ファンタジック・アイロニー[6月5日更新再開!]

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第二幕

謎の敵・後編(K53)

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「あら、シオンくん、お久しぶり。可愛い子を連れてるねぇ。お嬢ちゃん、こっちへおいで」
「お前はジュリエット!! なんでこんなところにいるんだ!!」

 人影――ジュリエットは不気味に笑い声を響かせながら、蝶の群れに姿を変えた。蝶の群れは二人を囲み、互いの視界を遮ってゆく。

「フリージア! いたら返事して!」

 蝶の群れを掻き分けるシオンだが、一向にフリージアの消息がつかめない。


 やがて視界がはれると、その場にいたのはシオンだけになっていた。

「オホホホホホ、こんなに可愛いのにもうすぐ死ぬなんて、本当に可哀想ねぇ……」

 シオンが気がついた頃には、フリージアはジュリエットの腕の中だった。ジュリエットは扇子をヒラヒラとさせ、震えるフリージアの首に手をかけながら笑っている。

「ねぇ、シオン? こんなに可愛い子を助けられないなんてどんな気分だい?」
「やめろ、ジュリエット!!」

 シオンは、勢いよくジュリエットに向かっていく! 右手に魔素を集めては剣を形作る。そうして突き出した剣が、ジュリエットに届くと思う瞬間、それはヒラリと避けられてしまった。
 ジュリエットは、パチンと閉じた扇子でシオンを打ち払った! 吹き飛ばされたシオンは岩へ体を打ちつける!

「お兄ちゃん!!!」

 動かなくなったシオンを見た、フリージアの叫びが、先へ進んだノア達を振り向かせた。皆が戻り始めるものの、ふたりとジュリエットとの距離は、彼方。どんなに急いでも間に合いそうにない。

「呆気ないわねぇシオン。お嬢ちゃんも、本当に可哀想に。あんな奴と一緒に居た為に、短い一生を終わらせるなんて」
「お兄ちゃんは、アンタをやっつけるんだから。絶対に間違いないわ」
「あんな所で倒れて動けない奴が私をやっつける? ……小娘、すぐにアイツと一緒のところに送ってやるっ!」

 笑うジュリエットの口が裂け、化け物になっていく。フリージアの首を化け物の手が締め上げていく。

「シ・オ・ン……!」

 その時だった。フリージアの体がオレンジ色に光り出し、その光は集まり丸くなり、シオンに向かって飛んでいく。光がシオンを包み込む。シオンは、ゆらりと起き上がり、なにやらブツブツ言っている。

Old God古の神、 From with in me Get out我が内より出でて and destroy the enemy.敵を滅せん。 He called Tautetsuその名は饕餮

 シオンの体がエメラルドグリーンに輝いた瞬間、シオンは消えた。

「グッ!!」

 ジュリエットが吹き飛ぶ。光から解かれたフリージアは、シオンの腕の中で気を失っていた。


「今のガキの動き――何かがおかしい」
「シオンー! 大丈夫かー!?」

 シオンが元の位置に戻った頃、ノアとトウラが到着した。
 ノアがシオンの肩を掴もうとした瞬間、シオンはフリージアを抱えたまま倒れこむ! とっさに動いたノアがふたりを支え、そっと横に寝かせた。

 一方、ジュリエットは、飛ばされた所から、ふらつきながらも立ち上がろうとしていた。ノアとトウラは、ジュリエットに視線を変え、攻撃態勢に入る。


「シオン、フリージア、大丈夫か!」

 後からやって来たシュートがふたりに話しかけるが反応はない。その後に来たシェロはすぐにふたりを揺り動かす。すると先にフリージアの意識が戻り、横にいるシオンに縋《すが》りついた。

「お兄ちゃん、起きて!」

 叫ぶフリージアに我に返ったシオンは飛び起き、辺りをみる。ノアとトウラが構える先に、不敵な笑みを浮かべたジュリエットがいた。

「ォホホホホホ、このぐらいはやると思っていたわ。でも、アンタラはここで死になさい。先生、お願いしますよ」

 ジュリエットの後ろから、先生と呼ばれた者が現れる。髪は剃り上げ、袈裟を纏った老人が立っている。

「お主たち、哀れじゃのう」

 ノア、トウラが詠唱文を唱えると、先生と呼ばれた老人がノアに向かい口を動かす。

「唵」

 ノアが消える。みんなが唖然として一瞬動きが止まる。

「この野郎!」

 トウラがタマを肩に乗せ、老人に向かって攻撃をする刹那、また、老人は、一言唱える。

「唵」

 トウラとタマが消える。

「トッ、トウラ!」

 シュートの攻撃、老人の足元から蔦が老人目掛けて絡みつくと見えた所で老人は消え、シュートの後ろに現れる。

「唵」
「シュート!」

 シュートが消えた。シェロが銃を構え引き金に手を掛ける。老人は一言。

「唵」
「シェロ!」

 シェロが消える。シオンが老人に向かう。アザミは反対側から、老人に向かい2人で挟み撃ちにする。シオン、アザミが同時に攻撃をする。老人は素早くフリージアの前に至る。

「唵」
「あっ、フリージア!」

 フリージアが消える。そして老人は、アザミの背後に回る。

「アザミ、危ない!」
「唵」

 アザミが消える。ジュリエットの笑い声が聞こえる。

「シオン、あー情けないわね。誰一人助けることができないなんて」
「ウォォォォオ! みんなを返せえええっ!!!」

 シオンの様子があきらかに変化する。シオンは老人に向け詠唱文を唱える。再びシオンの身体がエメラルドグリーンに輝き、シオンが消える。

「ウッ!」

 シオンが老人を吹き飛ばす。しかし、老人が吹き飛ばされながら、シオンに向かい一言。

「唵」

 シオンが消える。

「オホホホホホ! 流石、改信先生。アイツらをこんなに簡単にやっつけるなんて、それでアイツらはどこに行ったの?」
「アイツらは、今頃、地獄の門の前に並んでいるだろう」
「じゃあ、死んだってことで間違いないわね」
「ああ、そうだな」
「それじゃ、あの教会も潰していくか」

 ジュリエット、改信先生と呼ばれる老人は、司教達のいる教会に向かう。教会がもう少しで見える場所に来た時、ジュリエットは見えない壁に跳ね返され、それ以上、進むことはできない。

「何故、行けない。先生、これは?」
「アイツらの中で、もしもの時のことを考えて出る時に仕掛けて行ったみたいだな。今は、諦めるしかない」
「チッ、ノアの野郎だなこんなことをする奴は」
「ワシは、準備をすることがあるでの。ここで失礼する。また、何かあれば連絡を入れてくれ」
「あぁ、そうするよ」

 ジュリエットは、その場から消えた。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「………………シオン、シオン、シ・オ・ン!」
「ウーン」
「みんな待ってるよ」
「えっ!」

 ノア、トウラ、シュート、シェロ、アザミ、フリージアがシオンを見つめている。

「さっきのは、夢だったんだ。みんないる、良かった」
「いいえ、夢じゃないわ」

 シェロが言うとノアがその後を説明する。

「俺たちは、あのジジイにここに閉じ込められたことになる。どうやってここから出るか考えなくてはならん」
「えっ、そうなの」

 シオンはまわりを見るとなんだかとても懐かしく感じられる。

「シオン殿、お久しぶりにございます」

 後ろから声が聞こえる。みんなが一斉に振り返る。するとそこには、みんながやられた敵がいる。ジュリエットから先生と呼ばれていた老人が微笑みながら立っている。トウラ、シュートが攻撃態勢に入る。


 いったい、この老人は何者なのか?


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