処刑された悪役令嬢に転生したら、ドMの変態令嬢たちに困らされています。

もちもちのごはん

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最終話 悪役令嬢と、変態令嬢たちの素晴らしき日常

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「本日の踏まれ順、わたくしが一番ですよね!?」
「何をぬかす、今日こそ私が『斬られる夢』を叶える日だ!」
「記録はすでに整っておりますの。今日は『睨みループ』から開始ですわ」
「ダメですわ! 今日は『罵倒リサイタル』の初日ですのよ!?」
 
 ──朝からこの調子である。
 
「落ち着きなさい、変態ども。順番、争わない」

「変態って言い切りましたわね!?」
「でもオルフェリア様に『変態』って呼ばれるの……嬉しい……ッ!!」
「舌打ちされたいですわ……!」
「罵倒されながら踏まれたあとに『まだ足りないの?』って呟かれたい……」

「静かにしなさい!! わたくしの午前ティータイムの尊厳を奪わないでちょうだい!!」

 オルフェリアが、机をぴしゃん! と叩く。
 瞬間、全員が直立・沈黙。

「よろしい。今からわたくしが、誰から地獄に叩き落とすか、審美眼で決めてあげる」
「「「「お願いします!!」」」」
 
 ◇

 屋敷の中庭。
 美しい噴水と花壇に囲まれた特等席で、変態たちが正座している。

「まずは……ミレット」
「は、はいっ!! 何なりと、踏んでくださいませ!!」
「じゃあ今日は、『わざと転ばせたあとにごめんといいながら踏みつける』バージョンで」
「最高ですわァァ!!」
 
「ヴィオラ」
「命令、くだされば、剣でも魂でも差し出します!!」
「剣はいらないから……そうね、『斬られる妄想を書いたポエム朗読会』でもしてもらおうかしら」
「……それは羞恥心で死ねます」
「じゃあ本望でしょ?」
「はいっ!!」
 
「セシリア」
「記録帳は……今日から閉じておりますの。そのかわり、わたくしの視線は一秒たりとも離しませんので」
「じゃあ、……わたくしのまばたきの回数、当ててみなさい」
「なんという……新ジャンル……っ!!」
 
「ロゼット」
「罵倒一つください。テーマは『存在そのものへの否定』でお願いします」
「……お前、消えていいわよ」
「ありがとうございますッ!! これで三日三晩は彫れますわ!!」
 
 ◇

 ああ……気づけば、わたしは完全に、「ドS悪役令嬢」として君臨していた。
 元の世界では、踏まれたい側だったはずなのに――。

(おかしい……なんでこんなことに……)

 そう思いながら、わたしは今日も、優雅に紅茶を飲んでいる。

「さて、次は誰を泣かせてあげようかしら」

 四人の変態令嬢たちは、うっとりと目を細めた。

「「「「オルフェリア様……今日も、最高に女王ですわ……♡」」」」
 
 ◇

「……あれ? なんか、元のゲームってこんなんだったっけ……?」

 心の中で、ツッコミを入れながらも――。
 なんだかんだ、この日々がちょっと気に入ってきた自分がいた。
 たとえこの世界がゲームで、この物語が「バッドエンド確定の悪役令嬢ルート」だったとしても。
 
「この変態たちがいる限り、退屈はしなさそうね」
 
 そう言って笑った私の顔は、「記録にも残らない、誰にも予測できない」――ほんの少しだけ、幸せそうなS顔だった……らしい。
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