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一章 再会の時
一章 再会の時 04
「…それで、部屋ってまだ空いてるかな?一部屋借りたいんだけど」
「あ、はい!空いてますよ!これが部屋の鍵です。2階に上がったすぐ左手にある部屋がこの鍵の部屋です」
いい加減一休みしたいから、話を戻して鍵を受け取る。
それにずっとここにいるのも気まずい。
「………」
ずっとニールには母親の敵でも見るように睨まれていたが、相手にしてたら切りがないから無視して階段を上った。
◇
「やっと落ち着ける…」
借りた部屋は1人で過ごすには十分な広さだった。本来は2人用らしくベッドは二つあった。
腰につけている聖剣を外し、ベッドの上にポイっと置く。
他にもダガーナイフ、鞭などを外していく。
基本的に聖剣しか使わないが、とっさの対応にはダガーナイフとか小回りが利く武器が必要なため身につけている。
全部の武器を外し終え、ベッドに寝転ぶ。
「今日だけで色々とありすぎたな」
朝からの出来事を思い出して、色々と濃い1日だった、なんて思う。
「戻ってきたんだな……やっと、みんなに会える」
今現在、同じ宿の下にいる。その事実だけに感情が湧き上がってくる。
早く会いたい、と。
「今日は風呂に入って寝るか」
流石に夜も遅いから、今から勇者の下に行くのは辞めた方がいいだろう。流石に迷惑がかかる。
どこの国でも村でもちゃんと一部屋に1個、風呂とトイレが付いている。
これは俺がこの世界に来たときからだが、とても有難い。
旅をしていたら野宿なんて当たり前だから、外じゃ近くの川とかで汗を流す事くらいしか出来ないから。
流石に湯を張る気にはならず、シャワーを浴びるだけにした。
シャワーを浴びたらどっと疲れが押し寄せてきたのか、急激な眠気が襲ってくる。
念の為、結界を張っておく。
寝てる間に奇襲なんてされたら確実に死ぬからな。
電気を消し、ベッドの中に潜り込むと同時にすぐに眠りについた。
◇
「………ん、?」
ゴソゴソと微かだが音が聞こえて、うっすらと意識が浮上する。
モゾモゾと蠢く何かは、俺の足元辺りで何かをしているようだ。布団に隠れているため、姿は見えないが。
「……!?」
ペロリと何かに足を舐められ、ぞわりと鳥肌が立つ。
意識を結界に向けるが、結界が破られた気配はないから、俺に敵意を持っている者ではないようだ。
――つまり、俺と顔見知りということになる。
「…………」
気配に意識を向け、探ってみるとーー懐かしい気配を感じた。
ーーああ、お前か。
なんて、納得してしまうほど、すぐに誰か分かってしまった。
俺に対して、このスキンシップはいつものことなんだ。ただ、久々過ぎて驚いてしまったが。
モゾモゾと足元から上に這い上がってくる気配に、どうやら俺が目を覚ましたことに気づいたようだ。
布団から出て、俺の顔の両脇に手をつき、見下ろしてくる。
サラリと濃い紫色の髪が垂れ、俺の顔に触れた。
「ルゥ」
静かに、名前を呼んだ。
ルゥとは愛称で、本当の名前はルシアン・クラリスと言う。
元暗殺者で、俺もルゥに命を狙われた経験がある。気付いたら、忠犬のように懐かれていたが。懐かれた話は、また機会があればしよう。
最後……俺が魔王を倒しに行く時にはいなかった存在だ。
それはルゥはまだ10歳と若く、殺伐とした旅に連れ回すのは酷だと思ったから、街に留まるように説得したから。
一番の理由は、平穏な暮らしをして欲しかったからなんだけどな。
ポタポタと、顔になにか冷たいものが当たり、顔を上げればルゥが静かに涙を流していた。
「リュート樣………いなくならないで」
弱々しく呟かれた言葉に、顔を歪めた。
どうやら相当寂しい思いをさせてしまったようだ。
本当なら魔王を倒した後に迎えに行く予定だったから。
