魔王に花嫁として召喚されたけど、即効で破棄されました。……なのに今さら惚れられても遅いんですけど!?

もちもちのごはん

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最終話 これからの世界へ

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 夜明けが、魔王城の窓を淡い金色に染めていた。
 あの夜、私とルシフェルは――そして魔王城の皆は、本当に長い一夜を過ごしたのだと思う。

 和平反対派の最後の抵抗は、ルシフェルと私が手を取り合い、力を合わせてしっかりと退けた。
 もはや彼らにも、これ以上争う気力は残っていなかった。
 広間の床には、落とされた剣と杖。
 その隣で、魔族も人間も、深く息を吐いて肩を落としていた。

 争いは、終わった。

 私は大広間の真ん中に立ち尽くしていた。
 手のひらには、ほんのりあたたかい余韻が残っている。
 それは、私の中の聖女の力と、魔王ルシフェルの魔力が混ざりあった証。

 気づけば、ルシフェルが私のそばにいた。

「お前がいなければ、この日を迎えることはできなかった」

 彼はそう言って、私の頭をそっと撫でてくれた。
 その仕草が、どこか不器用で――でも、心の奥にまっすぐ届いた。

「ルシフェルこそ、ありがとう。私は……この世界に来て、本当に良かったと思う」

「これからは、ずっと隣にいろ」

 私の胸が熱くなる。

「うん。あなたと一緒なら、どんな未来も怖くないよ」



 数日後、和平調印式が改めて執り行われることになった。
 今度こそ、魔族と人間、両陣営が揃って式に参加し、たくさんの拍手と笑顔が会場に満ちていた。

 私は「聖女」として舞台に立つ。
 けれど、もう緊張や不安はなかった。

 それはきっと、ルシフェルと手を繋いでいるから。

 調印式のあと、城の庭でささやかな祝宴が開かれた。
 子どもたちが笑い、レオナルトさんやメイドさんたちが忙しそうに料理を運ぶ。
 人間の代表団も、最初は戸惑っていたけど、料理を囲んで自然と打ち解けていった。

 魔族も人間も、肩を並べて語り合う光景。
 つい昨日まで夢のようだった未来が、今は私の目の前にあった。

「ねえ、いちかねえちゃん! これからもずっと一緒にいてくれる?」

 ミミが私の手を強く握る。

「もちろんだよ。みんなのこと、絶対に置いていかないから」

 私はミミを抱き上げて、くるりと一回転する。
 その笑顔に、私は何度も救われてきた。

 祝宴の途中、ルシフェルが私をそっと呼び止めた。

「少し、散歩しよう」

 彼と並んで城の庭を歩く。
 夜の花が甘く香り、遠くから子どもたちの笑い声が聞こえてくる。

 ふいにルシフェルが立ち止まり、私の手を取った。

「いちか。俺と――これからも共に生きてほしい」

 真っ赤になった私を見て、彼はめずらしく照れくさそうに微笑んだ。

「改めて、求婚だ」

「えっ……」

 言葉が出ない。
 でも、心はもう決まっている。

「……はい。私でよければ、ずっと一緒にいたいです」

 ルシフェルは、静かに私を抱きしめた。

「お前がいれば、どんな困難も乗り越えられる気がする」

「私も同じ。あなたとなら、どこまででも行けるよ」

 唇が重なり合った。とろけるように甘い花の香りが、ふたりを祝福していた。



 やがて季節がめぐり、城に春が訪れた。

 私は新しい日々の中で、魔王城のみんなと暮らしている。
 パンを焼き、庭で子どもたちと遊び、ときどきルシフェルと静かな時間を過ごす。

 聖女という肩書きに縛られてはいない。
 私は、私のままで、ここで生きている。

 人間と魔族が手を取り合う新しい世界。
 かつての敵同士が協力して町を作り、子どもたちが一緒に遊び、誰もが未来に希望を持って笑えるようになった。

 ルシフェルは変わらず不器用だけど、時々とても優しい顔を見せてくれる。

「いちか、今日のパンは少し焦げているな」

「うるさい。文句言うなら自分で焼いてみてよ」

 そんなやりとりが、たまらなく幸せだ。

「……これからも、隣にいろ」

 彼の声に私は頷く。

「うん、約束する」

 二人で並んで歩く道は、これからもきっと続いていく。

 そして今日も、私はこの世界で、私だけの日常を生きている。
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