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4話目
しおりを挟むタイミングを計っていたのか、ラフィンが達するのと同時に一人の男性が無遠慮に入ってきた。
「レイ様、お帰りになられていたなら一言声をかけてくださいと何度言わせるんですか?」
「ラフィンと久々に触れ合ったんだ、少しくらいいいだろう、ルシア?」
「………もういいです。ラフィン、さっさと着替えて傷の手当をして貰いなさい」
「あ、すみません!レイ様、一旦失礼します」
躊躇無く俺のを抜くと、ペコリと頭を下げてスタスタと大浴場から出ていった。
………つまらん。久々にイチャイチャ出来ると思ったのに。
「レイ様、むくれてないでさっさと貴方も着替えてください」
「ルシア、お帰りのキスがまだだが?」
ルシアは目頭を押さえて、深いため息をついた。
徐ろに眼鏡をかけ直して、スタスタと早足に近づいてくると、クイっと俺の顎を持ち上げて軽いキスをしてきた。
「これで満足ですか?なら、さっさとしてください。貴方が勝手にラフィンを迎えに行ったことによって、皆が憤っているんですから」
「そんなに、むくれるな。お気に入りが嵌められて放置など出来るわけないだろう?それに、お前がラフィンと同じ目にあっても俺は自分の意思で、お前を助けに行くよ」
さっさと俺から離れて踵を返すルシアの手を掴む。
「……私がそんな言葉で騙されると思ってるんですか?」
振り返らずに発された言葉は震えていた。
「いつも心配かけて、悪いな」
湯船から腰をあげてルシアの腕を引っ張り、引き寄せる。
トンと、俺の胸板にルシアの顔が当たった。
「泣くな」
「なっ!?な、泣いてません!!」
慰めるように頭を撫でながら口を開けば、即行で否定されてしまった。
素直になれないルシアは、いつもこんな感じで俺の言葉を否定する。
もっと自分を素直に出してくれれば、可愛げがあるんだがな。
まあ、これがルシアの可愛いところでもあるが。
「ルシア、俺を見ろ」
「イヤです」
「そんな強気な態度を取られると……虐めたくなるだろ」
片手で服を脱がしていけば、ルシアは俺の行動を止めようとギュッと手を握ってきた。
「っ!?レ、レイ様!今はダメですッ!皆、貴方を待ってるんですからッ…!」
「なら、今はコレで我慢しておこう」
言うと同時に、ルシアの項(うなじ)に吸い付く。しばらくルシアの項にキスマークを何個も付けてから、チュッと音を立てて顔を離した。
「レイ様……私で遊ばないでください。それに、キスマークなんて……見える所には付けていないですよね?」
ギロっと睨んでくるが、俺よりも身長が低いせいで上目遣いてま見上げているようにしか見えない。
キスマークは、首が隠れる服じゃないと丸見えだが、俺のモノだと主張出来るから気持ちがいいな。
ルシアには気づくまで黙っておこう。
「上気した顔で睨まれても怖くないぞ。それと、俺以外にその顔を見せるなよ」
「貴方だけですよ。私の乱れた姿を見たいって言う物好きは」
「なら、今夜はルシアとラフィンの2人と寝ることにしようか」
「冗談はいいですから、早く上がって大広間に来てくださいね」
スッと俺から離れて素早く浴場から出ていってしまった。
どうやらからかいすぎたらしい。
最後のは決して冗談ではなかったんだがな。
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