「ルゥ、ごめんな」
頭裏に両腕を回し、胸元にルゥの顔を引き寄せ、落ち着かせるように頭をポンポンと撫でた。
静かな空間に啜り泣く声だけが響いていた。
落ち着くまで頭を撫で続けていると、俺の胸元に埋めていた顔を少しだけ上げて、気まずそうに俺を見上げてきた。
「リュート樣……ごめんなさい…」
「何がゴメンなんだ?謝るなら俺の方だろ。約束守ってやれなくてごめんな」
「寂しかった、です……」
グリグリと顔を胸元に押し付けて、まるで子供が親に甘えるような仕草に、ついクスリと笑みを零す。
久々の再会だが、ルゥは変わらず甘えたさんだな。
「ルゥはどうしてここにいるんだ?」
「フェリンダで見つけて、追いかけてきた」
「フェリンダって…王都にいたのか?なら声を掛けてくれれば良かったのに」
フェリンダは、俺がこの世界に戻ってきて最初に行った国の名前だ。
「声掛けて違う人だったら、殺しちゃうから…」
しゅんと子供らしく眉を下げて落ち込むが、言ってることが物騒すぎる。
表情と言葉があって無いのは、いつものことであるが…。
俺が本物のリュートである確信が無かったから、ここまで追ってきたんだろう。
「それで、いつ俺が本人だと確信したんだ?」
「クウトに乗って行ったから、分かった」
「あーなるほど…。てか、お前よくここまで辿り着いたな。俺はクウトに乗ってたから早く着いたけど…」
「騎獣に乗って、さっき着いた」
「…………詳しい事はまた明日話そう。今日はもう寝るぞ」
「ふぁい」
ルゥは俺の言葉に首をかしげたが、特に気にした素振りも見せず、ピトっと俺の胸の上で横向きになると瞳を閉じーー寝息をたてて寝始めた。
ルゥは俺に絶対嘘はつかない。つまり、ずっと今さっきまで騎獣で夜通し走ってきたことになる。疲労が溜まっていないわけが無い。
だから、今は休ませることにする。
色々と話を聞きたいところではあるが。
「スー……スー……」
やはり疲れていたのか、ルゥはもう深い眠りについている。
こうしてルゥと寝るのも随分と久しぶりだ。
俺の上で何の抵抗もなく寝始めた時は驚いて突き飛ばしたこともあったが…。
ルゥはこうやって気を許した者には無防備な姿を見せる。
俺からしたら、無防備すぎて心配になることの方が多いけどな。
「ゆっくり休め」
月明かりがカーテンの隙間から零れ、ルゥの寝顔を照らした。
暗闇で気づかなかったが、ルゥの目元に濃い隈が出来ていた。
俺がいない間、ルゥはどうやって生活していたんだろうか…?
こうしてルゥが1人で俺のもとに来たのも変だし。
確認したいことは山ほどあるが、今は……。
「俺も寝るか」
ルゥの頭をふわりと撫でてから、ルゥを抱きしめたまま寝ることにした。
◇
ツンツンとほっぺをつつかれる感覚に、ゆっくりと目を開ける。
「リュート樣!」
先に目を覚ましていたルゥが俺が起きるのを待っていたようで、嬉しそうにニパっと満面の笑みを見せた。それはもう恋人に向けるような甘い笑みだった。
「ルゥ、おはよう」
「おはようございます、リュート樣!」
ルゥの目元を親指で優しく撫でる。
まだ薄らと隈が残っているが、昨日より大分良くなった。
その事実にホッと胸を撫で下ろす。
ルゥは俺の手にスリスリと、気持ち良さそうに擦り寄ってくる。
こうしてると普通の男の子なんだよな。
「よく寝れたか?」
「リュート樣がいるから、寝すぎちゃいました」
テヘヘと照れくさそうにしているが、時間を見るとまだ朝の7時だ。俺よりも1時間くらい早くは起きているはずだから…3時間も寝れてないだろう。
「ルゥ、もう少し寝てな。別に急いでないから、早く起きる必要なんてないから」
優しく言い聞かせるように口を開けば、ルゥはしょんぼりと落ち込んでしまった。
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