90 / 175
第二幕
謎の敵・後編(K53)
しおりを挟む「あら、シオンくん、お久しぶり。可愛い子を連れてるねぇ。お嬢ちゃん、こっちへおいで」
「お前はジュリエット!! なんでこんなところにいるんだ!!」
人影――ジュリエットは不気味に笑い声を響かせながら、蝶の群れに姿を変えた。蝶の群れは二人を囲み、互いの視界を遮ってゆく。
「フリージア! いたら返事して!」
蝶の群れを掻き分けるシオンだが、一向にフリージアの消息がつかめない。
やがて視界がはれると、その場にいたのはシオンだけになっていた。
「オホホホホホ、こんなに可愛いのにもうすぐ死ぬなんて、本当に可哀想ねぇ……」
シオンが気がついた頃には、フリージアはジュリエットの腕の中だった。ジュリエットは扇子をヒラヒラとさせ、震えるフリージアの首に手をかけながら笑っている。
「ねぇ、シオン? こんなに可愛い子を助けられないなんてどんな気分だい?」
「やめろ、ジュリエット!!」
シオンは、勢いよくジュリエットに向かっていく! 右手に魔素を集めては剣を形作る。そうして突き出した剣が、ジュリエットに届くと思う瞬間、それはヒラリと避けられてしまった。
ジュリエットは、パチンと閉じた扇子でシオンを打ち払った! 吹き飛ばされたシオンは岩へ体を打ちつける!
「お兄ちゃん!!!」
動かなくなったシオンを見た、フリージアの叫びが、先へ進んだノア達を振り向かせた。皆が戻り始めるものの、ふたりとジュリエットとの距離は、彼方。どんなに急いでも間に合いそうにない。
「呆気ないわねぇシオン。お嬢ちゃんも、本当に可哀想に。あんな奴と一緒に居た為に、短い一生を終わらせるなんて」
「お兄ちゃんは、アンタをやっつけるんだから。絶対に間違いないわ」
「あんな所で倒れて動けない奴が私をやっつける? ……小娘、すぐにアイツと一緒のところに送ってやるっ!」
笑うジュリエットの口が裂け、化け物になっていく。フリージアの首を化け物の手が締め上げていく。
「シ・オ・ン……!」
その時だった。フリージアの体がオレンジ色に光り出し、その光は集まり丸くなり、シオンに向かって飛んでいく。光がシオンを包み込む。シオンは、ゆらりと起き上がり、なにやらブツブツ言っている。
「Old God From with in me Get out and destroy the enemy. He called Tautetsu」
シオンの体がエメラルドグリーンに輝いた瞬間、シオンは消えた。
「グッ!!」
ジュリエットが吹き飛ぶ。光から解かれたフリージアは、シオンの腕の中で気を失っていた。
「今のガキの動き――何かがおかしい」
「シオンー! 大丈夫かー!?」
シオンが元の位置に戻った頃、ノアとトウラが到着した。
ノアがシオンの肩を掴もうとした瞬間、シオンはフリージアを抱えたまま倒れこむ! とっさに動いたノアがふたりを支え、そっと横に寝かせた。
一方、ジュリエットは、飛ばされた所から、ふらつきながらも立ち上がろうとしていた。ノアとトウラは、ジュリエットに視線を変え、攻撃態勢に入る。
「シオン、フリージア、大丈夫か!」
後からやって来たシュートがふたりに話しかけるが反応はない。その後に来たシェロはすぐにふたりを揺り動かす。すると先にフリージアの意識が戻り、横にいるシオンに縋《すが》りついた。
「お兄ちゃん、起きて!」
叫ぶフリージアに我に返ったシオンは飛び起き、辺りをみる。ノアとトウラが構える先に、不敵な笑みを浮かべたジュリエットがいた。
「ォホホホホホ、このぐらいはやると思っていたわ。でも、アンタラはここで死になさい。先生、お願いしますよ」
ジュリエットの後ろから、先生と呼ばれた者が現れる。髪は剃り上げ、袈裟を纏った老人が立っている。
「お主たち、哀れじゃのう」
ノア、トウラが詠唱文を唱えると、先生と呼ばれた老人がノアに向かい口を動かす。
「唵」
ノアが消える。みんなが唖然として一瞬動きが止まる。
「この野郎!」
トウラがタマを肩に乗せ、老人に向かって攻撃をする刹那、また、老人は、一言唱える。
「唵」
トウラとタマが消える。
「トッ、トウラ!」
シュートの攻撃、老人の足元から蔦が老人目掛けて絡みつくと見えた所で老人は消え、シュートの後ろに現れる。
「唵」
「シュート!」
シュートが消えた。シェロが銃を構え引き金に手を掛ける。老人は一言。
「唵」
「シェロ!」
シェロが消える。シオンが老人に向かう。アザミは反対側から、老人に向かい2人で挟み撃ちにする。シオン、アザミが同時に攻撃をする。老人は素早くフリージアの前に至る。
「唵」
「あっ、フリージア!」
フリージアが消える。そして老人は、アザミの背後に回る。
「アザミ、危ない!」
「唵」
アザミが消える。ジュリエットの笑い声が聞こえる。
「シオン、あー情けないわね。誰一人助けることができないなんて」
「ウォォォォオ! みんなを返せえええっ!!!」
シオンの様子があきらかに変化する。シオンは老人に向け詠唱文を唱える。再びシオンの身体がエメラルドグリーンに輝き、シオンが消える。
「ウッ!」
シオンが老人を吹き飛ばす。しかし、老人が吹き飛ばされながら、シオンに向かい一言。
「唵」
シオンが消える。
「オホホホホホ! 流石、改信先生。アイツらをこんなに簡単にやっつけるなんて、それでアイツらはどこに行ったの?」
「アイツらは、今頃、地獄の門の前に並んでいるだろう」
「じゃあ、死んだってことで間違いないわね」
「ああ、そうだな」
「それじゃ、あの教会も潰していくか」
ジュリエット、改信先生と呼ばれる老人は、司教達のいる教会に向かう。教会がもう少しで見える場所に来た時、ジュリエットは見えない壁に跳ね返され、それ以上、進むことはできない。
「何故、行けない。先生、これは?」
「アイツらの中で、もしもの時のことを考えて出る時に仕掛けて行ったみたいだな。今は、諦めるしかない」
「チッ、ノアの野郎だなこんなことをする奴は」
「ワシは、準備をすることがあるでの。ここで失礼する。また、何かあれば連絡を入れてくれ」
「あぁ、そうするよ」
ジュリエットは、その場から消えた。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「………………シオン、シオン、シ・オ・ン!」
「ウーン」
「みんな待ってるよ」
「えっ!」
ノア、トウラ、シュート、シェロ、アザミ、フリージアがシオンを見つめている。
「さっきのは、夢だったんだ。みんないる、良かった」
「いいえ、夢じゃないわ」
シェロが言うとノアがその後を説明する。
「俺たちは、あのジジイにここに閉じ込められたことになる。どうやってここから出るか考えなくてはならん」
「えっ、そうなの」
シオンはまわりを見るとなんだかとても懐かしく感じられる。
「シオン殿、お久しぶりにございます」
後ろから声が聞こえる。みんなが一斉に振り返る。するとそこには、みんながやられた敵がいる。ジュリエットから先生と呼ばれていた老人が微笑みながら立っている。トウラ、シュートが攻撃態勢に入る。
いったい、この老人は何者なのか?
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
毎日19時に更新予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる