瑠璃の誘惑。メロンパンの誘惑。

本宮 秋

文字の大きさ
9 / 19
第2章 憂虞、高揚、危機

第4話

しおりを挟む
 石探しを始めた時とは違い、だいぶ重装備になって来た。赤い橋の入り口にスクーターを止め、買ったばかりのウェーダーを履く。ウェーダーの底は滑らない様になっているので安心して川の中に入って行ける。防水加工のリュックを背負い、川の流れと共に下流へ歩いて行く。
昨日は、川岸を歩いていた。川岸といっても岸などほぼ無く、せり出した木々を掻き分けながら苦労しながら下った。

ところが今日は…… 堂々と川の中を歩いて行ける。流石に水量の多い川なので川の中心には入っていけないが、邪魔な木々を掻き分ける事なくジャブジャブと浅瀬を進む事ができた。

あっという間に昨日、黒曜石が取れた小さな川原迄来る事が出来た。

「初めからナカさんの言う通りにすれば良かった」

こんなに楽だったとは……
やっぱり経験者、年長者の言う事は大事なんだと思った。
昨日黒曜石を取ったばかりなので、この小さな川原は軽くスルーして先に進む。

この川原を機に、両サイドが狭くなり始め、崖の様な渓谷の様な雰囲気に。
当然、川も狭くなる為より水量が多く流れも速くなる。

川の中を歩いても、常に端の方に目を配りしっかり黒曜石も探す。
何だか、目も慣れてきたせいかすぐ近くでは無くても見える様になってきた。

と、目前にあの大きな岩、

昨日、あの岩の上でメロンパンを食べ…… そして僅かな物音にビビった場所。
大きな岩を前にし、とりあえず上で休憩かなと思い登ろうとした時、岩の下に黒曜石が。

「こんな所に、隠れる様に。
どれどれ~~」

手に取り、

「えっ、何だ? この色は…… 」

真ん丸な形の黒曜石だか、外側の一箇所に緑色っぽい薄い筋が見えた。

「苔かな? 藻かな? 緑色だよな。中まで緑色が残っていれば…… 面白いんだけど」

とりあえず大きな岩に登りリュックからハンマーを取り出す。
まずハンマーで割る前に岩に緑色の部分を擦ってみた。
擦った所を目を凝らして見ると……

緑色が…… 残ってる。

それどころか…… 緑色だけでは無く…… 薄い青っぽい色が。
少し石を持つ手が震えた。

「とうとう…… 出たかも…… 」

一呼吸入れ息を整え、ハンマーを握る。
飛び散らない様、リュックや自分の足で黒曜石を囲みハンマーを振り下ろす。
力が入り過ぎて石が何処かに飛んでいかない様、加減しながら何度もハンマーを振り下ろす。

綺麗に半分に割れた。

半分に割れた黒曜石の一つを手に取る。
薄っすらと緑? 青? の色が見えなくも無い。ただ薄い。黒いガラス越しに薄っすら。
もう片方の割れた石を見ると…… 黒い。

どうやら片側の端っこの方に、色が入っている様だ。

「ん~~。どうするべきか。ここでこれ以上割るのはやめた方が良いかな? 」

一度、ナカさんの家に持って行って割る事にした。

「ヤバイ。どうしよう『瑠璃』だったら」

『瑠璃黒曜』を探していたのに、いざそれらしい石を見つけたら急にあたふたし困惑してしまった。
薄っすら色がある石を太陽にかざし、よくみて見る。

その時…… 強い風が吹いた。

石をじっくり見ていた時だったので、ホコリなのか石に付いていた砂なのか、分からないが目に入った。
目がショボショボする中、黒曜石はしっかり握っていた…… が、つい足を後ろに一歩下がってしまった。
と、岩の小さな凹凸にバランスをとられ…… 訳が分からないまま後ろ向きに川に落ちた。
あまりの一瞬の出来事に何も出来ないまま落ちた。

川に落ち、まず思った事。

黒曜石を握り続ける事。

しかしそれよりも大変な事が……
ウェーダーを履いていた事。

川歩きには便利だが、川に落ち水が入ると…… ヤバイ。動けない、沈む、命を…… 落とす。
それに気付き慌てて脱ぐ。
だが脱げない。パニックになった。
駄目だと思ったが、背中から落ち身体がくの字だったので、足の部分に空気が溜まっていて片足だけ浮いていた。
浮いた片足を上にあげ続けながら必死に泳ぐ。というより藻搔いた。
今迄の人生で一番必死になって、藻搔いた。おかげで川の端の方まで来れたが、流れが強く立てない。浮き輪がわりの片足も怖くて下げられない。

と、頭上に…… 橋。

「えっ! ヤバイ白い橋。越えてしまった」

ここからは両岸は渓谷。
登れる所も掴まれそうな物も無い筈。
何度も手に握りしめていた黒曜石を離そうとしたが、出来ずにいた。
ただ流されるだけ。

本当にヤバイと思い、黒曜石を手放そうと決心した。

「クソ! せっかく…… 手にしたのに」

命あっての『瑠璃黒曜』。
そう思い石を手放そうとした時、目の前に掴まれそうな岩。
崖の様な川岸に突如、切れ目が。
垂直な崖と崖の間に切れ目があり、岩や木が崩れ落ちていた。僅かな隙間だけ崖崩れがあったのか。
おかげで川の中にも岩が落ちていて、その岩に掴まる事が出来そうだった。
ただ相変わらず流れがキツイ。岩に身体毎ぶつかる様にして、何とかしがみ付いた。

本当に死ぬ思いを味わった。おかげで息が落ち着かない。心臓もドキドキが止まらない。
水が入り重たくなったウェーダー。
岩に登れない程、下半身が重い。仕方なく下半身が水に浸かった状態のままウェーダーを脱ぎ捨てた。
あっという間にウェーダーは流されて行く程の流れ。あんなに重いのに沈まずに流されていった。今日買ったばかりのウェーダー。でもしょうがない、命には変えられない。
岩場に上がり四つん這いのまま、ゼエゼエと言いながら助かった事を実感したが…身体は震えていた。

ギリギリで手放さなかった黒曜石。
四つん這いの顔の前にあった窪みに黒曜石を置いた。

「よかった、助かって…… 石も手放さなくて…… 本当によかった」

ホッとして黒曜石を見る…… と石の先に何かが視線に入った。
黒い…… 毛⁈ の様な、例えるなら…… 動物の毛の様な。

黒い毛の動物の足が見えた。


第4話    終
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

秘書と社長の秘密

廣瀬純七
大衆娯楽
社内の調査のため、社長・高橋健一はこっそり秘書・木村由紀と不思議なアプリで入れ替わることに。 突然“社長役”を任された由紀と、自由に動ける立場を手に入れた高橋。 ふたりの秘密の入れ替わり作戦は、どの様な結末になるのか?

雪嶺後宮と、狼王の花嫁

由香
キャラ文芸
後宮に降る雪は、呪いではなく嘆きだった。 巫女として献上された少女セツナは、 封じられた狼王の“花嫁”としての前世を思い出す。 人と妖、政と信仰の狭間で、 彼女が選ぶのは従属ではなく均衡。 雪嶺を舞台に描く、異種婚姻×後宮伝承譚。

処理中です...