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《┈第一部┈》過去編~1~
2、
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はぁ────。
荷物を運ぶ霧島が、疲れを感じ、ため息を着く。
彼は没落貴族の霧島家の主人だ。
明治時代では、霧島家は有名な財閥だったが、大正になる頃には、落ちぶれ、今ではかなり貧しい。
昭和二年に娘を失ってからは、街に、日雇いの出稼ぎに来ていた。
一か月前まで、疲れを感じる事がなかった荷物を運ぶ仕事───一週間前からは疲れを感じるようになっていた。
霧島は、体力が弱くなったと感じた。ただの疲労だろう。彼はそう思い、気にしないことにした。
それから一ヶ月が経つ頃、疲れが深刻化し、しばらく仕事を休むが、体調は改善されず、娘が死した病院
────佰神台病院に掛ることを決める。
その頃、山神地区では感染症が流行しており、病院は混雑していた。
病院に向かうも、診察を断られ────診察を受けられたのはそれから四ヶ月後のことだ。
診察を受けるも、原因ははっきりせず────彼は確信した。
霧島家の者が早逝するとき、多くの死因は衰弱だ。
死因は、皆衰弱と言われているが、普通ではない。通常の衰弱とは異なり、皆苦悶に満ちた表情で、絶命するのだ。
女性の次は男性、その次は女性────霧島家のものは男女交互に衰弱に生涯を閉じた。
不可解な死は桐島家に恐怖を与える。
霧島は思った。
────私も衰弱に生涯を閉じるのかもしれない──
思えば、霧島の母も、若くして衰弱に生涯を閉じていた。そして娘も────
霧島はなにか手がかりを探そうと、かつて、娘や妻と暮らした家へ向かった。
電車を乗り継ぎ、家へ向かう。
割れた窓には明かりが灯っていない。
吸い込まれそうな暗闇に、嫌な予感を抱く。
ガラーッ────
木の扉を開けると、
シーンと いう静寂が返ってきそうなもぬけの殻がそこにはあった。
「夜永────?」
妻の名前を呼ぶも、帰ってくるのはやはり静寂だ。
どこに行ったのだろうか。
物置部屋に入れば、探していたそれは、呆気なく見つかった。
黄ばみ、端の敗れたそれは、彼の母の手記だ。
初めのページを開くと、霧島は息を飲む。
──── この家系は呪われています。
家系図をたどってください────
走り書きの文字でそう書かれていた。
次のページを開くと────黒ずんだシミのような文字でこう書かれていた。
―たすけて―
パサリッ
黄ばんだ、紙が手記からこぼれおちる。
そして、宙を舞って、開いた状態で、落ちた。
それは家系図だった。
霧島はそれを拾い上げる。
それは血に汚れ、文字が読めない。
しかし、家系図の一番上の名前だけは、確認できた。
それは、霧島財閥最盛期の当主の名前だった。
彼は、狂った冷酷な主人と呼ばれていたという。
霧島の母は────千夜は彼のことを調べろと警告していたのだろうか。それとも、今や血塗られた、他の人々を調べさせたかったのだろうか。霧島は考えをめぐらせた。これでは手がかりが少ない、そう思い暫く、物置部屋を物色する。
しかし、特に、何も出てこず、霧島は落胆し、駅へ向かった。
ガタンゴトン
二時間汽車に揺られ、街に止まる。
彼は汽車をおりると、重い足取りで、家に向かう。
手には手記が握られていた。
荷物を運ぶ霧島が、疲れを感じ、ため息を着く。
彼は没落貴族の霧島家の主人だ。
明治時代では、霧島家は有名な財閥だったが、大正になる頃には、落ちぶれ、今ではかなり貧しい。
昭和二年に娘を失ってからは、街に、日雇いの出稼ぎに来ていた。
一か月前まで、疲れを感じる事がなかった荷物を運ぶ仕事───一週間前からは疲れを感じるようになっていた。
霧島は、体力が弱くなったと感じた。ただの疲労だろう。彼はそう思い、気にしないことにした。
それから一ヶ月が経つ頃、疲れが深刻化し、しばらく仕事を休むが、体調は改善されず、娘が死した病院
────佰神台病院に掛ることを決める。
その頃、山神地区では感染症が流行しており、病院は混雑していた。
病院に向かうも、診察を断られ────診察を受けられたのはそれから四ヶ月後のことだ。
診察を受けるも、原因ははっきりせず────彼は確信した。
霧島家の者が早逝するとき、多くの死因は衰弱だ。
死因は、皆衰弱と言われているが、普通ではない。通常の衰弱とは異なり、皆苦悶に満ちた表情で、絶命するのだ。
女性の次は男性、その次は女性────霧島家のものは男女交互に衰弱に生涯を閉じた。
不可解な死は桐島家に恐怖を与える。
霧島は思った。
────私も衰弱に生涯を閉じるのかもしれない──
思えば、霧島の母も、若くして衰弱に生涯を閉じていた。そして娘も────
霧島はなにか手がかりを探そうと、かつて、娘や妻と暮らした家へ向かった。
電車を乗り継ぎ、家へ向かう。
割れた窓には明かりが灯っていない。
吸い込まれそうな暗闇に、嫌な予感を抱く。
ガラーッ────
木の扉を開けると、
シーンと いう静寂が返ってきそうなもぬけの殻がそこにはあった。
「夜永────?」
妻の名前を呼ぶも、帰ってくるのはやはり静寂だ。
どこに行ったのだろうか。
物置部屋に入れば、探していたそれは、呆気なく見つかった。
黄ばみ、端の敗れたそれは、彼の母の手記だ。
初めのページを開くと、霧島は息を飲む。
──── この家系は呪われています。
家系図をたどってください────
走り書きの文字でそう書かれていた。
次のページを開くと────黒ずんだシミのような文字でこう書かれていた。
―たすけて―
パサリッ
黄ばんだ、紙が手記からこぼれおちる。
そして、宙を舞って、開いた状態で、落ちた。
それは家系図だった。
霧島はそれを拾い上げる。
それは血に汚れ、文字が読めない。
しかし、家系図の一番上の名前だけは、確認できた。
それは、霧島財閥最盛期の当主の名前だった。
彼は、狂った冷酷な主人と呼ばれていたという。
霧島の母は────千夜は彼のことを調べろと警告していたのだろうか。それとも、今や血塗られた、他の人々を調べさせたかったのだろうか。霧島は考えをめぐらせた。これでは手がかりが少ない、そう思い暫く、物置部屋を物色する。
しかし、特に、何も出てこず、霧島は落胆し、駅へ向かった。
ガタンゴトン
二時間汽車に揺られ、街に止まる。
彼は汽車をおりると、重い足取りで、家に向かう。
手には手記が握られていた。
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