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《┈第二部┈》第二章
《千枝子》
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後悔が、脳裏を駆け巡る。目の前には、今朝同様青ざめた顔の汐梨が立ち尽くしていた。心臓はドクンドクンと鼓動する。しおりが、ハッとした表情になり、肩をふるわせた。
そっと頭を下げると、彼女は走り出した。今朝も、聞こうとしたら逃げられた。わたしの心の中で、疑問は確信に変わりつつあった。ドアを締め、わたしは歩き出した。会社のビルを出ると、雨の匂いが鼻をつく。雨上がりのどんよりとした空気は、まるでわたしの心を映し出しているようだった。
じっとりと水を孕んだ空気がわたしに纏わりつき、心を暗く染める。いっそ、時が朝彼女と出逢う前に戻れれば良いと、叶うはずの無い願いが脳裏を巡る。しかし、わたしは気になっていた。彼女が憑依されているのかを。汐梨の前には美湖、その前にも沢山の人の様子がおかしくなった。汐梨の様子と、過去の人々の様子は、あまりに似ている。汐梨が憑依されたのだとすれば、もしかすると美湖達もそうなのかもしれない。
何故なのだろうか。「憑依」かもと思っていたが、現実で憑依などあるのだろうか。わたしは信じられない。しかし、あの様子を見ると、自然と「憑依」という言葉が浮かんでしまう。わたしはいつから、「憑依」だなんて考えるようになったのだろう。ふと記憶が、脳裏に浮かんだ。
二年前───。わたしは浦町ニュータウンに転勤になった。ここは半年前にできたニュータウンだと言う。
目の前に、新築と思われるビルが聳え立つ。わたしは、緊張と希望を胸に、自動ドアに手をかざした。
目の前には明るいエントランスが広がり、わたしは息を飲む。エレベーターに乗り込み、指定された階へ向かう。軽快な音とともに、エレベーターの扉は開き、オフィスの扉の前に降り立った。
ガラ────ッ
扉を開け、オフィスに、足を踏み入れる。そこに広がるのは、近代的で快適そうな、美しいオフィスだった。課長だという男性が、わたしを席に案内し、仕事を説明した。わたしは、新しい環境に安堵し、仕事を始めるのだった。
昼休みになり、社員の半数が、昼食をとりに、オフィスを後にした。わたしは、持ってきていた弁当を開き、食事を始めた。食事の時間が終わると、わたしは仕事に戻った。分からないところがある。先程の課長に聞こうと、彼の席に向かい、声をかけた。振り向いた彼の顔には、困惑の色が浮かべられていた。
忙しかったですか?とわたしがとうが、課長は俯くだけだった。迷ったが、聞けそうな人は彼しかいない。わたしは勇気を出し、質問した。
「わたしは、やった事ないので分かりません……。」
予想外の言葉が、彼から発せられた。話し方も、先程の彼とは、違っていた。わたしは困惑しながらも、席に戻るのだった。
課長がおかしくなり、一年が経つと彼はこの世を去った。衰弱死だったという。彼の死から数日後、わたしは噂を聞いた。彼は、苦悶に満ちた顔をうかべ、息絶えたのだと言う。それからも、変死は相次いだ。
数回目の変死で、わたしは憑依を疑うようになった。
ふと我に返る。そしてわたしは重い足取りで、帰路に着くのだった。
そっと頭を下げると、彼女は走り出した。今朝も、聞こうとしたら逃げられた。わたしの心の中で、疑問は確信に変わりつつあった。ドアを締め、わたしは歩き出した。会社のビルを出ると、雨の匂いが鼻をつく。雨上がりのどんよりとした空気は、まるでわたしの心を映し出しているようだった。
じっとりと水を孕んだ空気がわたしに纏わりつき、心を暗く染める。いっそ、時が朝彼女と出逢う前に戻れれば良いと、叶うはずの無い願いが脳裏を巡る。しかし、わたしは気になっていた。彼女が憑依されているのかを。汐梨の前には美湖、その前にも沢山の人の様子がおかしくなった。汐梨の様子と、過去の人々の様子は、あまりに似ている。汐梨が憑依されたのだとすれば、もしかすると美湖達もそうなのかもしれない。
何故なのだろうか。「憑依」かもと思っていたが、現実で憑依などあるのだろうか。わたしは信じられない。しかし、あの様子を見ると、自然と「憑依」という言葉が浮かんでしまう。わたしはいつから、「憑依」だなんて考えるようになったのだろう。ふと記憶が、脳裏に浮かんだ。
二年前───。わたしは浦町ニュータウンに転勤になった。ここは半年前にできたニュータウンだと言う。
目の前に、新築と思われるビルが聳え立つ。わたしは、緊張と希望を胸に、自動ドアに手をかざした。
目の前には明るいエントランスが広がり、わたしは息を飲む。エレベーターに乗り込み、指定された階へ向かう。軽快な音とともに、エレベーターの扉は開き、オフィスの扉の前に降り立った。
ガラ────ッ
扉を開け、オフィスに、足を踏み入れる。そこに広がるのは、近代的で快適そうな、美しいオフィスだった。課長だという男性が、わたしを席に案内し、仕事を説明した。わたしは、新しい環境に安堵し、仕事を始めるのだった。
昼休みになり、社員の半数が、昼食をとりに、オフィスを後にした。わたしは、持ってきていた弁当を開き、食事を始めた。食事の時間が終わると、わたしは仕事に戻った。分からないところがある。先程の課長に聞こうと、彼の席に向かい、声をかけた。振り向いた彼の顔には、困惑の色が浮かべられていた。
忙しかったですか?とわたしがとうが、課長は俯くだけだった。迷ったが、聞けそうな人は彼しかいない。わたしは勇気を出し、質問した。
「わたしは、やった事ないので分かりません……。」
予想外の言葉が、彼から発せられた。話し方も、先程の彼とは、違っていた。わたしは困惑しながらも、席に戻るのだった。
課長がおかしくなり、一年が経つと彼はこの世を去った。衰弱死だったという。彼の死から数日後、わたしは噂を聞いた。彼は、苦悶に満ちた顔をうかべ、息絶えたのだと言う。それからも、変死は相次いだ。
数回目の変死で、わたしは憑依を疑うようになった。
ふと我に返る。そしてわたしは重い足取りで、帰路に着くのだった。
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