べれるぞ。


「なかなか良い情報が手に入った。これなら、勇者と合流もすぐ出来そうだな」

「うむ。しかし、現勇者はあまり好かれていなそうだな」

「そうなんだよなぁ……」

ついでにお姉さんに勇者の性格を聞いたところ、ワガママなお姫様みたいで勇者なのに守られて当然!って感じらしい。

俺ならそんなヤツ護りたくない……。
勇者なら逆に仲間だろうと護るものだと思うんだけど、もしかしてそう思ってるのって俺だけ?

「あ、なんで勇者が召喚されたのか聞くの忘れたな…」

「それは追々分かるんじゃないか?」

「んー……まあ、そうだな」

クウトは現勇者について、あまり興味が無いみたいだ。
多分、人間世界自体に興味が無いんだろう。
それにしても、無関心すぎるけどな…。

まあ、俺と契約する前まで人間のこと毛嫌いしていたから仕方ないか。

「まあ、合流すれば分かるだろうしな。クウト、北東の村まで頼めるか?」

クウトにばかり負担をかけることになるが、クウトなら気軽に承諾してくれるだろうな。

「うむ。リュートのためなら何処へでも連れていくぞ」

馬みたいな扱いになってしまっているが、いつも移動はクウトの背に乗ってしているからか、クウトもこの扱いに慣れてしまっているんだろう。


街を出る前に、旅に必要な食材や物を買い揃えておく。
前使っていた物が残ってるから、消耗品やら食料だけ買っただけだけど。

何が必要かよく分からなかったな…。こういうアイテム管理は全部フィルに任せてたからな。
フィルってのは愛称で、本名はフィルア・クレイグと言う。性格は冷静沈着で、治癒魔法が苦手で攻撃魔法が得意な魔法使いだ。
俺も一応治癒魔法、攻撃魔法も使えるが、苦手分野だ。その分、何故か召喚魔法は得意。
だから、契約してる数は多かったりする。

「結構買ったなー」

自分の荷物をしまってあるマジックボックスの中身を見ながら思う。

マジックボックスとは、ゲームでいうイベントリみたいなモノだ。
ただ、使える人は限られてるらしくて……今の所使ってる人と会ったことはない。







「ここまで来れば大丈夫かな。クウト、頼むぞ」

街を出て、街の姿が見えなくなった頃。
クウトを見上げて言えば任せろとばかりにコクリと一つ頷き、本来の姿に戻った。

やはり、人間の姿より聖獣(本来の姿)の方が好きだ。
人間の姿だとどうも落ち着かない。なんと言うか…綺麗すぎて。


「そろそろ夕暮れ時だ。少し急ごう」

「そうだな…。夜になる前には着けるように頼めるか?」

クウトの言う通り、空はオレンジ色に染まりつつある。
あと数時間で日が暮れるはすだ。

夜は魔物が活発になる時間のため、夜に出歩くのは危険行為だ。
――一般人にとっては、だが。

元勇者おれからしたら、全然脅威ではない。
だけど、出来れば戦闘は避けたい。戦闘になるとどうしても時間をロスしてしまう。
現勇者に追いつけなくなってしまうのは、それはそれで探すのがまた面倒になる。

「承知。少々荒くなるが、しっかりと我に掴まっててくれ」

「ああ、お前の荒い飛行も久しぶりだな」

「わ、我はそんな荒い飛行はしていないぞ!」

少し冗談交じりに言えば、クウトには珍しく狼狽えていた。

「冗談だよ。クウトはいつも俺に負担が掛からないように飛んでくれてるもんな」

頭をワシャワシャと撫でれば、クウトは気持ち良さそうな声をもらした。

「…っ、では、行くぞ」

静かに双翼を羽ばたかせ、現勇者の向かった村へと羽ばたいた。







数時間がたった頃、ようやく目的の村が見えてきた。
あの王国から結構離れているみたいで、結構時間がかかってしまった。
既に空は真っ暗になっている。
勿論、向かう途中で魔物との戦闘は避けられず、何回か戦うことになったが…この辺りの魔物は弱くて俺の相手では無かった。


