女性が全く生まれない世界とか嘘ですよね?

青海 兎稀

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一人で情報を整理する必要があるようです

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「では、私たちは一旦失礼しますね。ユヅキお疲れでしょうから」

「また昼食の時に呼びに来ます」

リーリエが気を使ってくれたのか、そう言って、ヴェルアとランディを連れて部屋の外へと出て行った。

「ランディは全然喋ってくれなかったなぁー。でも、ずーっと私の事見てた、気がするんだよね」

最初の自己紹介からかあんまり喋らず、ジッと私を見つめるだけで……その、熱すぎる目線に流石の私も気づいていたんだけど、なんて声を掛ければいいのか分からなくて、そのままスルーしてしまったんだけど。

こう、イケメンに熱を含んだ目で見られることが全くないから、どう反応すれば良かったのか…。


「起きてから、色々とありすぎて疲れた……」

椅子から立ち上がって、ぽふりとベッドにダイブする。
そう言えば、まだ顔洗ってないことを思い出す。
さっきリーリエが部屋の説明もしてくれたので、洗面所の場所も把握済みだ。
何故かこの部屋には、バスルーム、トイレ、洗面所があるとのこと。まるでお姫様が住むような部屋に最初は呆然としてしまったが、女性が住む家では、これが当たり前らしい。
どうやら、過去に何か過ちを犯す人がいたとのこと…リーリエは遠まわしに言っていたが、つまりはこういう事だろう。

「顔洗うついでに、シャワーも借りようかな」

リーリエにはここで一緒に住むことに同意したが、いきなりお風呂を借りなんて、我ながら図々しいなぁと思いながら、少しながら汗もかいており、身体がベトベトしているのが気になって仕方ない。

「よし、入ろうっと」

ベッドから起き上がってバスルームへと続く扉を開け、扉に鍵をかけてから服を脱いだ。
清潔に保たれているバスルームで、シャワーを浴びていく。
最初、使い方が分からなくて困ったけど、この世界ではシャワーはボタン式らしく、二つのボタンがあり、一つのボタンを押せば水が出て、もう一つのボタンを押せばお湯が出る仕組みらしい。
これは簡単で、私でもすぐに理解できた。


シャワーを浴びながら、さっきの情報をまとめていく。

女性が全く生まれなくなって、数百年が経っている。
どうして生まれなくなったのか…理由は、未だわかっていないらしい。
そして、今現在98%が男性で、後の2%が女性とのこと。
しかもその2%の女性は、王族が作った学校に通って、その学校に通っている貴族か王族と結婚しないといけないらしい。
それに加え、一妻多夫制が認められているらしく、最低でも2人以上と結婚しないといけないらしい。

なんというか…現実離れしすぎている。
何で最低でも2人以上と結婚しないといけないのか…。
しかも、上限はないらしい。

「ふぅー……」

ボタンをもう一度押して、シャワーを止めて髪を掻き上げて、後ろへ流す。

「色々考えても仕方ないよね…。今は流れに身を任せようかな」

バスルームから出て、置いてあった真っ白なバスタオルで身体を拭いていく。
ふわふわとしていて、触り心地は最上級だ。

「あ、着替えないじゃん!」

着替えがを探すが、あるわけもなく…仕方なくバスタオルを巻いて部屋へ戻った。
しばらくバスタオル一枚でゆったりと過ごしていた時――トントンと控えめに扉をノックする音が響いた。


「はーい!どうぞー!」

「失礼いたします、お着替えをお持ちいたし……ユユユ、ユヅキ!?」

「あ、ごめんなさい!見苦しいものを…」

入ってきたのはヴェルアで、私の格好を見て顔を真っ赤にして顔を逸らした。
どうやら、服を持ってきてくれたようで、ヴェルアの手には真新しい薄い水色の服があった。

「い、いえ…そ、そのような格好で男を招き入れるのは……そ、それより早くお着替えください!」

外に出て待ってますので!と言うと、服を棚の上に置いてさっさとヴェルアは出て行ってしまった。
あまりの貧相な身体で見るに堪えなかったのかな…。だとしたら、すごいショックなんだけど…。

「とりあえず…着替えようかな」

折角持ってきてくれたんだし、有り難く気さえてもらおう。
服を手に持って広げてみたら、それは薄い水色のワンピースだった。
腰には大きなリボンが付いており、とてもシンプルな感じで、私の好みなデザインだ。

早速着替えて、外で待っているであろうヴェルアに声を掛けた。

「ヴェルア?もう入って大丈夫だよ」

「――失礼いたします」

ヴェルアは緊張した面持ちで顔を覗き込ませ、私が服を着ていることにホッと胸を撫で下ろして、部屋の中に入っていた。

「ユヅキ、男性の前で、さっきのような無防備な格好は避けてください。下手をすれば、襲われる可能性があるんですから…」

「うっ……そんなに怒らなくても…」

「ユヅキ……女性であることを自覚してください。女性が男の前で肌を晒すなんて…襲われても文句言えないんですよ?」

「フフッ…ヴェルアって……お母さんみたい」

私の反応にムスっとした顔をし、言い含めるように話されて、なんだかその様子が母親にそっくりで…つい笑ってしまった。

「私が、母親…ですか?母親とは、私みたいな感じなのでしょうか?」

「うん。そうやって心配してくれるとことか」

「そう、なんですか…。この世界で生まれた男は、母親の存在を知らされないので。だから、母という存在がどういうモノなのか未知な存在なんですよね」

私の言葉に何やら考える素振りを見せ、どこか寂しそうな顔をしたが、それは一瞬のことで、すぐにいつものように素敵な笑みを浮かべた。

どうやら触れてはいけない話題だったらしい…。
というか、母親の存在を知らずに育つんだ…なんていうか、寂しい世界だな、という印象だ。



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