浦町ニュータウン~血塗られた怪異~

如月 幽吏

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《┈第二部┈》第三章

《霧島》

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恐ろしい。会社に行けば今度こそ、千枝子に真相が知られるだろう。
ピンポーン
今日もチャイムが鳴らされ、私は蹲り、相手が帰るのを待つ。ここ数日間、私は会社を無断欠勤している。会社に電話すると、電話応対係の千枝子が出る可能性が高い。千枝子と話す、それはこの現実を彼女に伝えるということだ。
ピーンポーン
ふたたび、チャイムが鳴り響いた。私は、ふと、我に返る。このまま会社に行かなければ、給料が入らなくなる。貯金が底を尽きたら、このアパートを出てゆくことになる。
嫌だ────。ここを出てゆくと、私が霧島でいた頃のようにさ迷うことになる。それは耐難い。
しかし、千枝子に真実を話せば、私の頭がおかしくなったのだと思うだろう。そうなのかもしれない。本当に私は霧島だったのだろうか。
机に頬杖を着いたまま、私の脳裏には様々な不安、絶望が渦巻いていた。
部屋には私の心から流れ出した負の感情が横たわり、陰鬱な闇が支配する。
窓から差し込む夕日も夜の幕にさえぎられてゆき、気づけば部屋は真っ暗になっていた。
どれくらいこうしていただろうか。私ははっとし、電気をつける。やはり、明日は会社に行かなければ。
そう思い、布団に入ったが、眠れない。深い絶望が私を襲い、逃げ出したい衝動に駆られる。
カチ、カチ、カチ
鳴り響く時計の音に私は焦り出す。こくこくと時はすぎ、明日が近づく。
朝日が部屋に滑り込み、私を照らし出す。数時間後には、絶望が待ち受けているのだろう。
憂鬱な気分のまま服を着替え、朝食をとり、家を出た。歩く間も、絶望が襲い来る。
しばらく歩くと、私は気がついた。千枝子と、合わない。いつもなら途中出会うのに、今日は会わずに会社の近くまで来ていた。
私はその事に安堵するが、その心には、モヤが架かっていた。
がら────っ
扉を開けて、私の耳に飛び込んで来たのは、人々のざわめきだった。
タッタッタッタ
足音を立て、凛が駆け寄ってくる。はぁはぁ吐息を荒らげながら、白い封筒を握りしめる。
チラッと白い封筒に書かれた文字が目に飛び込んできた。「退職届」その文字に私の目は釘付けになり、唖然とする。ようやく彼女の行きは落ち着き、口を開いた。
「千枝子さんが……千枝…子さんがココ最近来ないの!しおりが来なくなったくらいから。け…今朝、千枝子さんが遺体で見つかった。汐梨の言う通りやっぱりこの街おかしいよ!」
はじめはとぎれとぎれだった口調が、どんどん叫ぶような声になってゆく。凛の言うことが理解できない。
危ない、とはどういうことなのだろうか。
私はそんなこと言っていない。
そう叫ぶと凛は出口へと走り出す。そして、勢いよく扉を開け閉めし、走り去って行った。
私は扉を見つめ、呆然と立ち尽くすのだった。
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