「クウト、ありがとな。今日は流石に戻って休め」

「………あいわかった」

村の前でクウトから降りて還るように促せば、疲れてるからか渋々ではあるが頷いてくれた。

クウトを光が包み込むとーーー消えた。
クウトが還ったのを見送り、村へと足を進めた。


「さて、まだこの村にいるといいんだけど」

村の入口には兵士が1人おり、止められるかと思ったが…チラリと視線を寄越しただけで引き止められなかった。
どうやら王国と違い、村はそこまでセキュリティが強化されてはいないようだ。

まあ、当然と言えば当然かもしれない。村にまで王国ほどのセキュリティを作っていたら切りがないだろうし。

でも、これはこれで緩すぎる気がするのは俺だけか?

「ふぅ……考えても仕方ない、か」

自問自答しても答えなど出るわけがない。仲間と合流したら色々と聞かせてもらえばいいか。

早々と思考を切り替え、現勇者を探すことにした。


通りかかった村人らしき人に、声をかける。

「すみません、この村に宿はありますか?」

「おや、旅人ですか?今日は良く旅の方が訪れる日ですね」

「え?俺以外にもこの村に訪れてるですか?」

まさかの情報に、ドキリと胸が高鳴った。
それを面には出さず、きょとんと首を傾げて何も知らないふりを装う。

「ああ。今日の昼頃に男女数名の旅人が、今みたいに宿の場所を聞いてきたんだよ」

「そうなんですか!同じ旅人なら少し話してみたいな。…それで、宿はどこですか?」

「それならこの道を真っ直ぐ行って、武器屋を右に曲がったところにあるよ」

「分かりやすい説明、ありがとうございます」

お礼を言いながら軽く頭を下げて、教えて貰った宿屋に向かう。

どうやら、現勇者はこの村にいることは間違いなさそうだ。
案外早く合流できそうだ。安堵するが、それと同時に不安が心に入り混じる。

もしあいつらに拒絶されたら…俺はどうすればいいんだろうか。
拒絶されたら一生立ち直れる気がしないんだが…。別れ方が別れ方だけに。







「ここか」

村の宿屋だから小さいのかと思ったが、意外にも大きかった。
二階建ての木造で、それなりに部屋数もありそうだ。

扉を開けて中に入ると、カウンターに二人の男女がいた。
あまりにも2人が似ているから、パチパチと瞬きを繰り返してしまった。

「双子、か?」

「ええ、そうです。私はニーナで、こっちは弟のニールです」

「ジロジロ見んな。気持ち悪い…」

姉の方は人当たりが良さそうな笑みを浮かべて向かいれてくれたが、弟の方には暴言を吐かれた。
最初から睨まれていたが、初対面だよな?

「こら!お客さんに向かって失礼でしょ!……この人はさっきの人とは違うんだから」

姉のニーナが、パシリと弟であるニールの頭を叩いた。
小声だったけど、その声は確かに俺の耳にも届いていた。

“さっきの人とは違う”?どういう事だ?

「えーっと?」

無理矢理聞き出すのもアレだし、追究はしたくないが…気になる。
視線で、どういうことだ?と訴えたら、姉のニーナが気まずそうに教えてくれた。

「ごめんなさい。貴方と同じでこの宿に泊まりに来た人が、少し変な人で…。ニールも悪気があった訳じゃないの」

「別に俺は気にしてないから。宿屋だと変な人が多そうで大変ですね…」

何となくその“変な人”が誰か予想出来てしまった。
現勇者は一体何をしてるんだ?
しかも、双子の“弟”の方に手を出そうとするなんて…。
確かに2人とも美男美女だし、手を出しくなるなるのも分かるけどな。

「ニーナに手ぇ出そうとすんなよ!俺のことを変な目で見るのもやめろよ!」

「いや、出さないし。変な目でも見ないから安心しろよ」

俺が2人を眺めていたら、とんだ勘違いをされてしまった。
確かに美男美女であるが、どう考えても2人とも俺より若いだろう。俺は年下には手を出さない主義だ。
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