11 / 11
最終話 悪役令嬢と、変態令嬢たちの素晴らしき日常
しおりを挟む
「本日の踏まれ順、わたくしが一番ですよね!?」
「何をぬかす、今日こそ私が『斬られる夢』を叶える日だ!」
「記録はすでに整っておりますの。今日は『睨みループ』から開始ですわ」
「ダメですわ! 今日は『罵倒リサイタル』の初日ですのよ!?」
──朝からこの調子である。
「落ち着きなさい、変態ども。順番、争わない」
「変態って言い切りましたわね!?」
「でもオルフェリア様に『変態』って呼ばれるの……嬉しい……ッ!!」
「舌打ちされたいですわ……!」
「罵倒されながら踏まれたあとに『まだ足りないの?』って呟かれたい……」
「静かにしなさい!! わたくしの午前ティータイムの尊厳を奪わないでちょうだい!!」
オルフェリアが、机をぴしゃん! と叩く。
瞬間、全員が直立・沈黙。
「よろしい。今からわたくしが、誰から地獄に叩き落とすか、審美眼で決めてあげる」
「「「「お願いします!!」」」」
◇
屋敷の中庭。
美しい噴水と花壇に囲まれた特等席で、変態たちが正座している。
「まずは……ミレット」
「は、はいっ!! 何なりと、踏んでくださいませ!!」
「じゃあ今日は、『わざと転ばせたあとにごめんといいながら踏みつける』バージョンで」
「最高ですわァァ!!」
「ヴィオラ」
「命令、くだされば、剣でも魂でも差し出します!!」
「剣はいらないから……そうね、『斬られる妄想を書いたポエム朗読会』でもしてもらおうかしら」
「……それは羞恥心で死ねます」
「じゃあ本望でしょ?」
「はいっ!!」
「セシリア」
「記録帳は……今日から閉じておりますの。そのかわり、わたくしの視線は一秒たりとも離しませんので」
「じゃあ、……わたくしのまばたきの回数、当ててみなさい」
「なんという……新ジャンル……っ!!」
「ロゼット」
「罵倒一つください。テーマは『存在そのものへの否定』でお願いします」
「……お前、消えていいわよ」
「ありがとうございますッ!! これで三日三晩は彫れますわ!!」
◇
ああ……気づけば、わたしは完全に、「ドS悪役令嬢」として君臨していた。
元の世界では、踏まれたい側だったはずなのに――。
(おかしい……なんでこんなことに……)
そう思いながら、わたしは今日も、優雅に紅茶を飲んでいる。
「さて、次は誰を泣かせてあげようかしら」
四人の変態令嬢たちは、うっとりと目を細めた。
「「「「オルフェリア様……今日も、最高に女王ですわ……♡」」」」
◇
「……あれ? なんか、元のゲームってこんなんだったっけ……?」
心の中で、ツッコミを入れながらも――。
なんだかんだ、この日々がちょっと気に入ってきた自分がいた。
たとえこの世界がゲームで、この物語が「バッドエンド確定の悪役令嬢ルート」だったとしても。
「この変態たちがいる限り、退屈はしなさそうね」
そう言って笑った私の顔は、「記録にも残らない、誰にも予測できない」――ほんの少しだけ、幸せそうなS顔だった……らしい。
「何をぬかす、今日こそ私が『斬られる夢』を叶える日だ!」
「記録はすでに整っておりますの。今日は『睨みループ』から開始ですわ」
「ダメですわ! 今日は『罵倒リサイタル』の初日ですのよ!?」
──朝からこの調子である。
「落ち着きなさい、変態ども。順番、争わない」
「変態って言い切りましたわね!?」
「でもオルフェリア様に『変態』って呼ばれるの……嬉しい……ッ!!」
「舌打ちされたいですわ……!」
「罵倒されながら踏まれたあとに『まだ足りないの?』って呟かれたい……」
「静かにしなさい!! わたくしの午前ティータイムの尊厳を奪わないでちょうだい!!」
オルフェリアが、机をぴしゃん! と叩く。
瞬間、全員が直立・沈黙。
「よろしい。今からわたくしが、誰から地獄に叩き落とすか、審美眼で決めてあげる」
「「「「お願いします!!」」」」
◇
屋敷の中庭。
美しい噴水と花壇に囲まれた特等席で、変態たちが正座している。
「まずは……ミレット」
「は、はいっ!! 何なりと、踏んでくださいませ!!」
「じゃあ今日は、『わざと転ばせたあとにごめんといいながら踏みつける』バージョンで」
「最高ですわァァ!!」
「ヴィオラ」
「命令、くだされば、剣でも魂でも差し出します!!」
「剣はいらないから……そうね、『斬られる妄想を書いたポエム朗読会』でもしてもらおうかしら」
「……それは羞恥心で死ねます」
「じゃあ本望でしょ?」
「はいっ!!」
「セシリア」
「記録帳は……今日から閉じておりますの。そのかわり、わたくしの視線は一秒たりとも離しませんので」
「じゃあ、……わたくしのまばたきの回数、当ててみなさい」
「なんという……新ジャンル……っ!!」
「ロゼット」
「罵倒一つください。テーマは『存在そのものへの否定』でお願いします」
「……お前、消えていいわよ」
「ありがとうございますッ!! これで三日三晩は彫れますわ!!」
◇
ああ……気づけば、わたしは完全に、「ドS悪役令嬢」として君臨していた。
元の世界では、踏まれたい側だったはずなのに――。
(おかしい……なんでこんなことに……)
そう思いながら、わたしは今日も、優雅に紅茶を飲んでいる。
「さて、次は誰を泣かせてあげようかしら」
四人の変態令嬢たちは、うっとりと目を細めた。
「「「「オルフェリア様……今日も、最高に女王ですわ……♡」」」」
◇
「……あれ? なんか、元のゲームってこんなんだったっけ……?」
心の中で、ツッコミを入れながらも――。
なんだかんだ、この日々がちょっと気に入ってきた自分がいた。
たとえこの世界がゲームで、この物語が「バッドエンド確定の悪役令嬢ルート」だったとしても。
「この変態たちがいる限り、退屈はしなさそうね」
そう言って笑った私の顔は、「記録にも残らない、誰にも予測できない」――ほんの少しだけ、幸せそうなS顔だった……らしい。
3
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~
きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。
前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。
異世界でまったり村づくり ~追放された錬金術師、薬草と動物たちに囲まれて再出発します。いつの間にか辺境の村が聖地になっていた件~
たまごころ
ファンタジー
王都で役立たずと追放された中年の錬金術師リオネル。
たどり着いたのは、魔物に怯える小さな辺境の村だった。
薬草で傷を癒し、料理で笑顔を生み、動物たちと畑を耕す日々。
仲間と絆を育むうちに、村は次第に「奇跡の地」と呼ばれていく――。
剣も魔法も最強じゃない。けれど、誰かを癒す力が世界を変えていく。
ゆるやかな時間の中で少しずつ花開く、スロー成長の異世界物語。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない
しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした
月神世一
ファンタジー
「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」
ブラック企業で過労死した日本人、カイト。
彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。
女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。
孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった!
しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。
ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!?
ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!?
世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる!
「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。
これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる